著者
石山 育朗 鈴木 政登 松原 茂 滝口 俊男 工藤 照三 鈴木 義久 佐藤 吉永
出版者
Japanese Society for Mastication Science and Health Promotion
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.42-52, 1998-06-25 (Released:2010-07-21)
参考文献数
27
被引用文献数
2

本研究は, ガム咀嚼時の自律神経機能を調べるため, 心拍数 (HR), R-R間隔の変動係数 (CVRR), 指尖容積脈波 (PTG) の波高 (WH) と変動係数 (CVwH), 血漿カテコールアミン (pAd, pNorad) 濃度等を指標に用い, ガム咀嚼時の各指標の変化を観察した.被験者は健康な男性11名 (年齢24.5±4.1歳) であった. 実験は被験者を閉眼仰臥位にして行い, 硬さの異なる3種のガム (I, soft; II, semi-hard; II, super-hard) を用い, 毎秒1回のリズムでガムIから順にそれぞれ6分間咀嚼させ, 間に6分間の休息をとった. HR, PTGの記録は, 安静時, 各ガムの咀嚼開始時, 咀嚼終了2分前, 咀嚼終了直後および4分後と, ガムIII咀嚼終了10分後に記録した. 採血は留置翼状針を介し安静時, 各ガムの咀嚼直後とガムIII咀嚼終了10分後に行った. その結果, HRはガム咀嚼時に-過性に増加し, CVRRは硬いガム咀嚼時に安静値より低下, 咀嚼直後休息時に上昇した. WHはガム咀嚼時に低下し, 咀嚼後休息時も数分間低値が持続, CVWHはガム咀嚼開始時に安静値より上昇した. ガム咀嚼直後のpAd, pNorad濃度は上昇し, pNorad濃度はガム咀嚼実験終了10分後も高値を示した.以上の結果から, ガム咀嚼時には交感神経活動の亢進, 末梢血管の収縮が起こり, 全身運動時とは異なる調節機序が推察された. ガム咀嚼終了後の休息時と回復期には副交感神経活動が亢進するが, 末梢血管系等への交感神経活動も弱い亢進状態が持続することが示唆された.
著者
鈴木 政登 坂木 佳寿美 松原 茂 三浦 次郎 塩田 正俊 飯島 好子 町田 勝彦 井川 幸雄
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.231-242, 1990-08-01
被引用文献数
5

成長期にあるスポーツ選手の運動と栄養摂取の実状を把握するとともに適正な運動と栄養のあり方を考える目的で、次のような実験を行なった。高校生野球部員17名(15〜16歳、169.1cm、59.0kg)を対象に、1週間の夏期強化練習(自宅通学)時にエネルギー消費量(EE)、栄養摂取量(CI)、摂取食品目数、体重および血圧を毎日測定し、12分間走は4回行なった。血液・尿成分は強化練習初日、4日目および最終日(7日目)の3回測定した。本実験結果は、次の通りであった。1.強化練習1週間の平均EEは53.4±7.5kcal/kg/dayであった。CIはEEの87.2%に相当し、1日あたり平均7.4kcal/kg少なかった。しかし、体重の経日的変化は観察されなかった。2.強化練習経過に伴う血圧変化はみられなかったが、12分間走成績は低下した。3.炭水化物(C)、脂肪(F)および蛋白質(P)の熱量比は、1週間の平均でそれぞれ66.0、20.3および13.8%であり、動物性蛋白質は47.8%であった。4.食事内容は各家庭でほぼ決まっており、個人内変動が少なかった。概ね摂取食品目数が少なく、10品目に満たない者が35%みられ、それがほぼ1週間継続していた。5.血液成分のうち顕著に変化したのは、血清TG、TP、Hgb濃度およびCPK活性であり、強化練習4日目から最終日CPKTG41/36.4(Pi)(UN)(CA)NaCl7.112EECI(CI-EE)CACPKTGTPHgb(20.3%)(1.50g/kg/day)
著者
石山 育朗 鈴木 政登 佐藤 誠 中村 泰輔
出版者
Japanese Society for Mastication Science and Health Promotion
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.55-69, 2006-11-30 (Released:2010-07-21)
