著者
朝田 康夫 上尾 八郎
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Journal of Antibiotics, Series B (ISSN:04478991)
巻号頁・発行日
vol.13, no.5, pp.284-287, 1960

先に我々は, 皮膚科領域の感染症において, その主役である葡萄球菌について各種抗生物質 (Chloramphenicol, Erythromycin, Oleandomycin, Tetracycline, Streptomycin, Penicillin, Sulfaisoxazole) に対する耐性の状態を報告した。現今, 抗生物質耐性葡菌の問題はますます注目されているが, 近時これら耐性葡菌に対する新抗生物質の出現もまたきわめて活発である。今回我々は, これら抗葡菌性抗生物質の1つとしてMikamycinをとり挙げ, 葡菌に対する耐性, 感受性ならびにその製剤の化膿性皮膚疾患に対する臨床治療効果について検討したので, 報告する。<BR>Mikamycinは, 新井, 米原, 梅沢等によつて報告された<I>Streptomyoes mitakaensis</I>から分離された新抗生物質であるが, その物理的, 化学的および生物学的報告については, 新井, 米原, 梅沢, 竹内, 田中, 岡部等による詳細な研究報告1.2.3.6) があるので, ここには省略する。また, このMikamycin類似の抗生物質としてはStreptogramin (CHARNEY1953), Staphylomycin (No.899物質DE SOMER1955), PA114 (CELMER1955), E129 (LEES1953) 等が報告されており4), その抗菌スペクトルはErythromycin-groupとほとんど同様であるとされている。これら諸物質とMikamycinとの比較についても, 多くの報告がある。その後, MikamycinにはA, B両物質が単離され, この両者の一定混合比において, その相乗効果が最大となることがみとめられた。すなわち, A10~90%, B90~10%の比で相乗効果が大きいことがみとめられており, ことにA60~70%, B30~10%の混合比で最大の相乗効果があるとされている。今回我々の使用したMikamycinA, B complexは, Aを70%, BがAに対して10%以上となるように製られたものである。このMikamyccinA, B complexと各種抗生物質Erythromyccinpropionate (Ilosone), Chloramphenicol, Tetracycline, StreptomycinおよびKanamycinを使用して, 京大病院皮膚科外来患者の諸種膿皮症から分離した葡菌および皮膚科病舎および外来の空中から分離した葡菌等, 合計31株の葡菌に対する感受性, 耐性を検討した。次いでMikamycin含有軟膏 (組成は後述) を使用して, 各種皮膚感染症に対する治療効果を観察した。

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