著者
白岩 正 谷口 省三 井川 明彦 樫間 裕司 黒川 秀基
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1983, no.11, pp.1617-1622, 1983

(±)-α-メチルベンジルアミンの有機酸塩のラセミ体構造を調べ,優先晶出法による光学分割の可能性について検討した。塩形成に用いた有機酸は,ベンゼンスルホン酸(BS),p-メチルベソゼンスルホン酸(MBS),p-エチルベンゼンスルホン酸(EBS),スルファニル酸(SU),p-t-ブチル安息香酸(TBB),フェノキシ酢酸(PA),イソ吉草酸(IVA),ビバル酸(PI),メタクリル酸(MC)および2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(HMP)である。これらの有機酸塩のラセミ体と光学活性体の融点,溶解度および赤外吸収スペクトルの比較によってラセミ体構造を調べた。しかし,これらの方法では(±)-TBB塩のみがラセミ混合物であることが推定できただけで,その他の塩のラセミ体構造を推定することは困難であった。そこで,ラセミ体と光学活性体の融解エンタルピー(ΔHf)を比較し,さらにラセミ化合物の生成自由エネルギー(ΔGφ)を求めた。BS,MBS,EBS,SU,PA,MCおよびHMP塩においてはΔHf(±)>ΔHf(-)になったが,IVAならびにPI塩ではΔHf(±)<ΔHf(-)になった。しかし,これらの塩のΔGφ はすべて負の値を示したことから,その(±)-塩はいずれもラセミ化合物を形成していることがわかった。とくに,PI塩のΔGφ の絶対値はその他の塩のそれらにくらべてきわめて小さいので,(±)-PI塩は安定性の乏しいラセミ化合物であると推定されるTBB塩ではΔHf(±)<ΔHf(-)になり,ΔGφ の値も正の値を示したので,そのラセミ体はラセミ混合物であることが確認された。なお,以上の(±)一塩のラセミ体構造は,融点の二成分系状態図からも確認した。以上の結果から,(±)-TBB塩がラセミ混合物であることがわかったので,テトラヒドロフラン中,20℃で優先晶出法によって光学分割した。その結果,90%以上の光学純度の(-)-TBB塩を分割することができた。

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