著者
永井 聖剛 Carl Gaspar
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第7回大会
巻号頁・発行日
pp.24, 2009 (Released:2009-12-18)

自人種の顔と比較し,異なる人種の顔に対する弁別成績等が低下する(他人種効果).本効果は自人種顔への日常的な接触によって説明されるが,その生起因については不明な部分が多い.本研究では個々の顔特徴(左目,右目,左眉毛,右眉毛,左目+左眉毛,右目+右眉毛,鼻,口)で他人種効果が生じるかを調べ,この効果の生起に重要な役割を果たす顔特徴を同定した.日本人被験者18名が参加し,顔全体,あるいは個々の顔特徴のみが提示され,個人弁別課題(10AFC)を自人種顔/他人種顔セットに対して行った.実験の結果,顔全体を提示した場合に加えて,左目,右眉,鼻の3つの特徴を個別に提示した場合にも,他人種効果が生じることが示された.これまで他人種効果は布置的な(configural)処理が関していると示唆されていたが,局所的な特徴の貢献に関しては報告されたことが無く,本結果は他人種効果の生起メカニズムに理解に重要な知見を提供するものといえよう.
著者
小森 政嗣 長岡 千賀
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1-9, 2010-08-30 (Released:2010-12-08)
参考文献数
25
被引用文献数
6 4

本研究では,初回の心理臨床面接におけるクライエントとカウンセラーの対話の映像を解析し,2者の身体動作の関係を分析した.心理面接として高く評価された二つの事例(高評価群)と,高い評価が得られなかった二つの事例(低評価群)を含む,50分間のカウンセリング対話4事例の映像を分析した.加えて,高校教諭と高評価群のクライエントの間の,50分間の日常的な悩み相談2事例を分析した.すべての対話はロールプレイであった.各実験参加者の身体動作の大きさの時系列的変化を映像解析によって測定し,クライエントとカウンセラー/教諭の身体動作の時間的関係を移動相互相関分析により検討した.結果から,(1)カウンセラーの身体動作はクライエントの身体動作の約0.5秒後に起こる傾向があり,かつその傾向は50分間一貫していること,(2)この傾向は高評価群において特に顕著であること,(3)この傾向は悩み相談の2事例では確認されず,高校教師による悩み相談2事例の間で共通した傾向は認められないことが示された.
著者
時津 裕子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.110, 2021

<p>かつては口承で語り継がれた怪談が,Web上のテキストで楽しまれるようになって久しい。そこで描かれる恐怖がどのようなものであるか知ることは,現代日本人の心性や文化的特性を考える上で不可欠だろう。本研究の目的は,現代のネット怪談がもつ意味的構造を解明することである。まとめサイトに掲載されたランキング上位100篇の怪談を収集し,作中に登場する恐怖の喚起につながると考えられる112件の物語要素を抽出した。つづいて,各話におけるこれら要素の存否状況をダミー変数として,数量化理論Ⅲ類による分析を実施した。カテゴリー布置から,1軸が,作中で発生する出来事の原因に明確な説明が成り立つかどうか(「ルール明示/ルール不明瞭」)を,2軸が怪異や霊的存在が目に見える形で登場するかどうか(「恐怖の直接呈示/間接呈示」)を表すと解釈でき,ネット怪談はこれら2軸の組み合わせにより4類型に分類できることがわかった。</p><p></p>
著者
杉島 一郎 松田 瀬菜
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第12回大会
巻号頁・発行日
pp.103, 2014 (Released:2014-10-05)

本研究は,左右の指示をされてもとっさに反応できなかったり,場所を左右で答えるのが困難であったりする左右識別困難について,その原因として認知スタイル(言語優位,視覚優位)が関係あるのではないかとして質問紙による調査を行ったものである。質問紙は谷岡・山下(2005)の左右識別困難質問紙と荒木・木村(2005)のVVQ日本語版,および八田・中塚(1975)の利き手検査を用い,加えて左右識別能力への自信を2件法で質問したものである。99名の大学生を対象に調査を行った結果,左右識別能力に関して性差と認知スタイルの影響がみられた。男性では言語が優位ではなく視覚優位のものほど左右識別が困難で,女性では言語が優位でない方が左右識別困難になりやすいということが示唆された。
著者
足立 邦子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.85-95, 2004-05-31 (Released:2010-10-28)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

