- 著者
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韓 玲姫
綿抜 豊昭
- 出版者
- Japan Society for Information and Media Studies
- 雑誌
- 情報メディア研究 (ISSN:13485857)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, no.1, pp.1-14, 2012
本稿は,『周作人日記』を基に,周作人が日本留学後に購入した日本の書籍に注目し,周作人の購入書籍の変遷と文学志向,及び思想の変化との関わりについて考察するものである.周作人の和書の購入は1918年から急増し,日記が現存している1934年まで増加を続けている.本研究を通して,新文化運動時代に,周作人が主に詩歌と小説の書籍を購入し,新詩の創作と日本小説の翻訳に力を入れたのは,当時の政治や思想を変える手段として日本文学にその可能性を見出したからだということがわかった.そして,1921年3月の大患後,日本文学に対する関心が物語や滑稽本等の日本古典文学へと変わるのは,政治に背を向け,思想的,創作的に閑適へと転換したことと関わりがあることを明らかにした.