著者
吉利 用和 川内 義人 富永 隆治 木下 和彦 河野 博之 田中 二郎 徳永 皓一
出版者
一般社団法人 日本人工臓器学会
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.263-267, 1987

Hancock弁置換219例の遠隔期におけるprirnary tissue failure (PTF)について検討した。追跡期間は1327 patient-years (平均6.4年), 遠隔死は35例, 2.600/P-Yであった。PTF 19例中18例に, 初回手術後平均7.1年で再手術が施行され(死亡率11.1%), 置換部位はM弁16個, A弁2個, T弁1個であった。PTF free rateは8, 9, 10, 11年目で90, 81, 76, 55%であり, 9年目を境に急激な減少を示した。手術時年令50才未満に16例(1.6%/P-Y), 50才以上に3例(0.9%/P-Y)PTFが発生し, 若年者に発生し易い傾向を認めた。摘出弁所見では, tissue over ingrowth2例, fibrocalcific obstruction 2例, 石灰沈着を伴う弁硬化2例の計6例が弁開放不全を呈し, 残り13例が弁尖断裂, 穿孔による弁逆流不全を示した。術後9年を境にHancock弁の耐久性の限界が示唆されたが, PTFの機序に関しては今後の観察が必要である。

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