著者
大泉 杏 山田 英司 三浦 亜衣子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.C0147, 2006

【目的】大腿骨頚部内側骨折に対する治療は、一般的に手術療法が選択されるのが現状である。しかし、高齢者であるため様々な合併症があり手術が不可能な場合、あるいは患者様自身や家族が手術を希望しない場合にはやむをえず保存的療法が選択される。Garden分類stage1、2に対しては骨癒合を目的とした保存療法が可能であることが報告されている。しかしstage 3、4では支配血管の損傷が伴いやすく、解剖学上、骨癒合が困難であるため、現在のところ統一されたプロトコールは確立されておらず、保存療法の経過を報告した研究は散見する程度である。そこで今回、大腿骨頚部内側骨折のGarden分類stage3、4を受傷し、保存療法を施行した5例において移動能力を中心にした成績の検討を行ったので報告する。<BR>【方法】2000年から2004年までに大腿骨頚部内側骨折Garden分類3、4を受傷し保存療法を施行した5例(男性2例、女性3例、平均年齢83±5歳)を対象とした。追跡期間3ヶ月から14ヶ月、手術が施行されなかった理由は合併症4例,手術拒否1例であった、また、受傷前歩行能力は独歩3例、T字杖歩行1例、老人車による歩行1例であり全員自立歩行が可能であった。<BR>当院に転院後、疼痛に対して温熱療法、消炎鎮痛剤による薬物療法及び介達牽引を施行した。そして可能な限り疼痛をコントロールしながら、積極的な運動療法を行った。まず、端座位から開始し、車椅子への移乗練習、可能ならば平行棒内起立練習を開始した。荷重は痛みに応じて漸増していき、平行棒内歩行、歩行器歩行、杖歩行へと進めた。筋力強化練習、他動的関節可動域練習は歩行練習と併用し積極的に行った。<BR>【結果】受傷からリハビリ開始までの期間は最短17日、最長6ヶ月、平均2.7ヶ月であった。5例中1例がGarden分類3にもかかわらず内反位で骨癒合し、残りの4例は骨折部の2次的転移により偽関節が形成された。その結果,1.5~3cmの脚長差が生じたが、補高をすることにより代償することが可能であった。疼痛もリハビリ開始当時と比べ徐々に軽減した。また5例共に受症前と比べADLの低下を生じたが、四輪型歩行器による自立歩行2例、四脚型歩行器による自立歩行1例、四点杖による監視歩行1例、片ロフストランド杖による監視歩行1例と何らかの移動能力は獲得することができた。<BR>【考察】今回の結果から保存療法は決して放置、あきらめではなく可能な限り疼痛をコントロールし,離床を促していくことが重要であり、積極的な運動療法を行なうことでGarden分類stage3、4例における保存療法でも移動動作の再獲得ができる可能性があると考えられた。<BR>

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