- 著者
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成田 光生
- 出版者
- 一般社団法人 日本感染症学会
- 雑誌
- 感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
- 巻号頁・発行日
- vol.81, no.2, pp.149-154, 2007
- 被引用文献数
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マイコプラズマ感染症診断における血清IgM抗体検出法 (イムノカードマイコプラズマ抗体, 以下IC, Meridian-テイエフビー) の有用性と限界につき検討した.小児マイコプラズマ肺炎70例の検討において, 微粒子凝集 (PA) 法あるいはELISA法 (<I>Mycoplasma pneumoniae</I>-ELISA medac, medac Diagnostika, 今後保険収載予定) にても感染を確定できない時点でIC法が陽性であった場合が4例有り, IgM抗体検出法としての感度は実用に耐えると考えられた. 一方, 経時的に抗体価の変動を追跡し得た例においては感染後最長527日目でPA法あるいはELISA法では非感染と判断される時点においてもIC法は陽性を持続している場合が有った. また健常成人血清124検体中PA法では320倍が最高値で3例 (2.4%) のみ存在したのに対し, IC法では検索した25例中9例 (36.0%) が陽性であり, そのうちELISA法にては少なくとも6例が急性感染は否定的であった. IC法はあくまでも定性法であり, その陽性結果はIgM抗体の存在を意味するものではあるがそれが急性感染の存在を確定するものではないことを念頭に置いて, 他の検査所見とも合わせて総合的に判断する必要が有る. 近年の感染症動向調査ではマイコプラズマ肺炎の増加が問題となっているが, このような場合こそ診断法の精度に留意すべきである.