著者
那須野 三津子
出版者
The Japanese Association of Special Education
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.247-259, 2011

本研究の目的は、日本人学校へ日本政府から派遣される教員数の算出基準の高かった時期に着目し、障害児教育担当教員の派遣を実現させた要因を解明することとした。当該教員の派遣がおおやけに検討されていなかった1979~1987年度間と、その派遣が検討され実施された1988~2002年度間の教員派遣制度を比較した結果、次の4つの要因が積み重なった段階で当該教員の派遣が実現されたことが明らかになった。第1の段階は、教員派遣制度に対する公的補助が憲法第26条の精神に沿うものであると、国会で表明されたことである。第2の段階は、障害者の権利擁護を促す国際的な動向があり、障害のある子どもの教育機会確保の問題が認識されやすい状況になったことである。第3の段階は、教員派遣制度に対する公的補助が拡充する一方で、障害児教育担当教員派遣要請への対応がなされない場合に、予算配分の問題が顕在化しやすい状況になったことである。第4の段階は、予算の問題とからめて、日本人学校での障害のある子どもの教育機会の確保が日本政府に求められたことである。

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