参考文献数
33
被引用文献数
3

健康な20~42歳の男性9名を対象に, チューインガム咀嚼は交感神経系と副交感神経系のいずれをより亢進させるのかを明らかにするため, ガム咀嚼時の循環系(心拍数, 血圧, 心拍パワースペクトル), 唾液成分, 脳波(α ・β 波)を指標として検討した.実験には2種類の硬さ(soft, hard)のテアニン含有ガム(RX)と, ガムベースのみの対照ガム(C)を用い, 成分の影響等を比較した.RX, Cガム咀噛時ともに心拍数, 血圧の増加と唾液分泌量が増加し, 指尖容積脈波波高(WH)は低下した.唾液分泌量, 唾液総蛋白, 唾液α アミラーゼ濃度および電解質濃度は, RXガム咀嚼時に著しく増加した.Cガム咀嚼時には分泌型免疫グロブリンA(slgA)濃度と心拍パワースペクトル低周波/高周波成分比(LF/HF)が低下したが, RXガム咀嚼時には変化が認められなかった.コルチゾール濃度の変化はみられなかった.また, Cガム咀嚼時の脳波α 波の抑制が顕著にみられた.これらの結果から, ガムの味の有無に関わらずガム咀嚼中は交感神経系活動の亢進が顕著となるが, 口腔内では副交感神経系を同時亢進させ, 味付きガム(RX)の唾液分泌への影響は顕著であった.両ガムとも咀嚼終了によって循環系から推定する副交感神経系反応は顕著になるが, 唾液中sIgAと脳波α波の増減から推定したリラックス効果は, 咀噛刺激よりもリラックス成分の影響によると推察された.
著者
鈴木 政登 石山 育朗 塩田 正俊 町田 勝彦
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.585-598, 2003-10-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
37
被引用文献数
1 1

既存の最大酸素摂取量 (VO2max) の判定基準は軍人やスポーツ選手など十分に身体鍛錬を積んだ者を対象に設定された.しかし, 現在VO2maxは健康関連体力要素の1つとして, 幼若者から高年齢者に到るまで広く普及している.従って, それらの者に適用できるVO2max判定基準およびその臨界値が求められる.本研究では, 8~82歳までの健康男女548名を対象に, トレッドミルによる負荷漸増運動を課し任意の最大酸素摂取量 (VO2max) を実測した.任意のVO2max値を年齢回帰させ, 年齢予測VO2max値を算出し, 実測VO2max×100/年齢予測VO2maxの式から%VO2max値を求め, その度数分布図に反復切断法を適用し, VO2max基準域 (X-1.96SD~X+1.96SD, 70%~130%VO2max) を設定した.この範囲の平均値をVO2max基準値, 下位10%に相当する値を臨界値とし, いずれも実測値に変換し5歳毎の平均値として男女別に提示した.次いで, 70%~130%VO2max範囲の生理・生化学的指標 (HRmax, DPmax, RRmax, %△PVmaxおよびbLAmax) を, %VO2max値算出法に基づき%表示した.%表示された各指標の度数分布図の下位10%に相当する値を, VO2max値として採択し得る限界値 (臨界値) とし, 実測値に変換し5歳毎の平均値として男女別に提示した.最後に70%VO2max以上の領域を占めた各被験者の値をVO2maxと認定 (男性224名, 女性283名) し, 各生理・生化学的指標の臨界値を単独または組み合わせ適用によるVO2maxの採択率を調べ, さらに簡便・容易性および信頼性の観点からVO2max判定指標およびそれらの組み合わせを吟味した.その結果, 単独適用した場合の採択率が最も高いのはHRmaxであり, 男性の臨界値92.1%, 女性の値91.0%HRmaxを適用し, それぞれ92.9%および91.2%の採択率が示された.次いで, 簡便・容易で信憑性の高い組み合わせは, HRmaxとbLAmaxの両方の臨界値を同時に満たした場合で, 男性では82.6%, 女性は80.6%の採択率であった.本研究によって, 反復切断法と従来の判定基準適用によるVO2max値との間に有意差のないことが確認され, 反復切断法による性・年齢別VO2maxの基準値および臨界値が提示された.さらに, 簡便で信憑性の高いVO2max判定指標としてHRmaxおよびbLAmaxの臨界値が提示され, 性・年齢別臨界値の適用が奨められた.
