著者
岩田 博 磯谷 敦子 宇都宮 仁 西尾 尚道
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.99, no.7, pp.534-538, 2004-07-15
参考文献数
8
被引用文献数
3

口噛み酒製造工程への米α-グルコシダーゼの働きを検討するため, 生米と炊飯米で口噛み試験を行い, 糖組成, α-グルコシダーゼ活性, pH及び有機酸組成の各変化を調べた。<BR>糖組成について, 24時間後で, 生米はグルコースが5%, マルトースが0%であったのに対し, 炊飯米ではマルトースが5%, グルコースが0.8%で両者は全く異なっていた。この理由は, 糖組成とα-グルコシダーゼ活性の測定結果から, 唾液アミラーゼにより生成されたマルトースが, 生米のα-グルコシダーゼによりグルコースに分解されたためと推定された。また, 有機酸組成の検討から, 微生物が生成した乳酸などによるpH低下と酵素抽出促進効果がおこり, α-グルコシダーゼが有効に機能する環境条件下で口噛み試験の反応が起こっていることが分かった。<BR>以上から, 口噛み酒は生米のα-グルコシダーゼを巧みに利用した酒造りであると推定された。
著者
Tatsuya MORIYAMA
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
JOURNAL OF THE BREWING SOCIETY OF JAPAN (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.10, pp.645-655, 2011 (Released:2017-03-13)
参考文献数
21

近年,花粉症,アトピー性皮膚炎等のアレルギー症や食物アレルギーが増加し,その治療法のために原因究明の研究が精力的に行われている。中でも大豆アレルギー等の食物アレルギーについて抗原蛋白質が同定されるなど研究が進んでいる。近年の研究によってアレルギー発症機構からクラス1,クラス2の食物アレルギーが存在することがわかってきた。味噌,醤油,納豆等のわが国の伝統発酵食品と大豆アレルギーとの関連性が注目されているが,アレルゲン蛋白質の消長に関する研究が進んでいる。本解説では,食物アレルギー研究をご専門とする著者に,最新の研究成果の一端を紹介していただくとともに食物アレルギーの多様性と味噌のアレルゲン蛋白質の低減化について分かり易く解説していただいた。
著者
田村 隆幸
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.3, pp.139-147, 2010 (Released:2012-02-17)
参考文献数
28

酒と料理との関係は,お互いに引き立て合うことが肝要だが,ワインによっては魚介類の生臭味を強調させてしまうことがある。著者らの研究によって,その一因がワインの鉄含量によることが確かめられた。本記事をワインと魚介料理を楽しむための参考にしていただければ幸いである。一読をお薦めしたい。
著者
島津 善美 藤原 正雄 渡辺 正澄 太田 雄一郎
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.11, pp.747-755, 2011 (Released:2017-03-21)
参考文献数
43

味と温度の関連性については必ずしも一致した結論が得られてないのが現状であるが,近年,清酒の特性を生かした飲み方の提案として,温めて飲む燗酒及び酒質と様々な食材・料理との相性を求めるような研究も多く見られるようになった。そこで,ワインの有機酸の研究を長年に亘って研究を重ねてこられた筆者らに,清酒の味を左右する二つの成分,有機酸及びアミノ酸と飲用温度の関係について,官能評価の結果に基づいて,詳しく解説して頂いた。日常の料理メニューで最も普及している21品目について,清酒と料理の相性基本表など新しい知見も提示されている。得られた知見が清酒の需要拡大につながるものと期待し,清酒業界の方々にも是非参考にしていただきたい。
著者
木村 啓太郎 久保 雄司
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.11, pp.756-762, 2011 (Released:2017-03-21)
参考文献数
25

我が国の大豆発酵食品の中で,納豆は味噌,醤油と並んで広く愛され,食されている食品である。本解説では,納豆菌と枯草菌の由来,納豆種菌の由来と製造の現状について歴史的変遷を含めて解説していただいた。また,著者らが研究されてきた納豆菌と枯草菌の系統解析や最近の納豆菌ゲノム解析の完了にともなって得られた研究成果から,納豆菌と枯草菌の相違点について,ゲノム上の一塩基多型とクウォーラムセンシング遺伝子の多様性等,明らかになってきたことや今後の納豆,納豆菌研究の注目点と展望について解説いただいた。
著者
田中 利雄
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.9, pp.629-630, 1984

日本酒のオンザロックがかなり普及してきた。果して, このオンザロックが, 一体, いつ頃から行われたのであろうか。左党ならずとも興味あるところである。
著者
神保 五彌
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.76-80, 1973

