著者
高橋 久仁子 宮村 小百合
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.1145-1151, 1994

学童のいる世帯の調理行動を類推するために食品の常備状況を調査した.<BR>群馬県内に居住する, 小学生を持つ世帯の調理担当者を対象に, 比較的保存性のある50食品の常備状況を質問した.<BR>有効回答票2,721部を集計した結果, 醤油, 味噌, 食塩, 米, 植物油は99%以上の世帯が常備していた.99%未満90%代の常備率は砂糖, 卵, コショウ, 酢, 海苔, 小麦粉, ジャガイモ, タマネギ, トマトケチャップ, 牛乳であり, 80%はワカメ, 片栗粉, マーガリン, カツオ節, 風味調味料, ニンジン, パン粉, 70%代にゴマがあった.60%代には固形スープの素, ネギ, うま味調味料, 天ぷら粉, 乾麺, カレールウが, 50%代にはバター, コンブ, ツナ缶, そして40%代にはショウガ, ニンニク, パン, 煮干し, 干し椎茸が並んだ.以下, チーズ, 市販麺つゆ, 素材冷凍食品 (30%代), 即席麺, 唐揚げ粉, ホットケーキミックス (20%代), 調理冷凍食品, 合わせ調味料, モチ米, チャーハンの素, 100%果汁飲料, 清涼飲料水 (10%代), そして最下位の炭酸飲料は7%であった.<BR>各種の調味・香辛料類を調理目的別に配合した調味用食品 (合わせ調味料) や用途を限定した小麦粉加工品, あるいは「~のもと」と称する, 簡便さを売り物にした食品類も高率ではないが世帯の常備品目に進出していることが確認された.<BR>洗浄, 切断, 加熱などの調理操作が必須な素材食品であるジャガイモ, タマネギ, ニンジンの常備率の高さや, 利用するには調理加工が必要な小麦粉, パン粉の常備率などから類推する現り, 学童がいる世帯において「まな板と包丁のない家庭がある」とは肯定し難い.しかし調理担当者が40歳代の家事専業多世代世帯では総じて食品の常備率が高く, 30歳代家事兼業二世代世帯では低いという結果は, 世帯のタイプにより調理行動の活発度に差があることを示唆している.<BR>回答者の負担が小さいこの方法により, 家庭の調理行動の概況を類推することは可能であると考える.

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