著者
鈴木 政登 清水 桃子 河辺 典子 高尾 匡 町田 勝彦 川上 憲司
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.329-344, 1996-04-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
48
被引用文献数
5 1

加齢およびlife styleに起因した有酸素性作業能 (VO2max) の低下, 高血圧, 血清脂質の上昇および筋量や骨密度 (BMD) の低下は「寝たきり, 痴呆性老人」発症の危険因子とされる.本研究は, 年齢やlife styleおよび運動の習慣化の動機などそれぞれが異なる20~76歳の健康女性165名を対象とした横断的研究であり, これらの危険因子が習慣的運動によって改善または除去されるか否かを調べる目的でなされた.1回30分間以上, 週2回以上の頻度で水泳, ジョギング, エアロビックダンス等の運動を2年間以上継続している者を運動群 (Ex群, n=82) , Ex群としての条件を満たさない者および運動習慣がない者を対照群 (Cont群, n=83) とし, 40~60歳までは5歳刻みで, それ以下およびそれ以上の年齢の者は一括して比較した.運動習慣の有無のみならず閉経年齢や嗜好品および就業状況などlife styleの調査も行い, 次のような研究結果を得た.1) 本被検者165名のうち閉経者は89名 (54%) おり, 閉経年齢の平均は49.7±3.1歳 (閉経期間1~23年間) であった.2) 常習的喫煙者は35名, 週1回以上の頻度の飲酒習慣を有する者は100名みられた.3) 加齢にともなって体重あたりVO2max (n=165, r=-0.590) およびHRmax (r=-0.722) は有意 (p<0.001) に減少した.Ex群のVO2maxはCont群に比し有意な高値を維持しつつ加齢にともない減少したが, HRmaxには2群間の差はなかった.4) 安静時血圧は40歳未満の群が有意な低値を示した他は隣合う年齢間に有意差こそなかったが, 明らかに加齢にともないSBP (r=0.391) , DBP (r=0.315) ともに有意 (P<0.001) な上昇を示した.しかし, 本被検者165名の中には160/95mmHg以上の者はいなかった.安静血圧にはEx, Cont群間に有意差はなかったが, 運動前後の差 (ΔSBP, ΔDBP) はEx群がやや高い傾向であった.5) 血液成分のうち, 明かな年齢変化が認められたのは血清TC (r=0.346, p<0.001) およびLDL-C濃度 (r=0.339, p<0.001) であった.HDL-Cには年齢変化はみられなかった.Ex, Cont群間の比較では, TC, HDL-CいずれもEx群が高値傾向を示し, HDL-C/TC比には差がなかった.しかし, 本被検者のうち10, 30kmおよびフルマラソンなど公式試合出場者 (n=11, 49.7±7.7歳) では同年代の者に比し血清TCは低く (189.2±23.3mg/dl) , HDL-Cは有意に高値 (72.2±10.9mg/dl) であった.さらに, 飲酒と運動習慣を併用している者 (n=26) のHDL-C (75.8±15.8mg/dl) およびHDL-C/TC比が高かった.6) 体重や肥満度には年齢変化も2群間の差もみられなかったが, 加齢にともない%FTMが増加し, %LTMが減少する傾向であった.2群間の比較ではEx群の%LTMが高く, %FTMは低値傾向を示した.7) 閉経前にはEx群のTBMDおよびLegBMDが有意に高値であったが閉経後では2群間に有意差はなかった.しかし, 閉経後の者でもフルマラソン等公式大会に出場している者 (n=5, 52.6±1.5歳) のTBMDおよびLegBMDはCont群 (51~55歳) のそれに比し有意に高値であった.8) VO2max, 体組成, 骨密度および血清脂質濃度相互の関連を調べた結果, VO2max総量はLTM (kg) と高い相関 (r=0.669) を示し, VO2max/LTMは加齢にともなって減少したが, いずれの年齢でも常にEx群が有意な高値であった.体重あたりVO2maxは%FTMとは逆相関 (r=-0.442) , %LTMとは正相関 (r=0.422) を示した.しかし, 血清TC, HDL-C濃度とは関連がなく, 安静時SBP (r=-0.232, p<0.01) およびDBP (r=-0.192, p<0.05) とは低い相関係数しか示されなかった.一方, BMDは年齢の他に体重, それもLTMの影響を強く受けた.しかし, TBMDと体重あたりVO2maxとの相関は必ずしも高くはなかった (r=0.354, p<0.001) .骨密度およびVO2maxにおよぼす諸要因の重回帰分析を行った結果, 次のような回帰式を得た.全身骨密度 (TBMD; g・cm-2)=0.9525-0.0045×Age+0.0059×FTM (kg) +0.0072×LTM (kg)(n=165, R=0.669, p<0.001)VO2max (ml・kg-1・min-1)=47.97-0.391×Age+0.175×Leg BMD (g・cm-2) -0.531×%FTM (%)(n=165, R=0.715, p<0.001)尚, 上記二式の偏回帰係数はすべて0.1%水準で有意であった.以上の研究結果から, 習慣的運動によって全身持久性能力 (VO2max) や筋の最大酸化能 (VO2max/LTM) は高く維持されるが, 加齢による骨密度の減少や血清脂質の改善を期待することは困難であり, これらの改善にはより厳密な運動処方が必要であることがわかった.しかし, 体重あたりVO2maxは骨密度 (例えば, 脚骨密度; r=0.395) や筋量指標 (%LTM; r=0.422) と有意 (p<0.001) な正相関を示したことから,
著者
井川 幸雄 鈴木 政登 塩田 正俊
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.1-10, 1985-02-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
20
被引用文献数
2