江戸時代後期の庶民の生活のなかにとけこんだ酒の姿を, 早稲田大学の神保先生の流麗な筆をおかりしておとどけする。上酒1升が夜鷹蕎麦20杯分, 下酒1升が同じく5杯分とあるから2,000円から500円位にあたるだろうか, 今にくらべて酒の値段はそれほどかわらない時代の話である。
著者
前橋 健二
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.12, pp.818-825, 2011 (Released:2017-03-28)
参考文献数
26

味覚として,最も重要な位置にある甘味について,甘味を発する物質として糖やアミノ酸の天然甘味物質から人工合成甘味料・甘味タンパク質・甘味阻害物質までを概観していただくとともに甘味を感知する仕組みを細胞レベルから受容タンパク質まで最近の知見を幅広く網羅し,平易に解説していただいた。
著者
中野 浩
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.390-389, 1953

従来酒類の矯正方法中脱酸にはNaOH, CaCO<SUB>3</SUB>, K<SUB>2</SUB>CO<SUB>8</SUB>等の中和剤による方法がとられて来たが, 最近イオン交換性合成樹脂による酒質の矯正 (脱酸, 脱塩) が試みられ, 可成の成績を修めている様である。即ち本邦においては麻生氏等 (1) がイオン交換樹脂を用いてリンゴ酒の品質向上を図り, 最近では伊藤氏等 (2)(3) がアルコール及び不良清酒, 酸敗清酒をイオン交換樹脂にて処理する事により矯正出来ると報じている。又津田恭介氏 (4) はイオン交換樹脂を用いて酒類の脱酸及び, 防腐剤として用いた牛乳中のサリチル酸の除去を試みており, Buck, Mottern氏等 (5) はResinous Products & Chemical Co. で製造されたイオン交換樹脂を用いて, 林檎汁を試料にアニオン交換法, カチオンーアニオン交換法, アニオンーカチオンアニオン交換法の三つの方法について研究を行つている。<BR>本試験は防腐剤として用いたサリチル酸が粗悪製品であつた為, 清酒にフエノール様の臭気及び強烈なる収斂味を帯び飲用に供し得なくなつたものについて脱サリチル酸を目的として行つたものである。(尚供試試料は酒造場においてサリチル酸投入直後, 早期発見により攪拌前に上下層を分離したものの下層部分で, そのサリチル酸含有量は石当り25匁である。)<BR>即ち試料を突間速度*15~20で膨潤イオン交換樹脂層を通過せしめ, 流出液に活性炭素を投入し5時間後に濾過精製した。その結果酒質はボケて押味も不足となつたが, サリチル酸含有量は規格以下になりフエノール様の臭気及び収斂味も感じられなくなつた。
著者
小泉 武夫 忍田 憲一 石橋 信治 鈴木 雄三 鈴木 明治
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.192-196, 1975

1.飲酒に供した酒類により, 尿の臭いが特徴づけられることはしばしぽ飲酒者の体験により知られるところである。本報告では熟し香構成成分解明の手掛かりを得ようと, 清酒とそれ以外の酒類 (ぶどう酒, ピール, ウイスキー, 甲類焼ちゅう) を飲酒した場合の尿中揮発成分について比較した。<BR>2.飲酒することにより排尿中の成分は, 飲酒前に比べて複雑に増加することを知った。<BR>3.ガスクロマトグラフィー分析で, 清酒飲酒後の尿中に14成分の存在を推定したが, 他の酒類の場合でもほぼこれに近い尿成分であった。<BR>4.薄層クロマトグラフィー分析により塩基性区分を検討したところ, 飲酒に供した酒類の別により検出成分に差がみられた。特に清酒飲酒の場合特異的であり, これら尿中塩基化合物は, 清酒飲酒の際の尿の不快臭に重要な要因となっているものと推察した。
著者
佐藤 信 大場 俊輝 高橋 康次郎 国分 伸二 小林 幹男 小林 宏治
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.11, pp.801-805, 1977
被引用文献数
6 12