なぜ人は錯誤を含む確率判断をする場合があるのだろうか.本研究では確率の概念モデル(Hawkins & Kapadia,1984)に対応するメンタルモデル(伊東,1995)を再検討し,確率判断における思考プロセスを探究する.そのため確率について専門的な知識をもたない学生や社会人を対象に,日常体験すると考えられる状況設定をした課題を提示し,生起確率とその判断理由を自由に記述してもらった.その結果,確率定義運用型・確率定義誤運用型・算術運用型・非算術運用型の4種類の判断タイプがあり,確率定義運用型以外のタイプの判断を行ったときに認知バイアスが生じることがわかった.人は確率判断におけるそれら4つの型の認知的枠組みをもつのではないかと考察された.それら判断型の使い分け方は,アロケーション・システム(allocation system)における機能のしかたと類似するものであることが考察された.
著者
Steven HEINE
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.63-71, 2018-02-28 (Released:2018-04-17)
参考文献数
6

Psychology suffers from the problem of studying a narrow database: most research is conducted on samples that are from Western, Educated, Industrialized, Rich, and Democratic societies. The problem is both that many psychological phenomena appear differently across cultures, and that WEIRD samples are psychological outliers on many dimensions. I will review some evidence that reveals the extent of cultural diversity in various psychological processes, and will discuss some implications. In particular, the WEIRD people problem intersects with a recent concern of a replicability crisis in psychology because failed replications conducted in other cultures might indicate boundary conditions for an effect, rather than a problem with internal validity. Moreover, as one solution to the replicability crisis is to collect larger sample sizes this has the unwanted consequence of further incentivizing the reliance on cheap convenience samples, which would exacerbate the WEIRD people problem. Implications and recommendations will be discussed.
著者
水野 りか 松井 孝雄
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.59-70, 2014-02-28 (Released:2014-08-06)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

本研究では,日本語母語者の日本の漢字表記語のメモリスパンには形態情報の影響が大きく音韻情報の影響は少ないことを検証することを目的とした.実験1では,漢字表記語の形態的長さを統制し,音韻的長さの語長効果への影響を調べた.その結果,モーラ数とメモリスパンは直線的な比例関係にはなく,また,読みの速度の速い参加者ほどメモリスパンが大きいわけではないことが明らかとなった.実験2では,単語の音韻的長さを統制し,形態的長さの語長効果への影響を調べた.その結果,文字数とメモリスパンには明確な直線的な比例関係が認められた.実験3では,メモリスパンへの形態的隣接語数の影響を,標準読みと熟語訓の漢字表記語で比較した.その結果,形態的隣接語数の影響は2種の漢字表記語間で差がなかった.これらの結果は,日本語母語者の漢字表記語のメモリスパンには,音韻情報の影響が少なく,形態情報の影響が大きいことを示している.
著者
笹岡 貴史 乾 敏郎
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第10回大会
巻号頁・発行日
pp.18, 2012 (Released:2012-07-20)

物体の未知の見えを推測する心的イメージ変換は,物体を心的に回転することでも,異なる視点に移動するイメージを作ること(視点変換)でも可能である.しかし,それらの神経基盤に違いがあるかは不明である.そこで,本研究では心的回転/視点変換課題中の実験協力者の脳活動をfMRIによって計測した.課題ではCGで作られた部屋に物体が置かれた画像に続いて,物体を見ながら自分自身が移動する,または物体が回転する動画が呈示された.途中で物体が消去されるが,その間も実験協力者は同じ速度で視点移動する,または物体が回転するイメージを作り,後に呈示された物体の見えと比較照合を行った.視点変換,心的回転中の脳活動を比較すると,前者で左楔部,小脳,後者で補足運動野に活動が見られた.この結果に基づき,視点変換・心的回転に関わる脳内基盤について視点変換と心的回転の二重乖離に関する神経心理学的知見と関連づけて議論を行う.
著者
芦澤 充 乾 敏郎
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第6回大会
巻号頁・発行日
pp.6, 2008 (Released:2008-11-10)

