著者
大久保 隆
出版者
日本海洋学会
雑誌
日本海洋学会誌 (ISSN:00298131)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.279-286, 1981
被引用文献数
3

瀬戸内海の表面水中の<SUP>228</SUP>Raの濃度を測定した. 瀬戸内海中央部の燧灘や備後灘で採水した表面海水は655-811 dpm/1000 lの<SUP>228</SUP>Raを含んでおり, 太平洋の表面水と比べて100倍も高濃度であった. この高い<SUP>228</SUP>Ra濃度は, 0.16dpmcm<SUP>-2</SUP>y<SUP>-1</SUP>以上と見積もられる堆積物からの<SUP>228</SUP>Raフラックスに支えられているものと考えられる. 海水中の<SUP>228</SUP>Ra濃度は, 塩分の増加及び瀬戸内海中央部からの距離の増加と共に著しく減少していた. 紀伊水道や豊後水道では, <SUP>228</SUP>Ra濃度は約18dpm/1000であった. <SUP>228</SUP>Raを使って瀬戸内海に単純な箱モデルを適用した結果, 瀬戸内海の海水の平均滞留時間は少くとも10年以下, おそらく数年程度と推定された.

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