著者
小山 清男
出版者
JAPAN SOCIETY FOR GRAPHIC SCIENCE
雑誌
図学研究
巻号頁・発行日
vol.32, pp.73-78, 1998

われわれが日常的に眼にし、また用いる漢字には、長い歴史があり、形の上で多様に変化して現在に至っている。漢字は本来象形文字であって、対象となる具象的なものの形を、線によって単的にあらわし、それが文字としての意味を担うようになった。形としてみれば、それらはすべて線の構成によって成り立っている。したがってこれを図学的にみることも、必らずしも不当なことではないと思われる。主として甲骨文では、写実的であったものが、しだいに形を変えて、金文、篆文となり、それが整理されて現在の明朝体の活字となった。その変遷の過程に、図形としての興味深いものがいろいろみられる。本研究では、まず平面図形としての漢字の特質を瞥見し、さらに図学的な視点から、漢字の原初的な形が、正投象における平面図、立面図、断面図、また透視投象的なものから、どのように現在の漢字が形成されてきたかをみるとともに、それらに関連する絵画作品と対置してみていこうとする試論である。なお、図学の分野を広げるとともに、それをいくらかでも親しみやすいものにしようとする、図学教育への想いも、ひそかに含まれているといえるかもしれない。

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