著者
吉武 啓 政岡 適 佐藤 信輔 中島 淳 紙谷 聡志 湯川 淳一 小島 弘昭
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.145-150, 2001-11-15 (Released:2009-05-22)
参考文献数
15
被引用文献数
1 4

福岡市能古島でヤシオオオサゾウムシの発生を確認した。調査の結果,本種は現地において数年前から継続的に発生してきたと考えられた。ヤシの幹内温度は安定していたが,常に外気温よりも高いわけではなかった。また,低温処理実験によって突発的な寒波による短期間の低温では死滅しないということが示唆されたことから,寄主であるヤシ類さえ存在すれば,本種は従来の分布域より北方まで侵入・定着できる可能性が高いと考えられた。日本国内において,本種はこれまでに年平均気温15.8℃以上の地域で発生しているので,同一の温度帯に含まれ,しかも本種にとって好適な寄主植物であるカナリーヤシが植栽されている地域へは,今後,十分に侵入可能であると推測された。
著者
福田 健
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.47-54, 2018-11-28 (Released:2019-06-01)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

The lethal effect of Decanoyloctanoylglycerol on eggs and larvae of Plutella xylostella L. was investigated. Decanoyloctanoylglycerol was found to be highly effective for population control in egg stage treatment. In a cabbage field, the mixing of Decanoyloctanoylglycerol with insecticides was suggested to increase the lethal effect. In the egg stage treatment of Saburina® containing Decanoyloctanoylglycerol: one of the products of Bacillus thuringiensis preparation, the effect was observed on the hatchling, and the mortality was 100% at 48 hours in the third instar larval stage treatment. In a cabbage field, Saburina® had a density suppressing effect compared with other BT, suggesting the possibility of it being used as one of the insecticides in the control program of P. xylostella.
著者
遠藤 信幸 弘中 満太郎
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.55-61, 2017-11-28 (Released:2019-02-13)
参考文献数
16
被引用文献数
2 2

The attractiveness of incandescent lamp (54W) and mercury lamp (100W) light sources to stink bugs (Heteroptera: Pentatomidae) was compared under field conditions. Although the degree of the attractive effect differed among stink bug species, 5.6–304.6 times as many bugs were caught in the mercury lamp trap than in the incandescent lamp trap. The total photon numbers in the spectral sensitivity region for stink bugs (250–650nm) were almost the same between the two lamps; however, the mercury lamp emitted about 16 times more photons than the incandescent lamp in the ultraviolet region (250–400nm), which is highly attractive to stink bugs. When the mercury lamp was covered with a UV-absorbing filter, which blocked about 90% of the photons in the ultraviolet region, the numbers of trapped Glaucias subpunctatus (Walker), Plautia stali Scott, and Halyomorpha halys(Stål) decreased to less than 25% of those trapped using the non-filtered mercury lamp. These results indicate that the high attractiveness of the mercury lamp to some stink bug species is partly due to strong light intensity in the ultraviolet region.
著者
森田 昭
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.25-30, 2013-11-29 (Released:2015-10-14)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

2008年~2010年に長崎県大村市の山野,並びに庭園に生えているコスギゴケ,ハイゴケ,ツルチョウチンゴケ,フデゴケ,ヒメシノブゴケ,エゾスナゴケ,ホソバオキナゴケ,コムチゴケ,ジャゴケ,および島根県出雲市の庭園に植栽してあるセイタカスギゴケの10種の蘚苔類が坪枯れ状となって褐変枯死し,その上にナタネ種子大の褐色球形菌核を認めた。それらの褐変した部分からは白絹病菌様の糸状菌が分離され,その分離菌は馬鈴薯煎汁寒天培地上での生育適温,菌叢の色や形状,主軸菌糸幅,かすがい連結の有無などに関してギンゴケから分離された白絹病菌と一致した。これら蘚苔類からの分離菌は,すべて各宿主蘚苔類に対してギンゴケ白絹病菌と同様に病原性を示し,病徴の再現を認め,再分離も可能であった。以上の結果から,坪枯れ症状を呈した10種の蘚苔類から分離された糸状菌は白絹病菌(Sclerotium rolfsii Saccardo)と同定し,各宿主蘚苔類の白絹病(Southern blight)と呼称することを提唱する。
著者
溝辺 真
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.66-71, 2010 (Released:2011-04-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

