著者
前崎 繁文
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.51-62, 2010
被引用文献数
1

感染制御の目的は感染症の発症を未然に防ぐための平時の感染制御と,何らかの感染症のアウトブレイクが発生した際にその拡大を防ぐための有事の感染制御がある。とくに有事の感染制御では極めて短時間に幾多の感染制御のための手法を行う必要があり,多忙を極めることになる。院内(施設内)感染にはウイルスから寄生虫まで種々の微生物が関与するが,一般的には薬剤耐性菌,なかでも多剤耐性菌感染症がその対象となることが多い。多剤耐性菌のなかでもMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌; methicillin resistant <I>Staphylococcus aureus</I>)はその代表的な菌である。MRSAは1950年代から院内感染症の主な原因菌とされてきたが,現在では院内ばかりでなく,日常の社会生活にも浸透し,いわゆる市中感染型MRSAとして問題になりつつある。また,治療薬として新規の作用機序を持つリネゾリドが臨床使用可能となり,その有効性が確立されつつある。多剤耐性緑膿菌(MDRP; multiple-drug resistant <I>Pseudomonas aeruginosa</I>)やバンコマイシン耐性腸球菌(VRE; vancomycin resistant <I>Enterococci</I>)は発生報告が未だに少ないため,発生初期の段階で感染の拡がりを防ぐことが重要となる。我々の施設では2006年と2007年にMDRPとVREのアウトブレイクを経験し,有事の感染制御を実施してきた。その結果,MDRPおよびVREともに現在では制御可能なレベルとなり,平時の感染制御が実施されている。

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