著者
佐野 泰
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.84-90, 1974
被引用文献数
1

球根アイリス•ウエジウッドの花芽分化, 発達におよぼす温度の影響を知るために実験を行なつた. 使用した球根はいずれも新潟県産のものである.<br>1. 8月12日より35日間, 8°Cまたは13°Cで低温処理を行なつたのち, 15°C, 20°C, 30°Cに移してその後の花芽分化, 発達を調べたところ, 13°C後15°C区が最も早く, ついで8°C後15°C区で, 8°Cまたは13°C後20°C区はややおくれたが, 8°Cまたは13°C後30°C区は花芽分化しなかつた. 連続20°Cに置いたものはおくれて花芽分化した. これらの葉数は連続20°C区が最も多く, ついで13°C後20°C区, 13°C後15°C区, 8°C後20°C区, 80°C後15°C区の順であつたが, 8°Cおよび13°C区とも30°Cに移したものは葉分化が進まなかつた. 第1葉の伸長は低温処理後20°Cに移したもので大きく, 15°Cで小さかつた. また30°Cに移したものは伸長が停止した.<br>2. 球根を8月9日から13日間, 35°C, 30°C, 20°Cおよび13°Cにおいたのち, 13°C40日間の低温処理を行ない, その後20°Cに移して花芽分化, 発達を調べたところ, いずれの区も花芽分化し, その発達は13°Cまたは20°C区が, 30°Cまたは35°C区よりやや早かつた. 葉数はほとんど差がなかつたが, 第1葉長および花茎長はともに高温区より20°Cまたは13°C区のほうが大きくなつた.<br>3. 13°C30日または45日の低温処理を行なつた球根を, 35°Cに0, 2, 4, 8または16日間おいたのち, 20°Cに移してその後の花芽分化, 発達を調べたところ, いずれの区もすべて花芽分化した. このうち低温30日処理区では高温8日以上のもので, また低温45日処理区では高温16日以上のもので花芽の発達がおくれたが, その程度は高温に置かれた日数程度であつた. しかしこれらの葉数は増加していた.<br>4. 以上の結果より, 球根アイリス•ウエジウッドの花芽分化は, 8°Cから13°Cの低温によつて促進されるが, その作用は後作用として働き, 花芽分化時にこれらの低温である必要はない. また低温処理前の高温処理は, 休眠が終了するころであれば必しも花芽分化を促進しない. 低温処理後の高温は, 花芽分化を多少おくらせるが, 低温処理の効果を著しく減少させるものでないことが明らかとなつた.

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