著者
西田 孝太郎
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.374-378, 1934

前に記載した實驗結果はこれを次の如く要約することが出來る.<br> (1) 蘇鐵種子の重量はその成熟中或時期までは増加すれども以後減少する,而して種子を胚乳部と種皮部との部分別として考へても何れも同樣の傾向を示すのである.<br> (2) 胚乳中の水分は漸次減少したる後増加する,然るに種皮中の水分は漸次減少する一方である.<br> 以下胚乳部の成分について述ぶれば;<br> (3) 灰分,純蛋白,澱粉,糊精及び可溶無窒素物の含量は水分量と正反對に次第に増加し一定時期に最大となり,後再び減少するのであつて,此等の諸成分は乾物量と全く平行する傾向を示して居る.<br> (4) 糖類は成熟中漸次増加する傾向を示すのであるが,これと全く反對に非蛋白窒素化合物及び粗纖維の量は明かに次第に減ずる.<br> (5) 脂肪の含量は次第に減少したる後再び増加する傾向を示すに反し,粗蛋白は一時増加したる後減少する.<br> (6) 8月30日採取の試料は著しく未熟で水分含量が極めて大であるが,各成分を乾物量に改算する時特に甚しく目立つのは,非蛋白窒素,還元糖及び灰分の割合が極めて大いことゝ澱粉の割合が少いことである.蓋しこれは蛋白及び澱粉合成の初期にある種子として當然のことであらう.<br> (7) 澱粉原料としての蘇鐵種子收穫の適期は,第2表から判る樣に澱粉含量の最も多い11月下旬と云ふことが出來る.然し第1表に示す通り胚乳の重量の關係上,種子1個中の澱粉の絶對量は第3表の通りに10月下旬採取のものが最も多い結果になつて居る.然し乍其差は僅少であるから結局蘇鐵種子收穫の適期は10月下旬に初まり11月までゞあると云ふことが出來ると思ふ.

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