著者
柴田 勝
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.178-185, 1970

マツ類における交雑育種の研究のため,クロマツ×アカマツと,クロマツ×天然アイグロマツの組合せ交配 (13×20) を行なった。その結果,交配稔性(種子生産力)に関して次のことが明らかになった。<br> (1) 母本,父本間に顕著な稔性の違いがあり,いわゆる,一般組合せ能力に差異のあることが認められた。<br> (2) 父本の稔性値と雑種性との間には高い相関が認められたので交配稔性の差異は遺伝子構成の異なる2つの組織,すなわち,胚組織と雌性配偶体組織との親和性,または交互作用によると,推定された。<br> (3) 雑種性の指数としては,解剖学上針葉における2層以上の下表皮厚膜細胞数のほうが,樹脂道指数 (R.D.I.) よりはるかに相関が高かった。<br> (4) 交雑親和性遺伝子を有すると推定された特殊個体DEN S<sub>1</sub>が, 20の父本の一つに認められた。これは解割学上アカマッと分類される個体であるが,その高い稔性から,交雑親和性遺伝子を有する"潜在的雑種アイグロマツ"と定義できると思われた。

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