著者
大久保 滋郎
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:00231908)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.71-85, 1981

上皮小体摘出時に形成される家ウサギ切歯象牙質縞模様石灰化像と成長速度の抑制, PTHレベルおよび血清Ca量の減少を指標として, パロチンとPTH製剤カケルビンの作用を比較検討した.<BR>1) 栄研PTH-キットがウサギ血中PTHの測定に使用できることを確かめたのち, 上皮小体摘出によって従来の報告のごとく象牙質の石灰化不全, 発育抑制とともに血清PTH, 血清Ca量の減少が起こることを知った.<BR>2) 正常ウサギにパロチン (Lot EJ25E510) を1mg/kg静注すると, 血清PTH量とCa量の減少と象牙質石灰化像の促進を生じ, 増量3mg/kgでは血清PTHレベル, Caの減少をきたすが, 象牙質石灰化像では一過性の促進後抑制像を引き起こすことを確認した.また, カケルビン100u/kg静注は, 血清PTHレベルとCa量の一過性増量と, 成長速度に多少の抑制を生じたが象牙質縞模様石灰化像には影響が少なかった.<BR>3) パロチンは少量1mg/kgで上皮小体摘出の欠損症状である象牙質縞模様石灰化不全, 血中PTHレベル, Caの減少をカケルビン100u/kg静注時よりもより強く回復させたが, 象牙質の成長速度の回復は明らかではなかった。この場合, 初めに縞模様石灰化像の回復が起こり, 次いで血清PTHレベルとカルシウム量が相関しつつ回復するようであった.増量3mg/kgでは血清PTH量やCaの減少を回復させたが, 象牙質縞模様石灰化像ではその回復作用は弱く, 一過陛の抑制像を含むことがあった.<BR>4) 以上の成績より, 上皮小体摘出の結果生ずる石灰化抑制の場におけるパロチンとPTHの石灰化促進作用は本質的には同じであり, パロチンはPTH様の作用を持つと考えられる.しかし血清Caの影響にみられるように, 詳細な点では, PTHと若干の差があると思われた.

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