著者
藤原 俊輔 石井 裕之 段 秀和
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.C3P1454-C3P1454, 2009

【目的】外来初診時において,成長期野球肘の1つである肘関節離断性骨軟骨炎を呈した患者に対し,痛みを感じてから受診までの期間,初診時の病巣の進行程度,内上顆の裂離痕の存在有無を離断性骨軟骨炎の早期発見と予防を目的として調査した.<BR><BR>【対象と方法】平成19年3月より,平成20年8月までの18ヶ月間に,当院を受診し離断性骨軟骨炎と診断された24例を対象とした.全例男性で,発症時のスポーツは全例野球で,平均年齢は12.9±1.8歳であった.なお対象には,事前に本調査の趣旨を説明し理解を得た.方法は,初診時の問診により,投球時痛を発してから受診までの期間を聴取,初診時医師及び放射線技師によるレントゲン,MRI撮影により離断性骨軟骨炎の病期分類及び内上顆の裂離痕の有無,また理学療法士により肘ROM制限と腫脹の有無を確認した.なお,離断性骨軟骨炎の病期分類は,透亮期・分離期・遊離期の3期に分類し,病巣の部位により外側型と中央型に分類した.<BR><BR>【結果】投球時痛を発してから受診までの期間は,最短で1週間,最長で11ヶ月,24例の平均は2.75ヶ月であった.内上顆裂離痕は,24例中17例に存在していた.離断性骨軟骨炎の病期分類は,透亮期11例,分離期10例,遊離期3例であり,外側型16例,中央型8例であった.また,肘関節ROM制限においては,伸展制限が9例,屈曲制限が3例,うち伸展・屈曲共に制限があったのは2例であった.肘関節外側の腫脹は15例であった.<BR><BR>【考察】肘関節外側に発症する離断性骨軟骨炎は投球障害の中での重篤な障害であり,長期間の投球禁止を余儀なくされるばかりか重症例では,変形性肘関節症に進行し,日常生活にも影響をもたらす疾患である.今回調査した症例において,内上顆裂離後に離断性骨軟骨炎に至るケースが多い傾向にあった.さらに,投球時痛を発してから受診までに平均2.75ヶ月を要した原因は,個人因子よりも環境因子(チーム事情・指導者選手間の関係)が大きく関与していると考えられる.受診までの期間が遅くなることで,分離期~遊離期での症例が半数を占めROM制限や腫脹を有していた.透亮期であれば,保存療法の加療で可能となるが,分離期・遊離期では手術に至るケースが多くなる.これを避けるためには早期発見が大切であり,予防のために積極的に環境因子についてのアプローチが必要と考えられる.

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