著者
斎藤 瑠美子 勝田 啓子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.201-206, 1989-03-05 (Released:2010-03-10)
参考文献数
9

古代乳製品である蘇は製造されてから利用されるまでの期間, 少なくとも4ヵ月は保存可能な食品でなければならない. そこで蘇の製法の再現実験を試みるとともに保存性について検討するために水分活性に焦点をあて, 再現試料の妥当性を検討し, 次のような結果を得た。水分含量の異なる濃縮牛乳の水分含量と水分活性測定により等温吸着曲線と類似の曲線を得ることができた.この結果をもとに, 最も水分の少ない濃縮率 14 % のもの (S-14), エメンタールチーズの水分に近い濃縮率 18%のもの (S-18), その中間の濃縮率 16 % (S-16) を蘇の再現試料とし, 保存中の外観変化, 水分含量および水分活性の変化をビーカーを用いて検討した結果, S-16および S-18 は調製から 10 日目にカビの発生がみられ, 水分活性は 0.90 から 0.94 であった. S-14 は1カ月後もカビの発生はみられず, 水分活性は 0.80 以下を保ち続けていた. また水分含量も約 10 % と低い値を示した.一方, 素焼きの壼による保存では4ヵ月後には水分含量は 5.6 % と調製時より下降し, 水分活性は 0.65 と単分子層域の数値を示していた.したがって, 「延喜式」などの蘇の製法にもとついて保存性を重視し, 本実験のようにホルスタイン種の牛乳を用いて蘇の製法の再現を行った場合は, 牛乳を濃縮率 14 % まで加熱濃縮したもの, すなわち S-14 が古代乳製品蘇に最も類似したものであると考えられる.
著者
岡部 和代 黒川 隆夫
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.731-738, 2003-09-15 (Released:2010-03-12)
参考文献数
11
被引用文献数
5

着心地の良いブラジャーの設計や新しい設計システムを構築するためには, 複雑に動く乳房の運動機構やブラジャー着用に伴う乳房振動特性の変化を明らかにしておくことが重要である.そこで, 本研究では半透明なブラジャーを用いて, 運動画像解析システムにより, ブラジャー着用時と非着用時の走行中と歩行中の乳房の動きを計測した.乳房の動きから体幹部の動きを分離し, 乳房独自の振動データを抽出した後, 離散フーリエ変換によって分析した.その結果, 乳房の振動は歩行周期の影響を直接に受け, 走行中が歩行中より, 垂直方向が水平方向より大きくなった.ブラジャー非着用時の垂直方向の振幅は歩行周波数で最大となり, 体幹部の運動の影響を強く受けることが分かった.非着用時の乳房振動は乳房の硬さ指標と相関が高く, 柔らかい乳房が硬い乳房より振幅が大となった.ブラジャーの着用によって, 乳房の振幅スペクトルに高い周波数成分が生じるようになり, 測定点間の相関も低くなった.またブラジャー着用時の乳房が硬い乳房に近くなり, 両者の特性が似たものとして表れた.以上のように乳房振動を分析し, その特性をとらえることができた.乳房の振動特性は, ブラジャーの着くずれや着心地に関係する問題を含み, 設計に欠かすことのできない要因である.ブラジャーの設計支援システムの中で, 乳房の振動特性をどのように制御するかが重要な課題である.今後は胸部の3次元形状データのモデルを利用して, 運動機能性のよいブラジャー設計の技術開発につなげたいと考えている.
著者
平野 美那世
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.398-402, 1977-09-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
9

使いこんだフライパンは油なじみがよく焦げつきにくいが, この現象を摩擦係数との関連性において検討した結果, 1) 鉄試験片の未処理材A, 空焼き材B, 油塗布加熱材C, 空焼き後油塗布加熱材Dの摩擦係数を測定したが, C, Dは小さく, 特にDは最小であった.2) 油を薄く塗布して測定した場合, 初動摩擦係数はどの試験片も0.2程度で油潤滑効果が認められたが, 摩擦時間に伴う摩擦係数はDが最小であり, したがって油切れは生じにくいことがわかった.3) ブラッシュ洗浄をした場合でも, 油塗布加熱処理をすると吸着皮膜が再生するためか摩擦係数が小さくなった.4) D試験片の表面層を赤外線分析した結果, 特にカルボン酸鉄塩が認められたことから, 油中の脂肪酸と金属とが表面の酸化物と水の介在によって金属石ケンを作り, これが化学吸着膜となって潤滑効果をもたらすため油なじみをよくすると考えられる.5) ホットケーキを焼いて実用実験を行った結果摩擦係数と焦げつき性とは相関関係があることが認められた.
著者
立屋敷 かおる 大亦 みち子 寺元 芳子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.359-362, 1983-06-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
2

