- 著者
-
谷口 忍
国中 優治
- 出版者
- JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
- 雑誌
- 日本理学療法学術大会
- 巻号頁・発行日
- vol.2008, pp.G3P2578-G3P2578, 2009
【はじめに】PTとしての将来に不安を感じる最近の医療情勢は、若い世代にとって深刻な問題である.しかしながら、PTの知識や技術の可能性はまだまだ可能性があることは誰しもが承知であろう.そこで今回、PTの職域拡大への取り組みとして美容業界への参入を目指し、エステティシャンへの医学的知識の提供や美容系イベントの参加を経験して感じた将来的展望を報告する.<BR>【方法】1,美容メニューであるフェイシャルアプローチの施術に必要と考えられる医学的根拠(解剖学や生理学を中心に)を機器メーカー、美容外科に所属するエステティシャンに提供した.2,700人参加規模の一般女性向けイベントにて、美容系の各業種が集まる中、PT及びエステティシャンの混成チームとしてブースを設け、施術を行った.施術には通電装置であるElectrical Muscle Stimulation:EMS(商品名プロテクノPNF アルファトリニティ社製)を用いた.その効果は、a.表情筋への通電刺激による目尻、口角の位置を高位にする.b.下顎部のむくみを除去することで、フェイスラインに変化をもたらす.C.機器の特徴である中周波以上の周波数が、真皮層の血管拡張を促すことで肌に透明感を与え、美白効果をもたらす.また、表皮層のきめ細かさの現れによる化粧のりの良さなどが挙げられる.<BR>【結果及び考察】エステティシャンへの医学的知識の提供は、論理的な思考における施術への導きとなった.近年、美容業界においても、医学的根拠が求められる時代となり、その習得はサービスの質の高さを保証することとなっている.しかし、「メディカル~」などといったキャッチコピー的な扱いにより、実際のサービスとの差異が大きいのもトラブルの原因となっているようである.医学的知識の習得はエステティシャンにとって、サービスの質の向上として強く必要とされていることは確かであり、医学的知識を教授されているのも事実ではあるが、教授内容やその習得度が施術とは程遠く、実際にはマニュアル的な知識としてしか持ちえていないようである.その上、話題性にスピードが必要とされるあまり、不十分な状態でクライアントに提供してしまうなどの問題点がある.よって、我々が専門知識を提供する役割は非常に高いと感じている.<BR>【おわりに】PTがエステティシャンになり変われるかというと、簡単ではないようである.エステティシャンの接客対応(格好、言葉遣いなど)や経営理論、及びファッション性に関しての資質は高く、保険診療下におけるPTにとって、大きな課題であると思われる.また、エステ業界に参入しようと、エステティシャンの資格を取得する女性PTが増えつつあるが、PTとしての落とし込みがうまくいかないのも現状としてみられる.よって課題は多いが、参入に関するシステムの組み方及び人材次第で可能性は十分にあると思われる.