0.4mm目ネットに代わる微小害虫の侵入防止技術として,0.8mm目ネットにマシン油や展着剤を噴霧する方法を室内試験や小規模の野外試験で検討した。油脂を主成分とする気門封鎖剤やいくつかの展着剤を所定の濃度に希釈し,0.8mm目ネットに噴霧すると,タバココナジラミはネットに付着した薬液に捕捉され,ネットを通過できなかった。また,同様にマシン油の原液を0.8mm目ネットに噴霧する方法の侵入防止効果を黄色粘着板への誘殺数により検討したところ,ネットのみの平均誘殺数が98.2頭であったのに対し,マシン油を噴霧した場合の平均誘殺数は0.5頭となり,0.4mm目ネットの平均誘殺数 6.0頭と同等の侵入防止効果が認められた。マシン油の原液処理はワタアブラムシやヒラズハナアザミウマに対しても,同様の効果が認められた。さらに,マシン油の原液処理の効果持続期間について検討したところ,降雨のないガラス室内では,処理 131日後においてもタバココナジラミに対して処理直後とほとんど変わらない効果が認められた。
著者
黒瀬 大介 古屋 成人 Djeddour D. H. Evans H. C. 對馬 誠也 土屋 健一
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.31-37, 2013-11-29 (Released:2015-10-14)
参考文献数
22
被引用文献数
3 3

Fallopia japonica(Japanese knotweed, Polygonaceae), native to Japan, has been a serious invasive perennial weed in North America and large parts of Europe, especially in the UK, where there is an urgent need for a classical biological control strategy. Surveys have confirmed the presence of specialized plant pathogens in the native range of Japan. The results of the surveys showed that three fungal diseases of two rusts and a leaf-spot disease were predominantly common and widespread in the field. These rusts were identified as Puccinia polygoni-amphibii var. tovariae and Aecidium polygoni-cuspidati. Furthermore, a leaf-spot fungus morphologically identified as Mycosphaerella polygoni-cuspidati is also distributed widely in Japan. In the field, P. polygoni-amphibii var. tovariae and M. polygonicuspidati were confirmed to have severe infectivity to F. japonica. Thus, it is suggested that these two pathogens have high potential to become classical biological control agents for F. japonica.
著者
宮竹 貴久 伊良部 忠男 比嘉 良次
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.102-105, 1993-11-15 (Released:2009-05-22)
参考文献数
1

1.ウリミバエの不妊雌が野外でウリ類果実に刺し傷を生じさせるかどうかについて検討した。2.野外網室内の鉢植えに成ったウリ類果実に不妊雌を放して刺し傷を作らせ,その特徴を解析し不妊雌による刺し傷の判定基準の作成を試みたところ,不妊雌によって生じた刺し傷は5タイプに分類できた。3.不妊雌による刺し傷の特徴はウリ類の種類によって異なった。4.この判定基準をもとにウリミバエ不妊雌による栽培ウリ類の推定被害果実率を野外で求めたところ,キュウリ,ヘチマ,ニガウリのいずれにおいても被害果実率は1%以下であった。よってウリミバエ不妊雌の刺し傷によるウリ類栽培への経済的被害は極めて小さいと考えられた。
著者
森田 昭
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.89-92, 2009 (Released:2010-03-02)
参考文献数
7
被引用文献数
7 7