本研究では,心的回転を自己中心座標で表現された物体の心的イメージが自己の仮想的な運動指令によって回転される認知過程であり,頭頂葉が重要な役割を果たしていると考えてモデル化を試みた.モデル1では,物体軸の三次元的勾配に選択的なニューロン,運動速度に選択的なニューロン,運動系の信号によって出力が調節されるニューロンといった,いずれも頭頂葉に存在が示唆されているニューロンをモデル化し,シミュレーション実験によって,ニューロン集団の活動パターンで表象された三次元空間上のスティックの勾配が,与えられた回転速度に応じて徐々に変化する過程を再現できた.この結果は,前述の仮説を支持するものである.また,モデル1を拡張したモデル2では,自己の運動情報と,それに応じて変化するスティックの二次元的勾配情報の統合により,スティックの三次元的勾配を知覚する認知過程を再現できた.
著者
井関 龍太 川崎 惠里子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第7回大会
巻号頁・発行日
pp.105, 2009 (Released:2009-12-18)

過去の出来事を思い出すときには,自分自身がその場にいて実際に周囲の状況を見ているかのように思い出す場合と(一人称の視点),第三者の立場に立って外部から自分を見つめているかのように思い出す場合(三人称の視点)がある。このような想起の視点は,現在の自己との整合性が低い記憶を想起する場合には三人称になりやすいことが報告されている。このことから考えると,現在からより離れた時点の記憶を想起するときほど,三人称の視点で想起されやすいと思われる。そこで,本研究では,手がかり語のイメージ性を操作して自伝的記憶の想起を求めた。一般に,イメージ性の高い語は,より過去の出来事を想起させることが知られている。実験の結果,高イメージ語は,低イメージ語よりも,より過去の出来事を想起させた。しかし,想起の視点は,手がかり語の違いによって有意には異ならなかった。想起の鮮明性は,高イメージ語の場合に高い傾向が見られた。
著者
西山 慧 石黒 翔
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第17回大会
巻号頁・発行日
pp.109, 2019 (Released:2019-10-28)

多くの認知心理学研究では,人間を対象とした実験が実施される。 そのために実験者は,参加者を募集し,応募があれば予定を調整し,実施日を通知し,カレンダーに登録し,実験前日にはリマインダーを送る。 場合によっては参加者リストを作成する必要があるだろう。 数十人の参加者一人ひとりに対してこの一連の手続きを手作業でミスなく行うことはかなりの注意が必要で極めて煩わしい。 一方でこのような手続きが自動で実行されるサービスも存在するが,有料である。 そこで,我々はGoogleが提供するサービスを組み合わせて,実験日の確定からリマインダーまでをほぼ自動かつ無料で実行できるシステムを実装した。 システムの根幹はGoogle Apps Scriptというプログラミング言語で動作しているが,プログラミングに不慣れな方々にも利用しやすいように,スプレッドシート上で基本的な設定を編集できるようにした。 発表では本システムの機能を体験するためのデモンストレーションも行う。
著者
正田 真利恵 黒田 直史 横澤 一彦
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.69-76, 2015-02-28 (Released:2015-04-16)
参考文献数
13

顔や視線は情報選択を司る顕在的注意,すなわち注視に影響する.本研究ではマジック動画観察時の眼球運動を計測することで,ヒトの顔や視線方向が,注視に強く影響することを検証した.動画開始時にはマジシャンの顔が注視されやすかった.またマジシャンが視線を向けた物体が,その後,持続的に注視されたことから,他者の視線方向が観察者の注視行動に影響した.さらに注視すべき対象を知っている2回目観察時においても,マジシャンが視線を向けた物体が長く注視された.そしてマジシャンの顔が遮蔽され,視線方向を視認できない場合にも本傾向は生じたことから,他者の視線は,観察者の注視行動に対して,頑健に影響したと考えられる.ただし他者の視線方向に対する注視の偏りは,動画の進展に伴い減衰した.以上より,他者の意図を正しく推測できて初めて内容が理解できるマジック動画を観察しているときには,事前観察に基づき注視行動を制御可能であっても,他者の存在から視線を逸らしにくいことが明らかになった.
著者
重森 雅嘉 佐藤 文紀 増田 貴之
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第9回大会
巻号頁・発行日
pp.48, 2011 (Released:2011-10-02)

