著者
足立 邦子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.85-95, 2004-05-31 (Released:2010-10-28)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

なぜ人は錯誤を含む確率判断をする場合があるのだろうか.本研究では確率の概念モデル(Hawkins & Kapadia,1984)に対応するメンタルモデル(伊東,1995)を再検討し,確率判断における思考プロセスを探究する.そのため確率について専門的な知識をもたない学生や社会人を対象に,日常体験すると考えられる状況設定をした課題を提示し,生起確率とその判断理由を自由に記述してもらった.その結果,確率定義運用型・確率定義誤運用型・算術運用型・非算術運用型の4種類の判断タイプがあり,確率定義運用型以外のタイプの判断を行ったときに認知バイアスが生じることがわかった.人は確率判断におけるそれら4つの型の認知的枠組みをもつのではないかと考察された.それら判断型の使い分け方は,アロケーション・システム(allocation system)における機能のしかたと類似するものであることが考察された.
著者
小森 政嗣 長岡 千賀
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1-9, 2010-08-30 (Released:2010-12-08)
参考文献数
25
被引用文献数
3 4

本研究では,初回の心理臨床面接におけるクライエントとカウンセラーの対話の映像を解析し,2者の身体動作の関係を分析した.心理面接として高く評価された二つの事例(高評価群)と,高い評価が得られなかった二つの事例(低評価群)を含む,50分間のカウンセリング対話4事例の映像を分析した.加えて,高校教諭と高評価群のクライエントの間の,50分間の日常的な悩み相談2事例を分析した.すべての対話はロールプレイであった.各実験参加者の身体動作の大きさの時系列的変化を映像解析によって測定し,クライエントとカウンセラー/教諭の身体動作の時間的関係を移動相互相関分析により検討した.結果から,(1)カウンセラーの身体動作はクライエントの身体動作の約0.5秒後に起こる傾向があり,かつその傾向は50分間一貫していること,(2)この傾向は高評価群において特に顕著であること,(3)この傾向は悩み相談の2事例では確認されず,高校教師による悩み相談2事例の間で共通した傾向は認められないことが示された.
著者
水野 りか 松井 孝雄
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.59-70, 2014-02-28 (Released:2014-08-06)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

本研究では,日本語母語者の日本の漢字表記語のメモリスパンには形態情報の影響が大きく音韻情報の影響は少ないことを検証することを目的とした.実験1では,漢字表記語の形態的長さを統制し,音韻的長さの語長効果への影響を調べた.その結果,モーラ数とメモリスパンは直線的な比例関係にはなく,また,読みの速度の速い参加者ほどメモリスパンが大きいわけではないことが明らかとなった.実験2では,単語の音韻的長さを統制し,形態的長さの語長効果への影響を調べた.その結果,文字数とメモリスパンには明確な直線的な比例関係が認められた.実験3では,メモリスパンへの形態的隣接語数の影響を,標準読みと熟語訓の漢字表記語で比較した.その結果,形態的隣接語数の影響は2種の漢字表記語間で差がなかった.これらの結果は,日本語母語者の漢字表記語のメモリスパンには,音韻情報の影響が少なく,形態情報の影響が大きいことを示している.
著者
Steven HEINE
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.63-71, 2018-02-28 (Released:2018-04-17)
参考文献数
6

Psychology suffers from the problem of studying a narrow database: most research is conducted on samples that are from Western, Educated, Industrialized, Rich, and Democratic societies. The problem is both that many psychological phenomena appear differently across cultures, and that WEIRD samples are psychological outliers on many dimensions. I will review some evidence that reveals the extent of cultural diversity in various psychological processes, and will discuss some implications. In particular, the WEIRD people problem intersects with a recent concern of a replicability crisis in psychology because failed replications conducted in other cultures might indicate boundary conditions for an effect, rather than a problem with internal validity. Moreover, as one solution to the replicability crisis is to collect larger sample sizes this has the unwanted consequence of further incentivizing the reliance on cheap convenience samples, which would exacerbate the WEIRD people problem. Implications and recommendations will be discussed.
著者
正田 真利恵 黒田 直史 横澤 一彦
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.69-76, 2015-02-28 (Released:2015-04-16)
参考文献数
13