The purpose of the present study was to assess the effect of commercial sports beverage intake after a thermal exposure on water-electrolytes balance.Nine healthy male volunteers with a mean age of 26.4 years, not heat acclimated, participated in a control experiment where no fluid was given (C experiment) . Five of them were given 500ml isotonic sports beverage containing Na+, K+, Cl-and glucose (S. B experiment) and/or 500 ml tap water (Wa experiment) immediately after sauna exposure. The nude subjects were exposed to a sauna with 65 to 70°C (r. h. 50 to 60%) for 30 min.Serum protein, electrolytes (Na+, K+, Cl-), creatinine, plasma aldosterone (Ald), and catecholamines concentrations and excretions of electrolytes and aldosterone into urine were measured before, and 3, 30, 60, and 120 min after the sauna. Serum and urinary osmolalities, blood pressure, rectal temperature (Tr), heart rate, oxygen consumption and weight loss were also measured.Body weight loss ranged from 50 to 750g. Serum protein, electrolytes and Ald concentrations increased significantly after the sauna. The enhanced levels of these variables and the depression of urine volume, urinary Na+excretion were maintained throughout the 2h recovery period in C experiment. Hydration associated with a reduced concentration of serum protein and electrolytes was observed at 30 min in S. B, at 60 min in Wa, and a dehydration occured again at 120 min both in S. B and Wa. A peak of urine volume was observed at 60 min in S. B and at 120 min in Wa during recovery. Free water clearance (CH2O) was -0.98 ml/min/100 ml GFR (Ccr) prior to the exposure. With no fluid administration after the sauna, an excess in negative water balance remained throughout the 2 h recovery. But CH2Ochanged from negative to positive at 60 and 120 min after sports beverage and/or water loadings.A significant elevation of % TRNa (0.33 to 1.14%) was maintained after the sauna in both C and Wa experiment. Plasma Aid concentration and excretion of Aid in urine after the exposure were higher in both C and Wa than in S. B experiment. The increased Tr did not return to the initial level throughout the recovery. No significant differences were observed among the three experiments in heart rate and blood pressure as well as Tr.The data indicate that salt deficit due to the sauna exposure was attenuated, but not prevented, by sports beverage intake, although the Aid secretion was alleviated. It is suggested that an over loading of sports beverage or water (i. e. 500 ml VS 50 to 750 g weight loss) leads to a marked and prompt water-diuresis, and to another dehydration. The increase of Tr as well as a partly salt deficit can be related to the rises in Ald secretion still observed at 2 h recovery.