1) 煮切り等の加熱操作により, 酒のアルコール度は減少した.アルコール度の高い酒ほど減少率は大きく, 残存量は少なかった.2) 2倍に希釈した酒を加熱した結果, いずれの酒も加熱時間に伴ってアルコール度が減少し, 加熱2分で元の約112に減り, 10分で1度以下となった.この経時変化に, 加熱時の蓋の有無と酒の濃度は影響しなかった.3) 清酒の燗は, 燗の程度によりアルコール度の変化に差があった.ぬる燗 (45℃) ではアルコール度に変化がなく, あつ燗 (60℃) で0.6%, 過度の燗 (70℃) で1.2%減少した.4) 酒を使用する料理10種の結果では, 多くのものが加熱によりアルコール含量の約90%が減少した.加熱後の料理のアルコール含有率は, ほとんどが1%以下だった.
著者
岡崎 貴世
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.80, 2014 (Released:2014-07-10)

目的 マスクには感染症対策、アレルギー対策、ホコリや粉塵などから喉や気管支を保護する効果がある。また、給食施設においては調理従事者の衛生管理対策として使用される。しかし長時間の着用によって内部が蒸れてきて不快感を生じたり臭いを発してくることもある。さらにマスクが微生物の汚染源となり、マスクを介して細菌が食品に伝播されることも考えられる。そこで、マスクの使用状況の調査と使用済みマスクの微生物汚染度を測定した。方法 大学生148人を対象にマスクの使用状況に関するアンケートを実施した。マスクの汚染状況は微生物検査とATP検査で評価した。微生物検査は、生理食塩水中で使用済みマスクを一定時間揉み洗いして検査液を調製し、一般細菌(標準寒天培地)、ブドウ球菌(卵黄加マンニット食塩培地)、真菌(PDA培地)の測定を行なった。また検査液のATP検査を行なった。結果 学生のマスクの使用頻度は高く、中には一度使用したマスクを翌日に再使用する人がいた。また着用時にマスクを手で触れる人が多いことがわかった。使用済みマスクの細菌汚染状況には個人差があり、汚染度の高いマスクで105cfuを超える一般細菌が検出された。またその大部分はブドウ球菌だった。マスクの一般細菌数とATP発光量に関連は認められず、マスクには今回の測定で検出されない口腔細菌等が多数付着しているため、ATP発光量に影響したと考えられた。
著者
小俣 謙二
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.77-87, 1998-01-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
44

The aim of this study is to clarify residential and psychological factors related to the Japanese students who tend to confine themselves in their own rooms. The questionnaire was answered by 268 students, 134 males and 134 females. The findings are as follows. Their tendency to withdraw to their rooms was not particularly strong, but some residential and psychological factors were ascertained to explain their withdrawal tendency. Two residential factors (density, number of equipment in a room) and two psychological ones (degree of self-identity, exclusive attitude) were identified to be related to the withdrawal by both sexes. Some differences, however, were found between male and female students. Furthermore, the female seemed more sensitive to the factors studied here. The mechanism of withdrawal must be further studied, but, in the meantime, the findings strongly suggest the necessity of empirical study on what their rooms mean to adolescents.
著者
渡部 由美 垣本 充
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.346-350, 1982-06-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
12

小学校5, 6年生の女子児童を対象に, Y-G性格検査によって分類された5群の性格特性について, 甘味, 酸味, 塩味, 苦味の味覚識別検査を試験紙法を用いて行った.その結果, 情緒不安定群に, 酸味, 苦味の正解率が低い傾向にあった.また, 積極安定群は苦味の識別が消極不安定群に比べて5%の危険率で有意にすぐれていた.味覚識別検査の正解者と誤答者の間で有意差のあった性格特性因子は, 苦味において, 劣等感, 社会的外向, 一般的活動性, 支配性の4因子であった.嗜好意欲尺度を用いた食品嗜好調査の結果より, 酸味正解者は酸味誤答者より果物, 甘いものを好み, 苦味正解者は苦味誤答者より肉類, 野菜類, 塩からいもの, すっぱいものを好む傾向があった.
著者
桐渕 壽子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.401-406, 1990-05-05 (Released:2010-03-10)
参考文献数
8