顔や視線は情報選択を司る顕在的注意,すなわち注視に影響する.本研究ではマジック動画観察時の眼球運動を計測することで,ヒトの顔や視線方向が,注視に強く影響することを検証した.動画開始時にはマジシャンの顔が注視されやすかった.またマジシャンが視線を向けた物体が,その後,持続的に注視されたことから,他者の視線方向が観察者の注視行動に影響した.さらに注視すべき対象を知っている2回目観察時においても,マジシャンが視線を向けた物体が長く注視された.そしてマジシャンの顔が遮蔽され,視線方向を視認できない場合にも本傾向は生じたことから,他者の視線は,観察者の注視行動に対して,頑健に影響したと考えられる.ただし他者の視線方向に対する注視の偏りは,動画の進展に伴い減衰した.以上より,他者の意図を正しく推測できて初めて内容が理解できるマジック動画を観察しているときには,事前観察に基づき注視行動を制御可能であっても,他者の存在から視線を逸らしにくいことが明らかになった.
著者
浜田 寿美男
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.133-139, 2007
被引用文献数
1

わが国では刑事取調べにおいて無実の人が嘘の自白をする例が少なくない.この虚偽自白の典型例は強制下の迎合によるものである.身柄を拘束された被疑者に対して,取調官が被疑者は犯人に間違いないと確信して取り調べるが,それはしばしば証拠なき確信である.この状況のもとで,被疑者は一般に想像されるよりはるかに強い圧力をこうむる.被疑者は身近な人々から遮断され,生活を警察のコントロール下に置かれ,屈辱的なことばを投げつけられ,弁明しても聞き入れてはもらえない無力感にさいなまれる.しかもこの苦しみがいつまで続くかわからず,見通しを失ってしまう.そこでは有罪となったときに予想される刑罰が自白を押しとどめる歯止めにならない.取調べ下の苦しみはたったいま味わっているものであって,それを将来に予想される刑罰の可能性と比べることはできないからであり,また,無実の人にとっては予想されるはずの刑罰に現実感をもてないからである.虚偽自白の心理は,第三者の視点からではなく,まさに渦中の当事者の視点からしか理解できない.この渦中の視点からの心理学をどのように展開するかは,今後,刑事事件を超えた課題となりうるはずである.
著者
土田 幸男 室橋 春光
出版者
The Japanese Society for Cognitive Psychology
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.67-73, 2009

本研究は自閉症スペクトラム指数(AQ)とワーキングメモリの各コンポーネントが関わる記憶容量との関係を検討した.自閉症スペクトラムとは,自閉性障害の症状は社会的・コミュニケーション障害の連続体上にあり,アスペルガー症候群は定型発達者と自閉性障害者の中間に位置するという仮説である.自閉性障害者においては音韻的ワーキングメモリには問題が見られないが,視空間的ワーキングメモリには問題が見られるという報告がある.高い自閉性障害傾向を持つ定型発達の成人のワーキングメモリ容量においても,同様の傾向が見られる可能性がある.そこで本研究では定型発達の成人において音韻的ワーキングメモリ容量,視空間ワーキングメモリ容量,そして中央実行系が関わるリーディングスパンテストにより査定される実行系ワーキングメモリ容量とAQの関係を検討した.その結果,AQ高群では低群よりも視空間ワーキングメモリ容量が小さかった.全参加者による相関係数でも,AQと視空間ワーキングメモリ容量の間には負の相関が認められた.しかし,音韻,実行系ワーキングメモリ容量とAQの間には関係が見られなかった.これらの結果は,自閉性障害者で見られる認知特性が,定型発達の成人の自閉性障害傾向でも同様に関わっていることを示唆している.
著者
戸田 正直
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.205-215, 2006-03-31 (Released:2010-10-13)
参考文献数
9
被引用文献数
2