一般的に多くの人に当てはまる事柄であっても、心理検査や占いの結果として提示すると、自分に特別な内容として受け取られやすい(バーナム効果)。この効果を注意や警告を強化するものとして用いることができれば、安全や教育においての有効な活用が期待できる。本研究では日常的な展望記憶課題(一連の実験セッションの最後にID札を返却する課題)を用い、展望記憶エラーに対する警告をおみくじのように被験者が選択することにより、同様の内容を実験者から与えられるよりも警告の効果が高まることを明らかにした。
著者
鈴木 健斗 福井 隆雄
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第17回大会
巻号頁・発行日
pp.4, 2019 (Released:2019-10-28)

本研究では、「物理的な刺激がないにも関わらず触覚を経験する」現象である擬似触覚(pseudo-haptics)に着目し、VR空間上でも生成可能か検討し、擬似触覚の主観的評価値と個人特性(この場合、自閉症スペクトラム指数)との関連についても調べた。実験では、ヘッドマウントディスプレイを装着し、右手を台の上に置き、VR空間内に提示されるモデルの手腕に自分の手腕を重ねる姿勢をとり、モデルの手腕が触れている白いチューブ上を左から右へと手腕に向かって流れてくる灰色の円筒がモデルの手腕に触れる瞬間に、当初の速度(5.7deg/秒)から0.1~0.9倍に減速する、あるいは速度変化がない条件を設定した。その結果、減速の割合が大きいほど、実験参加者は強い擬似触覚を経験した。さらに、自閉傾向が高いほど擬似触覚を経験する可能性が示唆された。
著者
土田 幸男 室橋 春光
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.67-73, 2009-08-31 (Released:2010-11-10)
参考文献数
26

本研究は自閉症スペクトラム指数(AQ)とワーキングメモリの各コンポーネントが関わる記憶容量との関係を検討した.自閉症スペクトラムとは,自閉性障害の症状は社会的・コミュニケーション障害の連続体上にあり,アスペルガー症候群は定型発達者と自閉性障害者の中間に位置するという仮説である.自閉性障害者においては音韻的ワーキングメモリには問題が見られないが,視空間的ワーキングメモリには問題が見られるという報告がある.高い自閉性障害傾向を持つ定型発達の成人のワーキングメモリ容量においても,同様の傾向が見られる可能性がある.そこで本研究では定型発達の成人において音韻的ワーキングメモリ容量,視空間ワーキングメモリ容量,そして中央実行系が関わるリーディングスパンテストにより査定される実行系ワーキングメモリ容量とAQの関係を検討した.その結果,AQ高群では低群よりも視空間ワーキングメモリ容量が小さかった.全参加者による相関係数でも,AQと視空間ワーキングメモリ容量の間には負の相関が認められた.しかし,音韻,実行系ワーキングメモリ容量とAQの間には関係が見られなかった.これらの結果は,自閉性障害者で見られる認知特性が,定型発達の成人の自閉性障害傾向でも同様に関わっていることを示唆している.
著者
松本 昇
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.39-57, 2022-02-28 (Released:2022-03-25)
参考文献数
129

自伝的記憶に関する研究は数多く行われてきており,自伝的エピソード記憶と自伝的意味記憶といったさまざまな区分とそれらの測定課題が提唱されている.その背景には,神経心理学,認知神経科学,認知心理学,臨床心理学の各領域において必要とされた課題が開発され,研究が進められてきた過去がある.しかしながら,これらの研究領域は,相互参照されることの少ないままに進められているのが現状である.本論文は,これまでに提唱された自伝的記憶に関する概念課題の対応を測定課題に基づいて整理することを目的とした.自伝的記憶をどのように分類するのか,そのためにどのような測定課題があるのか,自伝的記憶はどのように検索されるのかといったテーマについて,これまでの知見をまとめた.さらに,知見の統合と新たな研究領域の開拓へ向けた,将来の方向性を提言した.
著者
三雲 真理子 高橋 美帆
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第9回大会
巻号頁・発行日
pp.94, 2011 (Released:2011-10-02)