人工的に完全室内栽培で生産されているヒラタケやエノキタケに含まれているエルゴステロールおよびビタミンD2の量, また紫外線照射によるビタミンD2の生成量などを干しシイタケや生シイタケと比較検討した.(1) ヒラタケとエノキタケにはシイタケと同様にエルゴステロールが含まれており, 前者での含有率は生シイタケとほぼ同程度であり, 干しシイタケよりむしろ多いが, 後者ではヒラタケの約1/2量であった.(2) ヒラタケやエノキタケにはビタミンD2がほとんど認められなかった.(3) 干しシイタケ, 生シイタケ, ヒラタケ, エノキタケに日光や紫外線を照射すると, ビタミンD2が生成されるが, 日光に曝すよりは紫外線照射のほうが生成効率がよい.(4) 紫外線3時間の照射によるビタミンD2の生成量はエノキタケが最も多く, ついでヒラタケ, 生シイタケ, 干しシイタケの順となり, それぞれ19あたり, 1,993,897,473,453IUであった.(5) これらのキノコは食べる前に日光に曝すことで, ビタミンD2を増加させることができ, 1日のビタミンDの所要量を容易に満たすことができると思われる.
著者
岡部 和代 黒川 隆夫
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.379-388, 2005-06-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
12
被引用文献数
3

ブラジャーカップを分離してその機能を逸らさず乳房の動きを視覚化する方法で, 走行中のブラジャー内の乳房の動き, ブラジャーカップ上の動き, 衣服圧, 下肢の動きを同期させて測定した.ブラジャーカップ内で生じる乳房振動とずれの特性を明らかにし, 以下の知見を得た.(1) スポブラ, フルカップともに乳房振動が走行周期に同期しておきた.しかし, スポブラの最大の振幅は垂直方向の左足の周期(2.73Hz)に表れ, フルカップの最大の振幅は水平方向の走行の周期(1.34Hz)に表れて, ブラジャーによって振動特性が異なった.(2) 衣服圧の変動はスポブラ, フルカップ共に1.34Hzの走行周期, 2.73Hzの左足の周期でみられた.特に, 左足の周期(2.73Hz)で下カップ部の測定点が大きく変動した.これは, ブラジャーカップ内の乳房振動の影響と考えられた.(3) 乳房とブラジャーは走行中にずれ, ある一定の範囲を旋回したが, ずれの周期を見出すことはできなかった.水平方向に振動の振幅が大きいフルカップはスポブラよりずれ量が多くなった.また, ずれやすい部位は下カップ部の正中側であった.以上のように, 乳房が走行中は振動しながらカップ内でずれをおこしていることが判明した.運動適合性を考える上で乳房振動とブラジャーのずれの特性は重要な設計要因と考えられる.スポブラの運動適合性を図るために, 運動の強さに応じた振動とずれを計算する必要があると考えられ今後の課題となった.
著者
河村 フジ子 猪俣 美知子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.31, no.10, pp.716-720, 1980-12-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
2

卵白によるスープの清澄効果について検討した結果を要約すると次のようになる。1) 野菜添加原液に卵白を加えると, 卵白量の増加に伴い, 透明度は低下する.2) 食酢0.3%を加えた野菜添加原液に, 3%の卵白を加えると高い透明度のスープが得られる.3) 8mg%のCaを加えてpHを5.5~6.0に調整した原液は, 卵白による清澄効果が顕著である.4) 原液に, 食酢と卵殻を添加したとき, 卵白による清澄効果が増進するのは, pH調整作用とCa塩添加との複合効果であろうと推定される.本研究は, 昭和53年度文部省科学研究費補助金によって行ったものである.
著者
片平 理子 別府 道子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.371-375, 1991-04-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1

トイレに関する意識調査を行った後, 公共トイレの洋式便座の一般生菌数を測定し, 分離菌を同定した.また, 市販便座クリーナー, カバーの効果を調べたところ, 以下の結果を得た.(1) 公共トイレの洋式便座には多くの人が「汚い, 不衛生」というイメージを抱いており, とくに何もせずに直接腰掛けて使用する人は10%弱であった.(2) 便座50cm2あたりの一般生菌数は4~1,400で, 場所によりばらつきがあったが, 夏期は冬期に比べ多い傾向を示した.(3) 大腸菌群が検出された頻度は検査した便座の10~60%で, 夏期のほうが高かったが, 検出された菌数は, 一般生菌数に比べると著しく少なかった.(4) 便座から分離された菌は, Aerecoccus, Microceccess, Staphylocoms, Bacillusが多く, 皮膚由来ではないかと推測された.以上 (2) ~ (4) の結果より, 便座からの感染の危険性は低いと予想された.(5) 市販便座クリーナー, カバーの使用による皮膚接触面の細菌汚染防止効果が認められた.
著者
西村 綏子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.432-438, 1980-07-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
11