New blight-like symptoms in the native moss Bryum argenteum were first found on plants growing in a gutter in Omura, Nagasaki, Japan on June 24,2008. White mycelia and rapeseedsized, brown, spherical sclerotia were observed on the diseased plants. A fungus similar to Sclerotium rolfsii was isolated from the infected parts. The mean optimum temperature for mycelia growth of the isolates on potato sucrose agar medium was 25°C and that for sclerotium formation was 30°C; the mycelial tufts were white to grayish brown, with the main hyphal width ranging from 4.3 - 7.9 μm ; clamp connections were observed. These mycological characters were identical to those of S. rolfsii reported in other plants. The isolates were found to be pathogenic to B. argenteum in an artificial inoculation test, and could be re-isolated. Therefore, Koch' s postulates were satisfied. We proposed that this disease be called southern blight of B. argenteum caused by S. rolfsii.
著者
玉城 信弘 宮良 安正
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.158-162, 1982

侵入害虫であるナスノメイガの生態を明らかにするため,戸外における周年飼育,室内および恒温飼育,ほ場における発生消長の調査などを行った。<BR>本種は3月下旬から11月下旬頃にかけて7~8世代繰り返し,第7世代の一部と第8世代のすべてがナスの茎や支柱に強靱な繭を作り,その中で前蛹休眠して越冬した。2月下旬頃から蛹化が始まり,羽化成虫は,14~19日の蛹期を経て,3月上旬から4月中旬にかけて出現した。戸外における各ステージの発育日数や1世代の経過日数は,気温の影響を受けて季節的に変動した。<BR>幼虫の齢数は,飼育では4令も現われたが,一般には5齢を経過すると考えられた。<BR>産卵は,低温の日(20℃以下)を除けば,羽化翌日から始まり,1雌当り産卵数は,越冬世代と夏期の世代は少ないが,春秋期は450個内外産卵した。<BR>恒温飼育の結果からステージ別発育零点と有効積算温量の推定を行い,有効温量による戸外飼育結果との比較,さらに有効温量の野外への適用について検討した。<BR>最後に形態と習性の概要について述べた。
著者
宮坂 篤 中島 隆 丸山 篤志 脇山 恭行
出版者
The Association for Plant Protection of Kyushu
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.1-6, 2011
被引用文献数
4

水稲の高温登熟障害対策の一つとして着目されている登熟期の用水かけ流し処理が,水田圃場内の水温および株間温湿度の変化と紋枯病発病および白未熟粒発生に及ぼす影響について,3 年間の圃場試験によって検討した。イネ紋枯病自然発生圃場(10m×50m) において,登熟期に水温約21℃の地下水を常時かけ流し,水口から3m,6m,12m,24m,36m および48m 地点における上記項目を経時的に調査した。用水かけ流し処理によって,水口側から水尻側に向かって水温が上昇する温度勾配が得られた。株間の気温および相対湿度については,かけ流しの処理の効果が年次により異なり,一定の傾向は認められなかった。紋枯病発病程度および白未熟粒発生程度は,いずれも水口から3mおよび6m地点で低かった。これらのことから,登熟期の用水かけ流し処理に伴う低水温によって,紋枯病発病程度および白未熟粒発生程度が低減されることが示唆された。
著者
草野 成夫 井樋 昭宏 桑原 実
出版者
The Association for Plant Protection of Kyushu
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.25-29, 2005

温州ミカン「原口早生」の一般栽培圃場からカンキツエクソコーティスウイロイド(CEVd)による被害に類似した症状を呈した樹を多数発見し,検定植物エトログシトロンやRT-PCRによる検定を行ったところ,CEVd以外の4種類のカンキツウイロイド(CVd)を種々の組み合わせで2種類以上保毒していることが明らかとなった。カンキツ樹体の調査では,カラタチ台木部の症状が激しいほど樹冠容積や幹周の減少が顕著であった。<BR>また,CVd保毒が樹体に及ぼす影響を調査したところ,保毒ウイロイド数が多いほど台木部の病徴が激しい傾向が認められた。なお,カラタチ台木部の剥皮等の病徴発現には,ホップ矮化ウイロイド(HSVd)とCVd-IIIの複合感染による影響が大きく,これにCVd-OS,CVd-1-LSSが単独または複合感染することによって発現程度がさらに激しくなる可能性が考えられた。
著者
磯田 隆晴 山本 滋
出版者
The Association for Plant Protection of Kyushu
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.50-53, 1979

