- 著者
-
森田 昭
- 出版者
- 九州病害虫研究会
- 雑誌
- 九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
- 巻号頁・発行日
- vol.37, pp.63-71, 1991
ビワがんしゅ病の春芽及び各季節葉での発生消長を1970年から1989年まで調査した。春葉の発病率の高低は春芽の発病率の高低と一致した。しかし,夏葉,秋葉,春芽の発病率は前季節葉(芽)の発病率の高低とは関係がなかった。<BR>初発病日を中心とした1か月間の降水量,降雨日数の多少が各季節葉(芽)の発病率の多少に影響していた。2月の平均温度や萌芽期の寒波襲来による寒害が春芽のがんしゅ病芽枯れ病斑発現の重要なる要因である。<BR>ビワ樹体の付傷後の経過時間とがんしゅ病の発病との関係は付傷後多湿状態では8日,乾燥状態では1日で発病率が低下した。多湿状態では枝葉ともに付傷後5日から6日までは感染可能であった。<BR>付傷後5日間の降水量は発病後と密接な関係があり降水量が多いと発病度も高かった。ビワがんしゅ病菌ファージの雨水中での濃度は11月から5月までは高く,6月から10月までは低かった。<BR>がんしゅ病病斑伸展時期はナシヒメシンクイ防除園では5月から6月と9月,ナシヒメシンクイ無防除園では5月から9月までであった。<BR>がんしゅ病の病斑拡大と病斑内のナシヒメシンクイとの関係は病斑内の食入虫数が多いほど発病度が高かった。また,ナシヒメシンクイの虫体表面に病原細菌の付着が認められ,ナシヒメシンクイが病原細菌の伝搬にも関与していると思われた。<BR>以上の結果より,ビワがんしゅ病は降雨,春芽の萌芽時の寒害,秋葉展葉期の台風等の気象要因やナシヒメシンクイの食入等が重要な発病要因であると考えられた。