The restrictions of clothing studied in the Bakufu laws and in Kanazawa-Han's, Kumamoto-Han's, Tottori-Han's, Okayama-Han's, Tokushima-Han's and Morioka-Han's had been promulgated for two and a half centuries from 1615 to 1866. The substance of these laws were employed to maintain the class hierarchy, what is called “Shi-No-Ko-Sho” in the Edo period and also utilized as the emblem for its establishment.In the early Edo period, the restrictions of clothing aimed to clarify the class distinction by the material of his clothing such as silk, pongee, cotton and linen. Then the restrictions were gradually extended even to the manner of weaving, dyed designs, hair-ornaments and footwear.In the meantime, restrictive laws of clothing which had characteristics of strennous retrenchment policy and frugalty one were proclaimed but they turned out to be fruitless and eventually abolished as Baku-Han system collapsed.
著者
Toshiko KIRIBUCHI Kikue KUBOTA
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
Journal of Home Economics of Japan (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.418-422, 1976-09-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
10
被引用文献数
2

1) 甘藷の加熱調理 (焙焼, 電子レンジ) の際の糊化度, β-アミラーゼ活性および生成糖量の関係をしらべた.2) 焼きいもの場合, 電子レンジ加熱に比べ糖は約 2倍生成された.3) 加熱によりβ-アミラーゼは時間とともに失活していくが, 焙焼の場合徐々に失活し90分で数%の活性が残っていた. 電子レンジ加熱の場合は急速に失活し90秒では完全に失活した.4) 焙焼の場合60分 (いも中心部の温度78℃) でほとんど完全に糊化していてこの時糖の生成量は著しく増加した.5) 電子レンジの場合調理時間が非常に短いため糊化が十分に行われたころにはβ-アミラーゼがほとんど失活してしまっていて糖の生成量は少なかった.6) 加熱により糊化されたデンプンにβ-アミラーゼが作用してマルトースが生成された.
著者
大塚 斌 菊田 文夫 近藤 四郎 高橋 周一
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.311-318, 1992-04-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
19

(1) 足の形状とその革靴のサイズとの関連を検討するために, 日本人成人の男性149名, 女性178名の左右両足について, 足長および足囲ボールを計測した.この計測値をもとに, 靴の適正サイズをJIS規格によって判定した.同時に足の靴に対する「適合感」の好みを, 「ぴったり」・「ふつう」・「ゆるめ」の三つに分類して, その分類ごとに靴の適正サイズと自称サイズの一致度を検討した.(2) 革靴の自称サイズのうち最も多いのは, 足長サイズでは男性が25.0 (cm), 女性が23.0 (cm) であって, 足囲ボール表示サイズをあわせてみた場合には, 男性では25EEE (ボール部周径が255mm), 女性では23EE (ボール部周径が234mm) であった.(3) 足長の適正サイズと自称サイズの一致度は, 男性では約41%, 女性では約32%であった.被験者のうち, 男性は38%の者が, 女性は59%の者が自分の足長サイズは知っているが, 足囲ボール表示サイズについては知らなかった.この結果は, とくに市場に多く出回っている婦人靴に, 足囲ボールサイズの表示がない場合が多いが, DやEに相当するものが多いという事情によるものと考えられた.(4) 足長の自称サイズと適正サイズとの差異をみると, 「ぴったり」, 「ふつう」, 「ゆるめ」と移るにつれて, 男性では自称サイズが適正サイズよりも大きい者の割合が増加するが, 女性ではこの傾向は認められなかった. (5) 足の靴に対する「適合感」の好みを, 「ぴったり」・「ふつう」・「ゆるめ」の三段階に分けてみると, 男女ともに「ぴったり」・「ふつう」・「ゆるめ」と移るにつれて, 自称の足囲ボール表示サイズはしだいに大きくなる傾向がみられた.(6) 女性の自称サイズは, 足長・足囲ボールの計測値から判定される適正サイズよりも大きい傾向が認められた.
著者
貝田 さおり 玉川 雅章 渋川 祥子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.147-154, 1999-02-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
5
被引用文献数
2