筆者が開発してきたアージ理論を,感情システムの基本構造と,感情システムが働くのに不可欠な認知システムの活動様式に話を絞って概観を試みる.この二つのシステムは心というソフトウエアの重要なサブシステムであって,一応別システムであるが,ともに協調しながら,心が動物から人間へ野生の環境の中で生き延びソフトウエアとして進化してくる間,重要な役割を演じてきた.本稿ではまず感情システムの基本構造を論じたうえで,感情を論じるうえで必須な認知システムの働き,特に思考とか想像とかと呼ばれる働きを概説する.そういう議論の間に,「今ここ」効果とか,アテンショントラップとか,認知による感情の制御とか,考えるための道具としてのダイナミックスキーマとか,想像とか,言語とか,その他,人間,動物を含めて,心というソフトウエアの働きを理解すために不可欠な諸概念もともに論じる.
著者
山本 晃輔
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.65-73, 2008-08-31 (Released:2010-07-09)
参考文献数
28
被引用文献数
2 2 6

本研究では日誌法を用い,“プルースト現象”——におい手がかりによって自伝的記憶が無意図的に想起される現象——の調査を行った.30名の参加者は1カ月間,プルースト現象が生起したときに記憶の内容およびその想起状況について記録するように求められた.その結果,ほとんどの記憶が古く,快でかつ情動性が高く,特定的で追体験感覚を伴った出来事であることが示された.加えて,手がかりとなったにおいは快でかつ感情喚起度が高く,命名が容易であった.また,想起状況の分析から,想起時の活動が副次的な手がかりとして作用することはまれであった.さらに,感情一致効果が見られた.これらの結果はにおい手がかりによって喚起された感情がプルースト現象の生起に影響することを示唆している.
著者
土田 幸男 室橋 春光
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.67-73, 2009-08-31 (Released:2010-11-10)
参考文献数
26

本研究は自閉症スペクトラム指数(AQ)とワーキングメモリの各コンポーネントが関わる記憶容量との関係を検討した.自閉症スペクトラムとは,自閉性障害の症状は社会的・コミュニケーション障害の連続体上にあり,アスペルガー症候群は定型発達者と自閉性障害者の中間に位置するという仮説である.自閉性障害者においては音韻的ワーキングメモリには問題が見られないが,視空間的ワーキングメモリには問題が見られるという報告がある.高い自閉性障害傾向を持つ定型発達の成人のワーキングメモリ容量においても,同様の傾向が見られる可能性がある.そこで本研究では定型発達の成人において音韻的ワーキングメモリ容量,視空間ワーキングメモリ容量,そして中央実行系が関わるリーディングスパンテストにより査定される実行系ワーキングメモリ容量とAQの関係を検討した.その結果,AQ高群では低群よりも視空間ワーキングメモリ容量が小さかった.全参加者による相関係数でも,AQと視空間ワーキングメモリ容量の間には負の相関が認められた.しかし,音韻,実行系ワーキングメモリ容量とAQの間には関係が見られなかった.これらの結果は,自閉性障害者で見られる認知特性が,定型発達の成人の自閉性障害傾向でも同様に関わっていることを示唆している.
著者
水原 啓太 武藤 拓之 入戸野 宏
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.25-31, 2019-02-28 (Released:2019-03-21)
参考文献数
21

人は自分が意思決定したタイミングを正確に知覚できない.Bear & Bloom(2016)は,画面上に五つの白い円を提示し,実験参加者に任意の円を選ばせた.しばらくして一つの円(標的刺激)を赤色に変化させ,参加者にその円を選んでいたかどうかを尋ねた.その結果,色の変化までの時間(遅延時間)が短いと,標的刺激を選択していたと回答する割合が高かった.これは,実際には色の変化が選択に影響を与えたにもかかわらず,変化前に選択していたと錯覚したことを意味する.本研究では,遅延時間が25~50 msのときに同様の効果が認められたが,さらに短い17 msでは認められなかった.この知見は,意思決定のタイミングについてのポストディクションを支持する新たな証拠である.また,色の変化までに円の選択が間に合ったという報告は,遅延時間が167 ms以下のときに実際よりも多くなることが示された.この結果は,遅延時間が短いときに,意思決定についての意識が後付け的に生じることを示唆している.
著者
陳 雅 佐藤 浩一
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.193-203, 2006-03-31 (Released:2010-10-13)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

