著者
田中 豊
出版者
The Geodetic Society of Japan
雑誌
測地学会誌 (ISSN:00380830)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.73-85, 1985

地震予知の基礎的研究として,1978年以来大学,国立防災科学技術センター,地質調査所は,応力解放法,水圧破壊法,その他新開発された方法により応力測定を実施してきた.1984年中期までには地下開発設計や地熱開発計画に際し実施された測定を含めて50余地点の測定結果が報告された. これらの測定成果を概括し,方法,條件,地域を異にする測定値を比較し,現時点での応力測定の有意性を検討しておく必要がある.理論的厳密な補正は今後の研究を待つこととし,比較のため簡便なデータ処理を施し,応力測定成果を概観することにした. 1)水平最大応力方向は平均的にはテクトニツクな応力状態を十分反映していると思われる. 2)応力深度勾配は各地でそれぞれ異なる.応力解放法では限定地域内で西日本の標準応力深度勾配を求め,これと水圧破壊法による勾配と比較した.平均水平応力,水平せん断応力に関しては,西日本の深度勾配は水圧破壊法により東日本各地で得られた値のほぼ平均を示し,深度勾配の比較は,地下の応力状態を推定し,応力区を類別するために有用と思われる.3)応力深度勾配を用い,各深度の測定値を標準深度(今回300m)の応力値に換算し,水平主応力の地域分布図を画いた.これは応力区の広がり7活断層との関連,局地的異常など壷調べる上で有効と思われる.4)極浅発地震の発震機構から中間主応力軸は必ずしも鉛直ではないことが知られている.上部地殻の応力状態を明解に.示すたあ,3次元応力測定で得られた最大せん断応力面をステレオ投影した.これは地形影響の判定と同時に,活断層地域の局所的応力状態の推定にも役立つ. 以上のように各種の応力測定は十分地震予知の基礎研究として成果をあげつつあるが,応力変化を求めるにはまだ精度が不足であり精度向上と同時に,各種條件下の多数の測定資料がなお必要である.

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