本研究では、多種多様のミネラルウォーターが商品化されている近年の傾向を踏まえ、市場で有名なミネラルウォーターのパッケージラベルが中身の味の評価に影響を及ぼすかを調べることを目的として、20代と60代の対象者に対して実験を行った。実験で使用したペットボトルは、市販の「天然水」、「クリスタル」および本来のラベルの代わりに「水道水」のラベルを貼った3本であり、中身はいずれも水道水であり、ラベルによるプラシーボ効果の検証をおこなった。その結果、20代も60代も「水道水」ラベルの水のほうが市販の他の2本のペットボトルの水より臭みを感じ、逆に市販の2本のペットボトルの水のほうが「水道水」ラベルの水より甘みを感じた。また、20代に比べて60代はプラシーボ効果が大きく、ラベルによる暗示効果が得られた。
著者
森川 和則 片岡 咲
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.36, 2010

制御幻想とは、偶然によって決まり制御できない事象をある程度自分の意思や行動でコントロールできると思いこむ認知錯覚であり、一般にギャンブルの状況で現れるとされる。ギャンブルを用いた先行研究のほとんどではまだ起こっていない一回限りの賭けで賭け金の大きさを従属変数としてきた。また、まだ起こっていない事象に対する予期的な制御幻想と、すでに起こった事象に対する回顧的制御幻想とは別々のパラダイムで研究されてきた。これに対し、本研究では、より現実的な反復ギャンブル状況(ルーレット)を用い、ギャンブルから得られる満足感と予期的制御幻想および回顧的制御幻想を同じパラダイムで研究した。実験ではコンピュータ上でルーレットゲームを作成し、回転するボールが減速し始めるタイミングを参加者が手動で決定できる条件とコンピュータが自動的に決定する条件とで満足感と制御幻想を測定した。手動条件で強力な制御幻想が生じた。
著者
山本 晃輔
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.65-73, 2008-08-31 (Released:2010-07-09)
参考文献数
28
被引用文献数
4 2 6

本研究では日誌法を用い,“プルースト現象”——におい手がかりによって自伝的記憶が無意図的に想起される現象——の調査を行った.30名の参加者は1カ月間,プルースト現象が生起したときに記憶の内容およびその想起状況について記録するように求められた.その結果,ほとんどの記憶が古く,快でかつ情動性が高く,特定的で追体験感覚を伴った出来事であることが示された.加えて,手がかりとなったにおいは快でかつ感情喚起度が高く,命名が容易であった.また,想起状況の分析から,想起時の活動が副次的な手がかりとして作用することはまれであった.さらに,感情一致効果が見られた.これらの結果はにおい手がかりによって喚起された感情がプルースト現象の生起に影響することを示唆している.
著者
北神 慎司 菅 さやか KIM Heejung 米田 英嗣 宮本 百合
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.19, 2009

日本では,特に,トイレを表すマークにおいて,男女の区別は「形(男女それぞれのシルエット)」によって表されるだけでなく,男性用には青などの寒色系,女性用には赤などの暖色系の色を用いることが多い.このように,色によって,トイレの男女を区別するというデザインは日本特有のものであり,欧米ではあまり見られない.そこで,本研究では,日本人の大学生を対象として,トイレマークの認知に,色や形がどのような影響を及ぼすかについて,ストループ様課題を用いて検討した.その結果,ピクトグラム(トイレマーク)条件では,赤,ピンク,青,黒の各彩色条件において,男女の意味判断に要する反応時間に差が見られた(暖色系は「男>女」,寒色系は「男<女」).これらの結果は,日本人にとって,トイレマークの男女を識別する際の情報として,色が非常に重要であることを示唆するものと考えられる.