- 著者
-
中野 浩
- 出版者
- Brewing Society of Japan
- 雑誌
- 日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
- 巻号頁・発行日
- vol.48, no.10, pp.390-389, 1953
従来酒類の矯正方法中脱酸にはNaOH, CaCO<SUB>3</SUB>, K<SUB>2</SUB>CO<SUB>8</SUB>等の中和剤による方法がとられて来たが, 最近イオン交換性合成樹脂による酒質の矯正 (脱酸, 脱塩) が試みられ, 可成の成績を修めている様である。即ち本邦においては麻生氏等 (1) がイオン交換樹脂を用いてリンゴ酒の品質向上を図り, 最近では伊藤氏等 (2)(3) がアルコール及び不良清酒, 酸敗清酒をイオン交換樹脂にて処理する事により矯正出来ると報じている。又津田恭介氏 (4) はイオン交換樹脂を用いて酒類の脱酸及び, 防腐剤として用いた牛乳中のサリチル酸の除去を試みており, Buck, Mottern氏等 (5) はResinous Products & Chemical Co. で製造されたイオン交換樹脂を用いて, 林檎汁を試料にアニオン交換法, カチオンーアニオン交換法, アニオンーカチオンアニオン交換法の三つの方法について研究を行つている。<BR>本試験は防腐剤として用いたサリチル酸が粗悪製品であつた為, 清酒にフエノール様の臭気及び強烈なる収斂味を帯び飲用に供し得なくなつたものについて脱サリチル酸を目的として行つたものである。(尚供試試料は酒造場においてサリチル酸投入直後, 早期発見により攪拌前に上下層を分離したものの下層部分で, そのサリチル酸含有量は石当り25匁である。)<BR>即ち試料を突間速度*15~20で膨潤イオン交換樹脂層を通過せしめ, 流出液に活性炭素を投入し5時間後に濾過精製した。その結果酒質はボケて押味も不足となつたが, サリチル酸含有量は規格以下になりフエノール様の臭気及び収斂味も感じられなくなつた。