著者
井之上 準 望月 俊宏
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.125-131, 1980

バングラデシュ, タイおよびベトナムの代表的な浮稲各2品種ずつを用い, 浸水処理によって節間伸長が促進された主稈の各節部からの冠根について調査を行った.浸水処理は各品種において, 節間伸長が起りはじめる苗令に達した時 (バングラデシュ: 8葉期, タイ: 11葉期, ベトナム: 12葉期) に開始し, 毎日0cm (無処理) , 2cmおよび4cmずつ約70日間 (7月上旬~9月中旬) 行った.実験は1978, 79年の2回行われたが, ほぼ同様の結果が得られた.なお, 供試した品種は実験終了時には未だ幼穂を分化していなかった.得られた結果の概要は次の通りであった.<BR>1.浸水処理は節間伸長および出葉速度を促進した.その結果, 浸水処理終了時における主稈葉数は4cm/日浸水処理区は無処理区に比較して2~6葉多かった.<BR>2.浸水処理によって節間伸長が促進された個体では水中にある節の上部の根帯から太い根 (上位根) が, 下部の根帯から細い根 (下位根) が発生した.根の太さは品種や節位によって異なったが, 上位根はほぼ0.88~1.15mm, 下位根は0.33~0.48mmであった.なお, 後生大導管数は上位根では3.0~5.5個, 下位根では1.0~2.5個であった.<BR>3.品種や節位の違いによってもやや異なったが, 概して, 下位根の発生はそれより2節上位の葉身が半分またはそれ以上抽出した頃に始まるのに対し, 上位根の発生は4節上位の葉身の抽出中に始まった.すなわち, 第15葉抽出中の植物体を例にとれば, 第15葉 (第15節からの葉) の伸長と第13節からの下位根および第11節からの上位根の発生はほぼ同調して起った.<BR>4.各節部から発生する根数については, 下位根は節位が上るほど多かったが, 上位根ではこのような傾向はみられず, 分げつが発生した節で多いようであった.<BR>5.下位根はほぼ水平 (茎に対して直角) に発根し伸長するのに対し, 上位根は斜め下方へ向って発根し伸長した.また, 下位根は発根直後から分岐根を発生するのに対し, 上位根では伸長初期には分岐根の発生はみられなかった.

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こんな論文どうですか? 浸水条件下で節間伸長した浮稲における冠根の発生(井之上 準ほか),1980 https://t.co/8jRyUi4RoE
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