ある対象について思考を抑制しようとすると,かえって侵入的思考が増加するという,逆説的な効果が報告されている.本研究は,従来の研究よりも生態学的妥当性を高めた条件下で,逆説的効果を検討した.まず51名の参加者に「腫瘍問題」を解いてもらった.その後の抑制段階で,抑制群の参加者にはその内容を抑制するように,また非抑制群の参加者には自由に思考するように教示を与えた.続く自由思考段階では,単調作業をする群と静かに座っている群に分けられ,全員自由に思考するよう教示を与えた.各段階において参加者は腫瘍問題に関する思考が侵入する都度,用紙にチェックした.また各段階が終了した時点で,抑制対象の侵入と制御困難感を測定する項目に回答した.単調作業の有無にかかわらず,抑制教示を与えられた群は非抑制群に比べて侵入的思考を多く経験し,侵入と制御困難感の増加を示した.さらに約1週間後にも,抑制の効果は有意な傾向を示した.また腫瘍問題の偶発再生を求めたところ,抑制群の参加者は非抑制群の参加者と比べて成績が低い傾向が見られた.参加者の内観報告に基づいて,侵入的思考の多様性が論じられた.
著者
布井 雅人 中嶋 智史 吉川 左紀子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.43-50, 2013-08-31 (Released:2014-07-19)
参考文献数
12

本研究では,「限定」することが,商品の魅力評価および商品選択に及ぼす影響について検討を行うことを目的とした.実験では,限定販売であることを示す限定ラベル刺激(期間限定・数量限定・地域限定)と限定無関連ラベル刺激を作成し,商品画像刺激とともに対呈示した.実験1では,商品の魅力度評定が行われ,実験2では,同時に呈示された二つの商品から買いたいほうを選択する強制二肢選択課題が行われた.その結果,すべての限定条件において,限定ラベル刺激によって商品魅力度が上昇した.さらに,期間限定条件では選択率の変化が見られ,数量限定・地域限定よりも限定の影響が大きいことが示された.
著者
山本 晃輔
出版者
The Japanese Society for Cognitive Psychology
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.65-73, 2008
被引用文献数
2

本研究では日誌法を用い,"プルースト現象"——におい手がかりによって自伝的記憶が無意図的に想起される現象——の調査を行った.30名の参加者は1カ月間,プルースト現象が生起したときに記憶の内容およびその想起状況について記録するように求められた.その結果,ほとんどの記憶が古く,快でかつ情動性が高く,特定的で追体験感覚を伴った出来事であることが示された.加えて,手がかりとなったにおいは快でかつ感情喚起度が高く,命名が容易であった.また,想起状況の分析から,想起時の活動が副次的な手がかりとして作用することはまれであった.さらに,感情一致効果が見られた.これらの結果はにおい手がかりによって喚起された感情がプルースト現象の生起に影響することを示唆している.
著者
中島 早苗 分部 利紘 今井 久登
出版者
The Japanese Society for Cognitive Psychology
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.105-109, 2012