著者
鈴木 政登 坂木 佳寿美 松原 茂 三浦 次郎 塩田 正俊 飯島 好子 町田 勝彦 井川 幸雄
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.231-242, 1990-08-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
32
被引用文献数
1

成長期にあるスポーツ選手の運動と栄養摂取の実状を把握するとともに適正な運動と栄養のあり方を考える目的で, 次のような実験を行なった.高校生野球部員17名 (15~16歳, 169.1cm, 59.Okg) を対象に, 1週間の夏期強化練習 (自宅通学) 時にエネルギー消費量 (EE) , 栄養摂取量 (CI) , 摂取食品目数, 体重および血圧を毎日測定し, 12分間走は4回行なった.血液・尿成分は強化練習初日, 4日目および最終日 (7日目) の3回測定した.本実験結果は, 次の通りであった.1.強化練習1週間の平均EEは53.4±7.5kcal/kg/dayであった.CIはEEの87.2%に相当し, 1日あたり平均7.4kcal/kg少なかった.しかし, 体重の経日的変化は観察されなかった.2.強化練習経過にともなう血圧変化はみられなかったが, 12分間走成績は低下した.3.炭水化物 (C) , 脂肪 (F) および蛋白質 (P) の熱量比は, 1週間の平均でそれぞれ66.0, 20.3および13.8%であり, 動物性蛋白質は47.8%であった.4.食事内容は各家庭でほぼ決まっており, 個人内変動が少なかった.概ね摂取食品目数が少なく, 10品目に満たない者が35%みられ, それがほぼ1週間継続していた.5.血液成分のうち顕著に変化したのは1血清TG, TP, Hgb濃度およびCPK活性であり, 強化練習4日目から最終日にかけてCPK活性が著しく上昇し, 他は低下した.とくにTG濃度低下が著しく4日目には初日の1/3以下に激減した.6.強化練習4日目, 最終日にかけて, 無機燐 (Pi) , 尿素窒素 (UN) およびカテコールアミン (CA) 排泄量が著増し, Na, Cl排泄量は低下した.7.強化練習1週間の体重, 12分間走成績, EEおよびCIと血液・尿成分変化との相互関連を調べた結果, 負のエネルギー出納 (CI-EE) が増すほど, 尿中CA排泄量や血清CPK活性が上昇し, TG, TPおよびHgb濃度が逆に低下することが示された.以上の実験結果から, 現状の運動量と栄養摂取状態が持続すれば体重が減少し, 貧血を生じる可能性は十分あり, 体力のみならず十分な技術向上も期待できない, と考えられる.この運動量で野球練習を続けるならば, 摂取食品目数および総摂取熱量の増加, とくに脂肪 (現在の熱量比の平均20.3%) , 蛋白質 (現在平均1.509/kg/day) の摂取増加など栄養摂取面の改善が必要であると思われる.稿を終えるにあたり, 本研究遂行に御協力いただいた栄養士, 三浦かおり, 横田あけみの両氏に厚く御礼申し上げます.また, 被検者として御協力いただいた千葉県立流山中央高校野球部々員諸君ならびに大井監督に御礼申し上げます.
著者
鈴木 政登 柴田 柾樹 佐藤 吉永
出版者
Japanese Society for Mastication Science and Health Promotion
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.55-62, 1992-12-25 (Released:2010-07-21)
参考文献数
24

To measure energy consumption during the process of chewing gum, and to investigate the effects of gum-chewing on levels of sugar and lipids in blood and pituitary - adrenal hormones concentrations in plasma, a study was designed in which nine healthy male volunteers chewed two pieces of marketed gum (6.18g;E-gum) for ten minutes with a chewing rhythm of about 80 times per minute while oxygen intake (VO2) and heart rate (HR) were measured continuously for 30 minutes before (rest period), during the 10 minutes (chewing period) and for 30 minutes after chewing (recovery period). Blood samples were drawn before, immediately after, 10 minutes and 30 minutes after gum-chewing via a catheter introduced into the brachial vein for measurements of blood sugar (BS), FFA, TG plasma ACTH, plasma adrenaline (pAd), noradrenaline (pNorad), and insulin (IRI) concentrations. Two pieces of the control gum (1.30 g; C-gum), a gum base containing no additional elements and harder than E-gum, were also chewed in the same manner as the E-gum. Both E- and C-experiments were carried out continuously in the sitting position and fasting state in no particular order, separately, during a different period between 10 a.m. and 2 p.m.
