著者
佐藤 成基
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.37-53, 2000-06-30
被引用文献数
1

この論文はナショナリズムに関する一つの理論枠組を提案し, それを用いてドイツと日本の「ネーション」概念の形成と変容の過程を比較分析しようというものである.ここではナショナリズムを, 国民国家, エスニック・マイノリティ, エスニック・マジョリティ, 「在外同胞」 (国外マイノリティ) がそれぞれ自身の「ネーション」概念を掲げ, 要求しながら提携・対立し合うダイナミックな場として, 「ネーション」はこのような過程を経て形成され, 強化され, 変容をうけるものと考える.比較の対象となる時期は主として1871年の独日双方における統一国家形成から1945年の第二次大戦終結までであり, (1) 第二帝政と明治国家によって形成された「国家ネーション」とマイノリティの同化, (2) 同化に対抗するエスニック・ナショナリズムが独日のネーション概念に与えた影響の差異, そして (3) 国家の外にいる「在外同胞」問題と国家およびネーション概念との関係の差異, の3点に焦点を当てて考察する.そして最後に, ドイツではエスニックなネーション概念が国家や国民国家から区別され, 「民族」それ自体が利益や権利主張の主体として理解される傾向があるのに対し, 日本ではネーションの概念が国家に従属し, 国家と「ネーション」との区別が明確にされないという傾向が見られる, という点を指摘する.

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