- 著者
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濱尾 章二
松原 始
- 出版者
- 日本鳥学会
- 雑誌
- 日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.2, pp.85-89, 2001
京都府の木津川河川敷にある砂州で,2000年5月3-5日にウグイス <i>Cettia diphone</i> の調査を行った.ノイバラのやぶが発達した部分で4羽の巣立ち雛が発見された.これらの雛は上面がオリーブ褐色,下面がバフ黄色で,頭部に長い綿羽をもち,体には斑点がなく,口ひげもなかった.また,捕獲により性を判定し、標識して個体識別した雌雄のウグイス成鳥が餌を運んでいた.これらのことから,4羽はウグイスの雛であると判定した.雛の測定値や30-50cmしか飛ぶことができないことから,これらの雛は近隣で巣立ったものと考えられた.調査地では,他にも抱卵斑の発達した雌が3羽捕獲された.しかし,巣は発見できなかった.ウグイスは一般に山地のやぶで繁殖する.調査地は低地の砂州であるが,河川管理による洪水の減少によって1970年代後半から植生が発達し始め,現在はノイバラやヤナギ類,サワグルミが侵入している.河川管理による河川敷の林地化が,ウグイスの繁殖場所をつくり出したものと考えられる.この研究は河川生態学術研究会木津川グループ(代表:山岸哲博士)の調査研究の一環として行われた.