1. 川野夏橙のステムピッティング病による被害軽減のため,摘果による小玉化防止対策について検討した。その結果,軽症樹でステムピッティング発生度80程度のものでは,葉果比150で外観健全樹の葉果比100と同程度の果実肥大効果が見られた。しかし,重症樹では摘果の効果はほとんど認められなかった。<BR>2. 摘果による果実の肥大効果は,外観健全樹よりも軽症樹の方が顕著にあらわれ,葉果比と果実の横径,果実重との間に1%水準で正の相関関係が見られた。
著者
柿元 一樹 井上 栄明 伊藤 由香 田代 啓一朗 大野 和朗
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.49-56, 2015-11-28 (Released:2016-04-22)
参考文献数
33
被引用文献数
5

Effectiveness of conservation biological control against the cotton aphid Aphis gossypii Glover was evaluated in okra Abelmoschus esculentus(L.) Moench. fields at Ibusuki, Kagoshima from May to September in 2014. In a field where broad-spectrum insecticides had been applied frequently, natural enemies did not occur and A. gossypii populations increased rapidly in September. On the other hand, in a field where indigenous natural enemies were conserved and enhanced with selective insecticides and insectary plants (barley and sorghum), natural enemies such as aphid parasitoids, ladybird beetles, hoverflies, predatory gall midges, lacewings, and flower bug, occurred and cotton aphids remained at low density, indicating that conservation biological control can be effective against A. gossypii on okra.
著者
伊良部 忠男 東恩納 良徳
出版者
The Association for Plant Protection of Kyushu
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.171-174, 1983

くん蒸剤EDBのさやいんげん,きゅうり,メロン,マンゴーにおける残留と,くん蒸庫内における濃度を調査した。<BR>1.くん蒸3時間後のEDB濃度はさやいんげんで一番高く,次いで,きゅうり,マンゴー,メロンの順であった。しかし基準値以下になるのはさやいんげんが一番早く(室温で1日),きゅうり,メロン,マンゴーは,それぞれ2,2~3,4日後であった。<BR>2.EDB濃度と貯蔵温度およびくん蒸温度との間に負の相関関係があり,また,排気時間が長く,カートンの通気孔の大きいのが,濃度は低く,消失も速かった。<BR>3.煮沸(8分間)によりEDB濃度は1/4~1/5に減少した。<BR>4.くん蒸庫内のEDB濃度が,基準値以下になるにはくん蒸後7~8時間を要すると推定された。
著者
清水 信孝 浦 広幸 石井 貴明 嶽本 弘之
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.53-56, 2013-11-29 (Released:2015-10-14)
参考文献数
11

福岡県内の秋播きコムギで発芽期の出芽不良を引き起こしているシロトビムシ類に対し,農薬の2剤同時処理による防除効果を検討した。チウラム水和剤の種子塗沫とBPMC 粉剤もしくはイミダクロプリド水和剤の種子粉衣を組み合わせた2剤同時処理は,上記3剤の単用処理と比較してコムギの出芽率が高く,防除効果の向上が認められた。
著者
野中 福次 本村 知樹 田中 欽二
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.56-58, 1990-10-30 (Released:2009-05-22)
参考文献数
1
被引用文献数
9 8

Southern blight like disease on cultivated water chestnut (Trapa bispionosa Roxb.) leaves occurred in paddy fields in August in 1989 in Saga Prefecture. Corticium rolfsii Curzi, causal fungus of southern blight, was isolated from lesions of infected leaves. Isolates of C. rolfsii from water chestnut were compared with isolates from many other plants in respect to their mycelial growth and pathogenicity: No differences in the mycelial growth were found between isolates from water chestnut and that from the other plants. The optimum temperature of both isolates on potato sucrose agar was about 30°C. Isolates from water chestnut were as severely pathogenic against the leaves of water chestnut, and seedlings of soy bean and burdock as isolates from other plants by artificial inoculation. From the experimental results, it was considered that isolates from water chestnut were identical with C. rolfsii isolated from other plants.