著者
永田 武雄 岡部 民義
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.20, no.8, pp.448-452, 1944

臺南州新營部の蔗作地帶に分布する既報<sup>(1)</sup>と同一の強,弱鹽分地土壤を用ひ畑地状態及び水田状態に於ける硝酸の還元作用を調査した.共の成績の要點は次の通りである.<br> 畑地状體の場合<br> (1) 畑地状態に於ける硝酸の還元値は水田状態の場合較ぺ一般に低い.<br> (2) 鹽分を増す程NO<sub>3</sub>→NO<sub>2</sub>,は抑判されて變化の開始は遲れ又其量も減少する.<br> (3) 葡萄糖を添加すると強鹽分土ではNO<sub>3</sub>→NO<sub>2</sub>→NH<sub>3</sub>が増大するに反し弱鹽分土及び普通土は稍々減少する傾向が見られた.<br> (4) 脱鹽するとNO<sub>3</sub>→NO<sub>2</sub>は多くなるが殘存するNO<sub>3</sub>は却つて多い.<br> (5) 20日間の成績によると葡萄糖を加へない場合は大部分NO<sub>3</sub>として殘存するが葡萄糖を加へると一般にNO<sub>3</sub>の消失量を増し特に鹽分の強いもの程然りで約半減した.この硝酸の消失は變化による減少と微生物による硝酸同化作用又は窒素脱離作用の結果であらう.<br> 水田状態の場合<br> (6) 水田状態の硝酸還元量は一般に大であるが鹽分による差異は稍減殺される様である.<br> (7) 葡萄糖を加へない場合のNO<sub>3</sub>→NO<sub>2</sub>は畑地状態の傾向に類似したが葡萄糖を添加すると著しく増加し特に強鹽分土に然りである.<br> (8) この場合NO<sub>3</sub>は日數の經過に伴ひ減少し5日目に最低値を示し7日目には稍増加した.此の増加はNO<sub>2</sub>→NO<sub>3</sub>の結果であらう.<br> (9) 脱鹽によつてNO<sub>3</sub>→No<sub>2</sub>は増大となり就中強鹽分地に明瞭である.<br> (10) NO<sub>2</sub>→NH<sub>3</sub>は微弱であり鹽分の弱さによる影響は明瞭を缺く. NO<sub>3</sub>→NH<sub>3</sub>も徴弱で明瞭を缺くが脱鹽によつて強鹽分土は稍増加する様である.即ちNO<sub>3</sub>→NO<sub>2</sub>は鹽分を増す程稍々抑判されるがNO<sub>2</sub>→NH<sub>3</sub>, NO<sub>3</sub>→NH<sub>3</sub>は共に微弱で判然としない.本作用耐鹽性の如くアンモニア化成作用と硝酸化成作用の中間にある順位は次の通りである.<br> アンモニア化成作用>硝酸還元作用>硝酸化成作用<br> 終りに御懇切なる御指導と御校閲を賜ひし恩師大杉先生に謹みて深甚の謝意を表す.

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こんな論文どうですか? 鹽分地土壤の微生物化學的研究:(第2報)硝酸還元作用(永田 武雄ほか),1944 https://t.co/EIOrrpVsXU
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