牛肉の最適加熱時間を決定するために, 厚さ 20 mmの牛肉を 120~220℃ の範囲で熱板焼きする場合の熱板温度の違いによる影響を, 肉の中心温度を 55, 70, 85℃ の 3 段階に変えて検討するとともに, 各加熱温度における時間の算出方法について検討した.その結果は次のようにまとめられる.(1) 熱板温度の違いが影響するのは表面の焼き色であり, 硬さや厚さは肉の中心部を何度まで加熱するかによって決まることが明らかになった.(2) 生の肉の熱物性値から, 非定常の熱伝導の解だけを利用する方法で加熱時間の推定を行うことができた.(3) 厚さ 20mm の牛肉を熱板で焼く際の最適な加熱条件として, 程よく焼き色がつく熱板温度と加熱時間を提示することができた.
著者
大井 裕子 鶴淵 和子 小林 トミ 穂坂 直弘 寺元 芳子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.81-86, 1985-02-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
5

砂糖液の加熱時における火力と最終温度がカラメルソースの色や味とどのような関係にあるかを明らかにするため実験を行い, 次のような知見を得た.1) カラメルソースの濃度は, その仕上がり重量がもとの砂糖重量の1.10~1.15倍がよい.2) 官能検査の結果, 強火では 210~230℃ 加熱のものが色・味ともに評価が高かった.これに該当するのは, 中火では220℃, 弱火では210℃加熱のものであった.3) カラメルの色は弱火で210℃, 中火で220℃, 強火で230℃になると急変しやすく, ばらつきが大きくて再現性に欠ける.4) カラメルソースの色価は 600 前後が適当である.5) カラメルソースの pH は, 加熱温度の上昇とともに低下する.6) 火力は強火よりも弱火のほうが温度が緩慢に上昇し, 低温で着色する.7) カラメルの調製法としては160℃まで強火にし, その後弱火で加熱するのが, 所要時間や調理操作上よいと考えられる.
著者
芥田 暁栄 伊福 靖
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.243-246, 1963-08-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
12

1. 各種の強化味噌汁をつくり、調理中の島およびB2の変化と、玉葱としじみを具に使用して、これらのビタミンの損失におよぼす影響を研究した。2. 味噌汁をつくるとき、遊離のB1およびB2を強化すると、他の強化味噌の場合に比して、煮返しによる損失が大きく、具を使用しない場合もそれぞれ20%、15%の減少率を示した。3. 前項の強化味噌汁の場合、玉葱を具に使うと、B2には特別の作用を示さなかったが、B1の煮返しによる損失を防ぎ、しじみを使用すると、アノイリナーゼの存在するため、煮沸中にB1の減少が大であった上、煮返しによる減少率も他区に比し大きかった。4. B2に対しては、しじみは意外にも煮沸までの損失も大きく、煮返しまでの損失も最大であって普通強化味噌の場合でも、その傾向が認められた。5. 仕込時強化された味噌中のビタミンは温湯中で短時間攪拌しただけでは充分水に溶出されず、煮沸によってよく溶解するに至る。仕込時に強化剤を添加した普通強化味噌は、麹菌のフラビン生産力を利用した兵庫農試式強化味噌に比し、煮返しによるB2の損失が大きいが、一般に両者とも味噌汁調理時に強化した方法に比し安定度高く、煮返しによる損失は具を使用しない場合B1では2%に達せず、B2については前者は15%、後者は5%程度であった。6. 玉葱を具に使用すると、前項の両強化味噌汁の場合とも、具を使用しない時と同じくB1の損失は少いが、しじみを使用した場合は、煮沸後は玉葱区に比し約20%対照区より10%少くなり、煮返し後の含量も他区と平行して減少した。7. B2については、しじみを使用した場合、両味噌汁とも煮沸後他区より15~20%減少して最少となり、兵庫農試式強化味噌汁では対照区と平行して煮返し後の減少は少なかったが、普通強化味噌を用いた味噌汁は調製時強化した味噌汁と同じ傾向で急減した。故にしじみは遊離B2を減少する要素を含むものと考えられ、兵庫農試式強化味噌の場合は麹菌の生産したB2が結合型であるため対照区、しじみ区とも減少が少ないものと考えられる。