著者
新国 佳祐
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.29-36, 2012

読み能力の低い読み手は,熟達した読み手と比較して,文中の句境界の適切な認知が困難であることが指摘されている.本研究では,読み能力の十分でない読み手にとって,句境界認知が困難となる原因として,文構造を推測するための方略の不適応を取り上げて検討した.実験では,日本人大学生40名に対して,英語の2種の中央埋め込み文(OR文,SR文)および非中央埋め込み文(C文)を,参加者の半数には句境界の手がかりを明示して,半数には明示せずに呈示した.実験の結果,文構造推測のための方略が不適応となるOR文においては,句境界に関する手がかりの明示によって文の処理速度および処理の精確性が向上した一方で,方略が適応的に機能するSR文,C文ではそのような手がかりの文処理への影響は確認されなかった.このような結果から,文構造を推測するための方略の不適応が句境界認知の困難性を引き起こす原因の一つとなっており,結果として文処理全体が困難となる可能性が示唆された.

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