著者
鈴木 政登
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.407-422, 2002-10-01 (Released:2010-12-10)
参考文献数
42
被引用文献数
1 4

Numerous studies on serum enzymes derived from skeletal muscle, such as CH, AST, LDH, are also being reported in the field of sports medicine. In this article, I would like to summarize the findings on “physical exercise and serum enzymes” studied up to the present. Secondly, I will evaluate the usefulness and limits as indicators of condition and muscle fatigue in athletes. The amount of change and time course of Ch, AST, LDH and myoglobin responses were markedly different in 5-km, marathon and triathalon races, and in trained and untrained subjects. Trained subjects showed peaks of these enzymes one day after endurance running, and untrained subjects had a typical biphasic variation after endurance running. The typical change in untrained subjects might reflect a series of different histopathological changes, including muscle damage, repair and regeneration of muscles. In participants of women's marathon races, higher ranking prize winners showed lower levels before and lower increases in Ch activity after the mice than the other participants. higher serum CIA activity above 300 mU/ml accompanied by increases in serum myosin light chain I (MLC I) concentration (above 2.5 ng/ml) without increases in troponin T and CN-MIA were observed during marathon, triathalon, 100-km and 250 km ultra marathon races. The athletes who showed a higher serum CK activity above 500 mU/ml at the pre-race stage felt subjective fatigue and sonic dropped out from the race. Normal persons who had a lower Ch activity below 40.50 mU/ml indi cated lower levels of serum HDL-C and physical fitness (VO2max) . On the contrary, persons who showed a higher CR level of 100-200 mU/ml or more had higher levels of IIDL-C and VO2max.Measurement of serum CK activity might provide useful information for checking health and physical fitness levels in normal persons, and also the physical and subjective conditions of athletes.
著者
鈴木 政登 清水 桃子 河辺 典子 高尾 匡 町田 勝彦 川上 憲司
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.329-344, 1996-04-01
参考文献数
48
被引用文献数
