- 著者
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江波 戸美緒
中山 雅裕
真島 三郎
- 出版者
- Japan Heart Foundation
- 雑誌
- 心臓 (ISSN:05864488)
- 巻号頁・発行日
- vol.27, no.7, pp.37-41, 1995
加算平均心電図(SAE)の重症心室性不整脈,突然死予知に対する有用性は欧米の数々のprospectivestudyにより証明されてきた.しかし,本邦におけるprospective studyは少ない.本研究の目的は本邦において心筋梗塞後の致死性心室性不整脈予知に対するSAEの有用性は欧米と差違があるか,また長期予後予測に対しどの程度有用かを検討することである.<BR>対象は1986年2月より90年1月に急性心筋梗塞にて本院に入院した連続186例のうち,急性期の死亡,CABG例およびブロック,心房細動を除く145例である.全例において発症3-4週にSimsonらによるTime-domain法1)を用いてSAEを記録,解析した.Noise leve≦0.7μVにて記録が得られた130例を定期的に外来および電話問診にて追跡調査した.平均4.7±2.4年の観察期間中に不整脈事故(持続性心室頻拍,心室細動または突然死)は正常SAE群(104例)に2例(2%),異常SAE群(26例)に6例(23%),計8例に観察された.初回事故の63%は発症後2カ月以内に,87%が2年以内,全例が3年以内に起こっていた.また初回事故の75%が持続性心室頻拍(sustainedVT)であった.Kaplan-Maier法によるevent free rateは異常SAE群が正常SAE群に比し有意に低値であった.また異常SAEは左室駆出分画とともに不整脈事故の独立して有意な予知因子であった.突然死は3例(異常SAE群2例,正常SAE群1例)と少なく,その予知に対するSAEの価値を決定するのは困難であった.<BR>SAEは心筋梗塞後の致死性不整脈予知に有用であることは欧米のデータと一致した.しかしながら不整脈事故の頻度そのものが6.2%と同時期の欧米の報告に比し非常に低く,突然死も少数であった.また事故の発生状況からみてSAEの初回不整脈事故予知因子としての価値は長期的にも発症後の時間経過に影響を受けるものと思われた.