本研究では匂いの同定しやすさ(同定率),快・不快(感情価),日頃嗅ぐ頻度(接触頻度)が匂いからの無意図的想起の生起要因となるかを検討した.74名の参加者にさまざまな匂いを提示して,<i>SD</i>評定を求めた.その後,評定中に自伝的記憶を意図せずに想起したかを尋ねた.その結果,接触頻度の高い匂いほど無意図的想起が生じやすかった.しかし同定率や感情価は無意図的想起の有無と関連がなかった.この結果は,匂いからの無意図的想起では言語表象を介した活性化が生じないこと,無意図的想起は手がかりの種類によって想起過程が異なることを示唆する.
著者
瀧川 真也 仲 真紀子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.65-73, 2011-08-31 (Released:2011-09-07)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本研究の目的は,音楽により喚起される懐かしさ感情が自伝的記憶の想起に及ぼす影響を検討することであった.参加者は大学生57名であり,小学校高学年時と中学校時の記憶,および小学校高学年時に聴いていた音楽の記述を求めた.1カ月後,参加者に,画面に提示されたエピソードが参加者の小学校と中学校のどちらの記憶かを判断させ,その反応時間を測定した.反応時間を懐かしさあり音楽条件,懐かしさなし音楽条件,音楽なし条件の3条件で比較検討した.その結果,懐かしさを感じた時は,懐かしさを感じさせる時期の自伝的記憶のみが想起されやすくなることが明らかになった.また,小学校高学年の時に聞いた音楽に対し,より懐かしさが喚起されると,中学校の記憶に対する誤反応が増加することが示された.
著者
柴崎 秀子 時本 真吾 小野 雄一 井上 次夫
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.101-120, 2015-02-28 (Released:2015-04-16)
参考文献数
56

本研究では日本人高校生用の日英両語のリーディングスパンテスト(RST)を開発し,集団による短時間での実施が可能であるかどうか試行した.その結果,本研究で開発したRSTの信頼性係数は日本語(&#x3B1;=.864),英語(&#x3B1;=.875)ともに高く,得点分布に正規性が示され,RSTを集団で行うことが可能であることが示された.このテストを用いて,高校2年生を対象に日英語RST得点の相関を分析したところ,英語習熟度の高い群の相関係数は.677,低い群は.531であった.英語専攻の大学生を対象にした先行研究では日英語RST得点の相関係数は.84と報告されている.これらの結果は,第二言語の習熟が進んだ学習者は未熟な学習者よりも日英語RSTの相関係数が高いことを示し,その理由として,第二言語に熟達した読み手は第二言語読解を母語読解に近い形で行うことができるからではないかと推測される.
著者
上田 彩子 廼島 和彦 村門 千恵
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.103-112, 2010-02-28 (Released:2010-11-25)
参考文献数
50

主に顔の形態特徴の情報処理を基に行われる顔認知過程において,表情情報が影響を及ぼすことは,多くの研究で示されている.また,表情認知に性差があることも示唆されている.表情認知における性差が,顔認知過程で表情が及ぼす影響に関与する可能性がある.そこで,本研究では,顔の印象決定において表情が及ぼす影響に性差が認められるかどうか実験的に検討した.刺激の顔の形態変化にはメイク手法を用いた.被験者は,刺激の相貌印象と表情表出強度について評価を行った.その結果,表情認知能力に性差は認められなかったが,相貌印象判断に表情が与える影響は女性のほうが大きいことが示された.
著者
市川 伸一 下條 信輔
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.137-145, 2010-02-28 (Released:2010-11-25)
参考文献数
36
被引用文献数
1

ベイズ的な事後確率推定問題の中でも,「3囚人問題」は,とりわけ数学的な解が直観的に理解しにくいことで知られている。我々は,オリジナルの3囚人問題の事前確率を変化させた変形版を提案した.これは,解答者の思考過程や納得のしかたが答えに反映されやすくなるとともに,その規範的なベイズ解は,いっそう反直観的に思えるものである.数理的分析と心理実験を通じて,3囚人問題,とりわけ変形版の難しさがどこにあるのかが検討され,問題構造に関する中間レベルの表象が重要であることを指摘した.また,こうした反直観的な事後確率推定問題を理解するための一つの方法として,数学的に同型な視覚的モデルである「ルーレット表現」を提案した.事後確率を主観的に推定するときの素朴なスキーマやヒューリスティックスの性質と,ベイズ的な推定方法を促すことの可能性について議論された.さらに,これらの研究がどのような意義をもつものかを,近年の関連研究とともに議論していく.