6 1

加齢およびlife styleに起因した有酸素性作業能 (VO<SUB>2</SUB>max) の低下, 高血圧, 血清脂質の上昇および筋量や骨密度 (BMD) の低下は「寝たきり, 痴呆性老人」発症の危険因子とされる.<BR>本研究は, 年齢やlife styleおよび運動の習慣化の動機などそれぞれが異なる20~76歳の健康女性165名を対象とした横断的研究であり, これらの危険因子が習慣的運動によって改善または除去されるか否かを調べる目的でなされた.1回30分間以上, 週2回以上の頻度で水泳, ジョギング, エアロビックダンス等の運動を2年間以上継続している者を運動群 (Ex群, n=82) , Ex群としての条件を満たさない者および運動習慣がない者を対照群 (Cont群, n=83) とし, 40~60歳までは5歳刻みで, それ以下およびそれ以上の年齢の者は一括して比較した.運動習慣の有無のみならず閉経年齢や嗜好品および就業状況などlife styleの調査も行い, 次のような研究結果を得た.<BR>1) 本被検者165名のうち閉経者は89名 (54%) おり, 閉経年齢の平均は49.7±3.1歳 (閉経期間1~23年間) であった.<BR>2) 常習的喫煙者は35名, 週1回以上の頻度の飲酒習慣を有する者は100名みられた.<BR>3) 加齢にともなって体重あたりVO<SUB>2</SUB>max (n=165, r=-0.590) およびHRmax (r=-0.722) は有意 (p<0.001) に減少した.Ex群のVO<SUB>2</SUB>maxはCont群に比し有意な高値を維持しつつ加齢にともない減少したが, HRmaxには2群間の差はなかった.<BR>4) 安静時血圧は40歳未満の群が有意な低値を示した他は隣合う年齢間に有意差こそなかったが, 明らかに加齢にともないSBP (r=0.391) , DBP (r=0.315) ともに有意 (P<0.001) な上昇を示した.しかし, 本被検者165名の中には160/95mmHg以上の者はいなかった.安静血圧にはEx, Cont群間に有意差はなかったが, 運動前後の差 (ΔSBP, ΔDBP) はEx群がやや高い傾向であった.<BR>5) 血液成分のうち, 明かな年齢変化が認められたのは血清TC (r=0.346, p<0.001) およびLDL-C濃度 (r=0.339, p<0.001) であった.HDL-Cには年齢変化はみられなかった.Ex, Cont群間の比較では, TC, HDL-CいずれもEx群が高値傾向を示し, HDL-C/TC比には差がなかった.しかし, 本被検者のうち10, 30kmおよびフルマラソンなど公式試合出場者 (n=11, 49.7±7.7歳) では同年代の者に比し血清TCは低く (189.2±23.3mg/dl) , HDL-Cは有意に高値 (72.2±10.9mg/dl) であった.さらに, 飲酒と運動習慣を併用している者 (n=26) のHDL-C (75.8±15.8mg/dl) およびHDL-C/TC比が高かった.<BR>6) 体重や肥満度には年齢変化も2群間の差もみられなかったが, 加齢にともない%FTMが増加し, %LTMが減少する傾向であった.2群間の比較ではEx群の%LTMが高く, %FTMは低値傾向を示した.<BR>7) 閉経前にはEx群のTBMDおよびLegBMDが有意に高値であったが閉経後では2群間に有意差はなかった.しかし, 閉経後の者でもフルマラソン等公式大会に出場している者 (n=5, 52.6±1.5歳) のTBMDおよびLegBMDはCont群 (51~55歳) のそれに比し有意に高値であった.<BR>8) VO<SUB>2</SUB>max, 体組成, 骨密度および血清脂質濃度相互の関連を調べた結果, VO<SUB>2</SUB>max総量はLTM (kg) と高い相関 (r=0.669) を示し, VO<SUB>2</SUB>max/LTMは加齢にともなって減少したが, いずれの年齢でも常にEx群が有意な高値であった.体重あたりVO<SUB>2</SUB>maxは%FTMとは逆相関 (r=-0.442) , %LTMとは正相関 (r=0.422) を示した.しかし, 血清TC, HDL-C濃度とは関連がなく, 安静時SBP (r=-0.232, p<0.01) およびDBP (r=-0.192, p<0.05) とは低い相関係数しか示されなかった.一方, BMDは年齢の他に体重, それもLTMの影響を強く受けた.しかし, TBMDと体重あたりVO<SUB>2</SUB>maxとの相関は必ずしも高くはなかった (r=0.354, p<0.001) .<BR>骨密度およびVO2maxにおよぼす諸要因の重回帰分析を行った結果, 次のような回帰式を得た.