著者
川辺 正樹
出版者
日本海洋学会
雑誌
日本海洋学会誌 (ISSN:00298131)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.95-107, 1982
被引用文献数
100

対馬海流は日本海中央部において複雑な蛇行路をとるのに対し, 対馬海峡付近では比較的整然とした流路をとり, しばしば3本の分枝流が見出されてきた. しかし, その構造や変動についてはほとんどわかっていない. そこで, 水温・塩分・潮位データを使って, おもに対馬海峡付近での対馬海流の性質を調べ, 次のような結果を得た.<BR>第1分枝 (日本沿岸分枝) の存在は, 塩分分布によって少なくとも3月から8月に認められる. 第3分枝 (東鮮暖流) は常に存在している. 一方, 第2分枝 (沖合分枝) は6月から8月にかけての夏季のみ存在する.<BR>主密度躍層は, 深さ150mから200mで日本側の陸棚上のゆるやかな海底斜面に交叉している. 第1分枝は, おおよそこの交叉位置より岸側を占めており, 第2分枝は交叉位置付近から沖側に位置している.<BR>釜山・厳原間, 厳原・博多間の潮位差によると, 表面流速・流量の季節変化は, 対馬海峡東水道では非常に小さく, 西水道では大きい. しかも, 西水道で表面流速・流量の増大する期間は, 第2分枝の存在する期間とよく一致している.<BR>以上の結果は, 海底地形や密度成層, および対馬海峡西水道での流入流速・流量の季節変化が, 第2分枝の形成に重要な役割を果たしていることを示唆している.

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