- 著者
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石山 育朗
鈴木 政登
佐藤 誠
中村 泰輔
- 出版者
- Japanese Society for Mastication Science and Health Promotion
- 雑誌
- 日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, no.2, pp.55-69, 2006
健康な20~42歳の男性9名を対象に, チューインガム咀嚼は交感神経系と副交感神経系のいずれをより亢進させるのかを明らかにするため, ガム咀嚼時の循環系(心拍数, 血圧, 心拍パワースペクトル), 唾液成分, 脳波(α ・β 波)を指標として検討した.実験には2種類の硬さ(soft, hard)のテアニン含有ガム(RX)と, ガムベースのみの対照ガム(C)を用い, 成分の影響等を比較した.<BR>RX, Cガム咀噛時ともに心拍数, 血圧の増加と唾液分泌量が増加し, 指尖容積脈波波高(WH)は低下した.唾液分泌量, 唾液総蛋白, 唾液α アミラーゼ濃度および電解質濃度は, RXガム咀嚼時に著しく増加した.Cガム咀嚼時には分泌型免疫グロブリンA(slgA)濃度と心拍パワースペクトル低周波/高周波成分比(LF/HF)が低下したが, RXガム咀嚼時には変化が認められなかった.コルチゾール濃度の変化はみられなかった.また, Cガム咀嚼時の脳波α 波の抑制が顕著にみられた.<BR>これらの結果から, ガムの味の有無に関わらずガム咀嚼中は交感神経系活動の亢進が顕著となるが, 口腔内では副交感神経系を同時亢進させ, 味付きガム(RX)の唾液分泌への影響は顕著であった.両ガムとも咀嚼終了によって循環系から推定する副交感神経系反応は顕著になるが, 唾液中sIgAと脳波α波の増減から推定したリラックス効果は, 咀噛刺激よりもリラックス成分の影響によると推察された.