著者
村瀬 英彰
出版者
JAPAN PUBLIC CHOICE SOCIETY
雑誌
公共選択の研究 (ISSN:02869624)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.40, pp.26-34, 2003

本稿では, 民主主義制度が社会的見て非効率な政策選択をもたらすいわゆる「民主主義の失敗」が生じる新たなメカニズムを提示する.メカニズムの背景にある基本仮定は, 投票者は政策がもたらす経済的利得に最も関心があるという意味において殆ど合理的であるが, ごくわずかに政策それ自体, いいかえればイデオロギーにも選好を有し自らが選好しない政策を支持することにコストを感じるというものである.このとき, 個々の投票者のイデオロギー選好が殆どないに等しい無視しうるものであっても, それが選挙という集計装置を通じると社会全体としての政治的選択に大きな影響を与え, 投票者の政策選択を投票者の効用を大きく下げるという意味で完全に非合理なものとする可能性があることを示す.また, 各投票者の行動が他の投票者の行動に対する予想によって左右されるという投票行動の相互依存関係が生じ, 選挙結果に予見不可能性が持ち込まれることも示す.
著者
村瀬 英彰
雑誌
オイコノミカ (ISSN:03891364)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.23-29, 2002-11-30 (Released:2013-08-26)

本論文は、なぜ社会的観点から見て起業が過少になるかという問題について新たな説明を与える。金融市場の不完全性をその重要な原因とする伝統的な議論に対して、本論文は、既存産業と新規起業では労働者が直面する不確実性が異なるという労働市場の性質の差異に着目した議論を展開する。既存産業では、職から得られる収益については過去の経験から比較的明確であるが、既存の雇用機会の数に制約があり、自らがその機会をうまく探索できるかという職と労働者のミスマッチの不確実性が存在する。一方、新規起業の場合は、自らが職を創出するというその本来の性質から雇用機会の数に制約があるわけではなく定義によってミスマッチは存在しないが、個々の職がいかなる収益性をもたらすかについてはあらかじめ明確でないという不確実性が存在する。こうした差異がある場合、労働者には既存産業での求職に固執する傾向が生まれ、それが結果として、新規起業を社会的に見て過少にすることが示される。また、この結果は、労働者のリスク態度に起因する危険回避行動とは独立に得られるものである。