著者
神崎 菜摘 竹本 周平
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.94, no.6, pp.299-306, 2012

昆虫嗜好性線虫と媒介昆虫との生態的関係の進化に関して, 植物病原性の獲得という観点から考察した。マツノザイセンチュウ近縁種群 (<I>Bursaphelenchus 属 xylophilus </I>グループ) はヒゲナガカミキリ族のカミキリムシ類に便乗して移動分散を行う昆虫便乗性線虫であるが, グループ内では系統的に新しいと考えられるいくつかの種, マツノザイセンチュウ, ニセマツノザイセンチュウ, <I>B. firmae </I>が植物体, 主にマツ属植物に対して, 程度の違いはあるが病原力を有している。一方で, より起源の古い<I>B. doui</I> のように, これらとは非常に近縁でありながらも病原性がないと考えられる種も知られている。このような線虫に関して, 媒介昆虫の生活史特性を比較したところ, 植物病原性のある線虫種を媒介するものは, その生活史において, 樹木の健全な組織に接触する機会が多いということが明らかになった。また, マツノザイセンチュウ近縁種群以外の<I>Bursaphelenchus</I>属線虫でも同様に, 植物病原性を持つ種は媒介昆虫により健全な組織に接する機会が多いことが示唆されている。これらのことから, このグループの線虫の病原性は, 健全な植物体に侵入し, そこで生存する能力に由来し, 媒介昆虫の生活史特性に依存して選択されると考えられた。

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