国税局鑑定官室, 県工業試験所などの調査書・報告・成績書から得た昭和50年の市販清酒の一般分析値を解析して, 生産地による清酒の差別化の現状を考察した。<BR>また, ワイン, ポートワイン, シェリー, ベルモット, リキュール, 甘酒, ジュースなど多数の飲料の酸度・アミノ酸度・糖量を分析するとともに, 酸度と糖量を広い範囲にわたって変化させた清酒をつくり, 清酒の味として認められるか, あるいはワイン, リキュー・ルの味と考えられるかを判断して, 一般分析値による清酒の範囲ならびに味覚による清酒の範囲を検討し, 次の結果を得た。<BR>1) 生産地による清酒の差別化については, 同一国税局内においても県ごとに差があり, 地域差は少なくとも県単位で比較すべきである。<BR>2) 味覚による清酒の範囲は, 現在の市販清酒よりもはるかに広く, 清酒の多様化の可能性を示唆した。<BR>3) 清酒以外の飲料の酸度・糖量は, 糖量・酸度を直交軸とする平面にプロットすると, 味覚による清酒の範囲に外側にあり, 清酒と他の酒類の差別が可能である。さらに, 弁別閾による酒質の細分化, 熟度による差別化, 酸組成による差別化について考察した。
著者
奥田 将生 橋爪 克己 上用 みどり 沼田 美子代 後藤 奈美 三上 重明
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.2, pp.97-105, 2010 (Released:2012-02-13)
参考文献数
19
被引用文献数
3 1

登熟期の気温と原料米の溶解性に密接に関係するデンプン特性の年次·産地間変動との関係について解析し,以下の結果が得られた。1 同一品種でも産地間でデンプン特性や蒸米消化性が異なるのは,産地の登熟期気温が影響したことが主な原因であると示唆された。2 25品種27産地の生産年度の異なる試料について,出穂後気温とデンプン糊化温度の関係について解析したところ,登熟期気温と糊化温度は高い相関性を示し,登熟期気温が低い年は糊化温度が低く,一方気温が高いと糊化温度も高くなることを確認した。以上,デンプン糊化温度は蒸米消化性と高い相関性を示すので,これまでと今回の研究結果から,原料米ごとの出穂後の気温に注目すれば,かなりの精度で原料米の溶解性に関する酒造適性を予測できると考えられた。
著者
Tateo FUJII
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
JOURNAL OF THE BREWING SOCIETY OF JAPAN (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.4, pp.174-182, 2011 (Released:2016-11-15)
参考文献数
8
被引用文献数
2

わが国の発酵食品には酒類・味噌・醤油・食酢・納豆・漬物・かつお節・くさや・塩辛・ふなずし・チーズ・ヨーグルト・パンなど,さまざまな食品がある。これらの食品は,その土地の産物や気候風土を上手に生かし,さらには長い時間をかけて培われてきた先人達の知恵の結晶である。本解説では,水産物の発酵食品を長年に亘って研究を重ねてこられた筆者に,香の強いくさや・塩辛・ふなずしについて,その歴史・製法・微生物の働きについて解説して頂いた。
著者
恩田 匠
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.5, pp.286-301, 2016 (Released:2018-07-12)
参考文献数
9

シャンパーニュ製造について研修をされた筆者には,これまでに本誌でブドウ栽培やアサンブラージュについて解説をしていただいたが,今回はシャンパーニュ製造のための果汁の調製について貴重な情報を紹介していただいた。日本でも瓶内二次発酵のスパークリングワインの生産が増えているが,通常の白ワインの果汁調整とは考え方が異なることが分かり,大変興味深い。

2 0 0 0 OA お味噌の効能

著者
渡邊 敦光
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.11, pp.714-723, 2010 (Released:2016-02-04)
参考文献数
46

わが国の代表的発酵食品の一つである味噌について,健康や長寿に良いことが伝承されてきたが,食塩の過剰摂取による弊害のおそれも指摘されてきた。これまで味噌等の発酵食品の健康・栄養に関する知見については伝承的な説明が広く知られていたが科学的な研究の発展が遅れていた。近年,動物を用いた臨床研究,分子生物学,分子栄養学の研究が進展し,味噌を含む発酵食品の健康機能性が急速に明らかにされつつある。本解説では,味噌の抗癌効果を長年に亘って研究し味噌の生理機能研究を牽引してきた研究者の一人である著者に,これまでのご自身の研究成果と国内外の研究成果を紹介していただき,味噌の健康機能について幅広くわかりやすく解説していただいた。
著者
堀越 昌子
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.6, pp.389-394, 2012 (Released:2017-12-12)
参考文献数
9

なれずし(馴れずし・熟れずし)は,コイやフナなどの川魚に米飯を混ぜ,重石をして数ヶ月から数年かけて保存する。この間,乳酸菌の作用でpHが下がり,雑菌の繁殖を抑えつつタンパク質の分解により旨み成分が増加するが,独特の香りを持っている。琵琶湖の「鮒ずし」や東北・北海道の「いずし」を始め,各種のものが知られている。そこで筆者に琵琶湖のナレズシを中心に,文化・栄養・製法・位置づけ・抗菌性について解説して頂いた。