<BR>全身骨密度 (TBMD; g・cm<SUP>-2</SUP>)<BR>=0.9525-0.0045×Age+0.0059×FTM (kg) +0.0072×LTM (kg)<BR>(n=165, R=0.669, p<0.001)<BR>VO<SUB>2</SUB>max (ml・kg<SUP>-1</SUP>・min<SUP>-1</SUP>)<BR>=47.97-0.391×Age+0.175<BR>×Leg BMD (g・cm<SUP>-2</SUP>) -0.531×%FTM (%)<BR>(n=165, R=0.715, p<0.001)<BR>尚, 上記二式の偏回帰係数はすべて0.1%水準で有意であった.<BR>以上の研究結果から, 習慣的運動によって全身持久性能力 (VO<SUB>2</SUB>max) や筋の最大酸化能 (VO<SUB>2</SUB>max/LTM) は高く維持されるが, 加齢による骨密度の減少や血清脂質の改善を期待することは困難であり, これらの改善にはより厳密な運動処方が必要であることがわかった.しかし, 体重あたりVO<SUB>2</SUB>maxは骨密度 (例えば, 脚骨密度; r=0.395) や筋量指標 (%LTM; r=0.422) と有意 (p<0.001) な正相関を示したことから,
著者
石山 育朗 鈴木 政登 佐藤 誠 中村 泰輔
出版者
Japanese Society for Mastication Science and Health Promotion
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.55-69, 2006

健康な20~42歳の男性9名を対象に, チューインガム咀嚼は交感神経系と副交感神経系のいずれをより亢進させるのかを明らかにするため, ガム咀嚼時の循環系(心拍数, 血圧, 心拍パワースペクトル), 唾液成分, 脳波(α ・β 波)を指標として検討した.実験には2種類の硬さ(soft, hard)のテアニン含有ガム(RX)と, ガムベースのみの対照ガム(C)を用い, 成分の影響等を比較した.<BR>RX, Cガム咀噛時ともに心拍数, 血圧の増加と唾液分泌量が増加し, 指尖容積脈波波高(WH)は低下した.唾液分泌量, 唾液総蛋白, 唾液α アミラーゼ濃度および電解質濃度は, RXガム咀嚼時に著しく増加した.Cガム咀嚼時には分泌型免疫グロブリンA(slgA)濃度と心拍パワースペクトル低周波/高周波成分比(LF/HF)が低下したが, RXガム咀嚼時には変化が認められなかった.コルチゾール濃度の変化はみられなかった.また, Cガム咀嚼時の脳波α 波の抑制が顕著にみられた.<BR>これらの結果から, ガムの味の有無に関わらずガム咀嚼中は交感神経系活動の亢進が顕著となるが, 口腔内では副交感神経系を同時亢進させ, 味付きガム(RX)の唾液分泌への影響は顕著であった.両ガムとも咀嚼終了によって循環系から推定する副交感神経系反応は顕著になるが, 唾液中sIgAと脳波α波の増減から推定したリラックス効果は, 咀噛刺激よりもリラックス成分の影響によると推察された.
著者
鈴木 政登 井川 幸雄 鈴木 政登
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987

1.運動強度と腎機能との関連健康成人男子7名を対象に、43〜100%VO_2max強度のトレッドミル走を20分間負荷し、腎機能変化を追跡した。クレアチニンクリアランス(Ccr、尿蛋白(アルブミン、β_2Mなど)および電解質排泄量いずれも強度の影響をうけたが、とくに尿濃縮能がその影響を鋭敏に反映し、43%VO_2max後では2.8%、100%VO_2max後では39%減少した。2.RIアンギオグラフィ-による最大運動後の腎血流量の測定健康成人男子6名を対象に、^<99m>Tc-フチン酸(92.5MBq)肘動脈よりボ-ラス注入しシンチカメラで腎領域の時間放射能曲線を求め、それからpool transit time(Oldendorf法)を算出し、その逆数変化を腎血流量(RBF)変化とした。エルゴメ-タで最大運動を負荷した。RBFは運動直後58.4%、60分後でも20.7%の有意減少で回復しなかった。3.運動性蛋白尿出現機序健康男子10名を対象に、captopril 50mgを経口投与しAngiotensin II(AngII)産生を抑制し、トレッドミルで最大運動を負荷した。captopril投与により運動後の血漿Ang II濃度上昇は抑制されたが、尿蛋白排泄抑制はみられず、運動性蛋白尿はAng IIによるfiltration fraction上昇に起因したとする従来の考え方を改める必要があり、これには運動で生じたアニオンギャップの増大が大きく関与していた。4.微量尿蛋白排泄の日内リズムと身体活動との関連健康男子10名を対象に、アルブミン(alb)、β_2M,NAG尿中排泄リズムと身体活動量(エネルギ-消費量)変化との関連を追求した。alb、β_2M,NAG排泄いずれも活動量の影響を受けたが、β_2M,NAG排泄は夜間休息時(10時頃まで)でも抑制されず、内因性調節支配を受けていることが示唆された。