- 著者
-
東條 英昭
小川 清彦
- 出版者
- 日本家禽学会
- 雑誌
- 日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
- 巻号頁・発行日
- vol.12, no.1, pp.14-19, 1975
鶏コクシジウム免疫の成立には, 感染そのものが重要な要素であることはよく知られているが, その理由について明確な説明はなされていない。<br>本実験は, その理由を知る手掛かりを得るために, 盲腸にはよく発達したリンパ組織が存在していることに着目し, 鶏コクシジウム免疫の維持が, 感染部位の切除によりどのような影響を受けるかを調べたものである。得られた結果は以下に要約するとおりである。<br>1. 結紮手術により閉塞した左側盲腸に対し, <i>Eimeria tenella</i> のスポロゾイトを注入し感染を行ない, その後オーシストを経口感染させたところ, 以前に感染を受けていなかった右側盲腸がオーシストによる経口感染に対して充分な抵抗性を示した。また左側盲腸に同様の処置をした後, 左右の盲腸に同数のスポロゾイトの注入で攻撃感染を行ない, 5日目に左右盲腸における感染の状況を組織学的に比較観察したところ, 以前に感染を受けていない右側盲腸が以前に感染を受けた左側盲腸とほぼ同程度の感染防御能を示すことが認められた。<br>2. 感染を経た左側盲腸を感染の2.5~3週間目に切除•摘出し, その後, 右側盲腸に対してオーシストの経口感染を行なったところ, その後に排出されたオーシスト数の測定結果から, 切除された鶏の右側盲腸は, 切除されなかった鶏の右側盲腸とほとんど同程度の感染防御能を示した。これは, 感染を経た一側の盲腸が切除された場合にも, その後のコクシジウム免疫は充分保持されていることを示すものである。<br>以上のことから, コクシジウム免疫は, 感染部位に限定されるものではなく, また感染部位の存在とは無関係に全身的に保持されているものと考えられる