著者
柳沢 宏実
出版者
The Showa University Society
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.349-361, 1984

各種皮膚疾患における浸潤リンパ球のT, B cell分類及びT cellのsubsetを組織レベルで解析・同定する手段として近年A.N.A.E.染色 (acid α-naphtyl acetate esterase) やanti T cell monoclonal antibodyを用いた方法が行なわれる様になり, 浸潤細胞をfree cellの状態ではなく精細に, その機能面に至るまで解析することができる様になったが, これらに関する報告はまだ数少ない. (1) 正常扁桃組織, 各種皮膚疾患60例 (湿疹・皮膚炎・痒疹群17例, 扁平苔癬6例, 尋常性乾癬・類乾癬8例, 皮膚アレルギー性血管炎2例, 多形滲出性紅斑1例, D.L.E.2例, 深在性エリテマトーデス3例, 環状肉芽腫2例, 顔面播種状粟粒性狼瘡3例, 皮膚良性リンパ腺症2例, 尋常性天疱瘡1例, 悪性リンパ腫群7例, 皮膚悪性腫瘍6例) の皮膚組織浸潤細胞について, A.N.A.E.染色を施行し, 検索した. (2) さらに, 正常扁桃組織扁平苔癬については, anti T cell monoclonal antibody (OKT3, 4, 8) による染色を行ない, その成績を検索し, A.N.A.E.染色成績と比較検索した. (3) 扁桃組織のA.N.A.E.染色, anti T cell monoclonal antibody染色の検索成績から, A.N.A.E.陽性細胞は, helper T cel1であることが示唆された. (4) 各種皮膚疾患の浸潤細胞のA.N.A.E.染色所見は次の通りであった.a) A.N.A.E.陰性, Bcell優位の所見を呈した疾患群とそのT/B比は以下の通りであった.湿疹・皮膚炎・痒疹群 (0.5) , 皮膚アレルギー性血管炎 (0.9) , 多形滲出性紅斑 (0.4) , 環状肉芽腫 (0.2) であった.b) 湿疹・皮膚炎・痒疹群では, 平均値でB cell優位の所見であったが, 各症例間にかなりの差異がみられた.これは, 病態の時間的な問題と関連があることが示唆された.c) 環状肉芽腫では, とくにB cell優位であったが, 血管壁への免疫複合体沈着という既報告成績と合せ, 液性免疫機序の関与が示唆された.d) A.N.A.E.陽性, Tcell優位の所見を呈した疾患群とそのT/B比は以下の通りであった.扁平苔癬 (5.5) , 尋常性乾癬・類乾癬 (1.3) , D.L.E. (5.5) , 深在性エリテマトーデス (2.7) , 顔面播種状粟粒性狼瘡 (1.7) , 皮膚良性リンパ腺症 (2.5) , 尋常性天疱瘡 (1.2) , 悪性リンパ腫群 (2.6) , 皮膚悪性腫瘍群 (2.1) であった.e) 皮膚悪性腫瘍周囲の浸潤細胞は, T cell優位であったが, macrophageの存在と総合して, 腫瘍排除の機序に関与するものと考えられた. (5) 扁平苔癬6例のanti T cell monoclonal antibody染色所見で, 表皮直下の帯状浸潤細胞は, A.N.A.E.染色所見と同様にT cellが主体(平均86%)である所見であった.さらに, OKT 4所見で, それらのT cellの70%がhelper T cellであるという成績であった.また, 表皮に隣接する部位程, このhelper T cellの密度が高いという新知見が認められ, これは, 表皮基底細胞が, 本症の発症に重要な因子となっていることを示唆すると考えられた.

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こんな論文どうですか? 組織酵素染色法・免疫酵素抗体法による各種皮膚疾患の浸潤細胞の解析(柳沢 宏実),1984 https://t.co/YUVfxrrqfB
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