著者
佐藤 浩一 清水 寛之
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.13-27, 2012

本研究の目的は,自伝的推論に関連して,長期にわたる保持期間を伴う記憶の特性を明らかにすることである.大学生315名,現職教員166名,高齢者160名のあわせて641名の調査協力者に対して,中学時代の教師とのコミュニケーションに関連する記憶を想起させ,自伝的推論ならびに記憶特性を問う45項目(記憶特性質問紙MCQの38項目を含む)への評定を求めた.教職志望の強い大学生は,その出来事と現在の自己を結びつけたり,その経験を参照点としてとらえたりする自伝的推論を活発に行い,そうした記憶を鮮明で詳細に想起していた.また世代が上の人のほうが自伝的推論が活発であり,かつ出来事をより鮮明に想起していた.肯定的な出来事は否的的な出来事よりも,活発な自伝的推論を引き起こしていた.これらの結果は自伝的推論における加齢および感情の側面と関連づけて議論された.日常的な出来事に対する自伝的推論を検討することの意義が論じられた.

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