著者
河野 芳廣 田村 幸嗣 吉田 裕一郎 森山 裕一
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.D4P3171-D4P3171, 2010

【目的】効果的な呼吸理学療法実施のために、目的に応じた最適姿勢を見つけることは理学療法士の重要な役割である。今回、急性薬物中毒により、ICU内の人工呼吸器(SIMV(VC)+PS)での管理のもと、閉塞性無気肺を呈したケースに、呼吸理学療法を施行し、効率的に改善した経験を若干の考察を加え報告する。<BR>【説明と同意】今回の報告は当院の倫理委員会の承認を受けている。<BR>【症例と経過】急性薬物中毒による入院歴がある40歳代の女性。薬の多量服用後、誤嚥によりERに搬送。気管挿管とBF(気管支鏡検査)にて精査し誤嚥性肺炎あり、右上肺野、左肺野に無気肺認める。ICUへ転棟、体動あり、鎮静薬(ドルミカム、マスキュラックス共に5ml/h)下でSIMV+PSモードで呼吸管理SIMV12回に同調。上記の誤嚥性肺炎あり、ポジショニングと吸引施行継続する。鎮静剤減量(3ml/h)後、自発呼吸認めるも呼吸回数は12回、TV500ml/回で呼吸器に同調。肺エアー入りは全体的に弱く断続性ラ音聴診。BT38度台まで上昇。口腔内は粘調度の高い喀痰、気管チューブは水様性の喀痰吸引。吸引持続するも体動はない。2時間後に低換気で、気道内圧上昇アラーム(+)、両肺特に右肺より粗い断続性ラ音聴診、吸引も少量、開放吸引実施し中等量。体位は左側臥位にて30分ごと吸引療法実施。5時間後に鎮静剤off、開眼、うなずき(+)、BP170台、自発呼吸あり呼吸回数増える。TV500ml/回前後で安定も両肺から粗い断続性ラ音聴診、CXP上左肺の陰影悪化、無気肺おこしている状態、BF施行し右肺は中等量、左肺は分泌物なし。理学療法処方となる。実施施行後、胸写再検後、左陰影改善し、PSモード、サーモベント5L経過後、呼吸器離脱し抜管、酸素マスク5Lで咳嗽可能となり、翌日転院となる。<BR>【結果】Servoi(シーメンス社製)SIMV(VC)+PS、PEEP5cmH2O、設定にて管理中。バイタル変化:(SPO298→100%HR94→87bpm,BP135/87→149/79,RR12→22,BT38.3→38.7°C2時間おき計測、理学療法前→後)呼吸器モニター変化(MV/EtCO2 7.3/37→10.9/29,気道内圧23→16,VTi/VTe599/557→481/4232時間おき計測、理学療法前→後)意識レベル:E4VTM6→E4V5M6 <BR>理学療法:聴診にて左下肺は気管支音聴診(左上肺は断続性ラ音)。ポジショニング(右半腹臥位→右側臥位)で呼吸介助実施(30分間)。ヘッドアップ30度のポジショニングをとる(60分間)。その後、再度右側臥位で呼吸介助実施後、吸引(白黄色の粘稠痰中等量)。左下背野は肺胞音聴取、深呼吸の促がしも可能でリズム良好となる。<BR>【考察】人工呼吸器管理下(SIMV+PS)で、しかも自発呼吸が減弱しており、十分な咳嗽が行えない状況では、換気血流不均等是正やVAP防止のため、仰臥位の延長を可能な限り避けて、目的に合った体位を選択し、呼吸理学療法の技術を加え実施した。また、当ケースはBMI29のobesityでその体型の呼吸機能への影響も多いと考え、ウィ-ニング中で自発呼吸の促進を効率的にするため、仰臥位から坐位へという体位を選択して、呼吸理学療法を実施することは抜管にむけて効果的であった。<BR>【理学療法学研究としての意義】呼吸理学療法を実施するにあたり、チーム連携により体位は重要と考え、できる限り早期に、しかも目的に沿った呼吸理学療法を展開することで、二次的合併症の重度化を防止することや在院日数短縮ということを経験できた。<BR><BR>

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