著者
村上 カオル 大塚 愛子
出版者
The Japanese Society of Health and Human Ecology
雑誌
民族衛生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.55-60,A6, 1957

女子の体育においては, 人体美の形成ということが, 目標の一つとして考えられるであろう.<BR>従来の顔偏重の弊より腕却し, ようやく全身の均整・調和などの美が叫ばれるようになつたのは当然のことである.<BR>最近8頭身という言葉が流行語として通用し, それがあたかも美入の代名詞の如くとり扱われている. 果して8頭身は人体美の規範となるであろうか.<BR>ここに先ず, 8頭身の学詮に関し歴史的考察を行うならば, 紀元前5世紀, ギリシアの最盛期において, 有名な彫刻家Polvkleitosが, 人体の均整美に注目し, 以後実測による比較研究を行い, 途に7頭身をもつて入体の最高の構成美となした. その成果は彼の著述にも発表したといわれる. しかしその記述は現在残つていないが, それらの理念にもとすき, 全身の調和律を作つた彼の代表作が「槍をかつぐ人」 (Doryuhoros) だという.<BR>これに対し, 8頭身論をとなえたのは紀元前4世紀に活躍したLysipposである. 彼はボリュクレイトスにならい, 人体の計測的比較をなし, 頭部が全身の1/8を示す比例が最も美しいと考えた。彼のApoxyomenos「泥をかき落す青年」といわれる彫刻は, このような規準によりつくられ, 優美軽快な彫刻である.<BR>次に, 数字的にも白人の身長及び頭高に関しては, CH. Stratz<SUP>1) 2)</SUP> 以来の研究があり, 韓国人の頭部及び躯幹の計測値は景氏によつて明らかにされている<SUP>4)</SUP>. さらにStratzは日本入についても身体計測を行つている<SUP>3)</SUP>. 日本人の頭部計測に関しては, 附田氏の日本入頭型の地域差<SUP>5)</SUP>, 中山氏の近畿地方男子<SUP>6)</SUP>, 古屋氏の北陸入<SUP>7)</SUP> 等の貴重な研究がある. なお西田氏は芸術的な立場から8頭身について述ぺているが, 系統的な測完に基いたものではない<SUP>8)</SUP>.<BR>即ち, 日本人の人体構成要素の比率について系統的な測定をとげたものは, まだ見出されないようである. ここにおいて私達は頭身指数の意義, 並びに年令別・性別の推移を追求し, さらに頭身指数と体力との関係, 手長, 足長身についても測定を行つた.

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