著者
村瀬 英彰
出版者
JAPAN PUBLIC CHOICE SOCIETY
雑誌
公共選択の研究 (ISSN:02869624)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.40, pp.26-34, 2003

本稿では, 民主主義制度が社会的見て非効率な政策選択をもたらすいわゆる「民主主義の失敗」が生じる新たなメカニズムを提示する.メカニズムの背景にある基本仮定は, 投票者は政策がもたらす経済的利得に最も関心があるという意味において殆ど合理的であるが, ごくわずかに政策それ自体, いいかえればイデオロギーにも選好を有し自らが選好しない政策を支持することにコストを感じるというものである.このとき, 個々の投票者のイデオロギー選好が殆どないに等しい無視しうるものであっても, それが選挙という集計装置を通じると社会全体としての政治的選択に大きな影響を与え, 投票者の政策選択を投票者の効用を大きく下げるという意味で完全に非合理なものとする可能性があることを示す.また, 各投票者の行動が他の投票者の行動に対する予想によって左右されるという投票行動の相互依存関係が生じ, 選挙結果に予見不可能性が持ち込まれることも示す.

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