- 著者
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村上 正治
- 出版者
- Showa University Dental Society
- 雑誌
- 昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
- 巻号頁・発行日
- vol.13, no.2, pp.148-167, 1993
- 被引用文献数
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極小未熟児・超未熟児乳歯の形態学的特徴を客観的に明らかにすることを目的として, 本研究を行った.対象は本学小児歯科外来で管理中の, 出生体重1500g未満の小児のうち, 現在全身状態に問題のない小児50名である.資料は, これら対象児が平均4歳0か月になった時点より得られた口腔内診査記録・口腔内写真, 歯列石膏模型および交換期により脱落した抜去歯である.その結果以下の結論を得た. (1) 模型分析より, 歯の大きさの平均は歯冠近遠心幅径において, 全歯で標準値の-1SD前後小さく, 歯冠唇 (頬) 舌径では, ほぼ全歯で標準値の-1SD以内の小さい値を示した. (2) 形態異常については, 癒合歯が健常児にくらべ高い発現率 (14.0%) を示した・ (3) エナメル質形成不全は, 50名中41名に認められ, その発現率は, 82.0%であった. (4) エナメル質形成不全における減形成の発現部位は, 上顎前歯部に多く, 石灰化不全は上下顎の臼歯部に多く認められた. (5) 歯の平均微小硬度数は, エナメル質で308.4, 象牙質で42.9で, ともに健常児にくらべ低い値を示した・ (6) 光顕的観察では, エナメル質新産線の発現位置が健全歯に比較して切端寄りに認められ・Retzius線が明瞭に認められた.以上の結果から極小・超未熟児の乳歯の大きさは小さく・形態異常・形成異常が多く, 歯質の硬さは低く, 石灰化不良な状態であることが示唆された.