- 著者
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西山 保弘
工藤 義弘
矢守 とも子
中園 貴志
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.2009, pp.F3O1206, 2010
【目的】<BR> 本研究では温浴と冷浴の異なる温度の落差が自律神経活動や体温に与える影響を検討したので報告する。<BR>【方法】<BR> 文書同意を得た健常男性5名(平均年齢23.8±4.91歳)に温浴41°Cと冷浴15°Cならびにその両方を交互に行う交代浴(15°C交代浴)、温浴41°Cと冷浴10°Cの交代浴(10°C交代浴)の4つの異なる部分浴を実施した。交代浴の方法は水関らの温浴4分,冷浴1分を4回繰り返し最後は温浴4分で終わる方法に準じた。温浴のみは計20分、冷浴のみは計10分浸漬した。安静馴化時から部分浴終了後120分間の自律神経機能、舌下温度、血圧、心拍数、動脈血酸素飽和度、手足の表面皮膚温を検出した。測定間隔は安静馴化後、施行直後、以下15分毎に120分までの計7回測定した。表面皮膚温度は、日本サーモロジー学会の測定基準に準じサーモグラフィTH3100(NEC三栄株式会社製)を使用した。自律神経機能検査は、心電計機能を有するActivetracer (GMS社製 AC301)を用いて被検者の心拍変動よりスペクトル解析(MemCalc法)を行いLF成分、HF成分を5分毎に平均値で計測した。統計処理は分散分析(one way ANOVA testと多重比較法)を用いた。<BR>【説明と同意】<BR>対象には、口頭で研究の目的と内容を説明し、十分な理解を得た上で承諾を文書で得た。<BR>【結果】<BR> 副交感神経活動指標であるHF成分は、両交代浴終了90分後に有意差をみとめた(P<0.05)。両交代浴の相違は15°C交代浴に著明にHF成分の低下を認めた(P<0.01)。温浴は80分後に有意差を認めた(P<0.05)。冷浴は終了後60分で変化が一定した(N.S.)。交感神経活動指標とされる各部分浴のLF/HF比は、冷浴と10°C交代浴に開始時と終了以後に有意差を認めた(P<0.01)。15°C交代浴は終了後60分から低下をみたが有意差は認めなかった。舌下温度は、両交代浴と温浴(P<0.01)、両交代浴と冷浴(P<0.01)、温浴と冷浴(N.S.)と両交代浴間(N.S.)となり交代浴に体温上昇を有意に認めた。表面皮膚温にこの同様の傾向をみた。最高血圧は、両交代浴と温浴(P<0.01)、両交代浴と冷浴(P<0.01)、温浴と冷浴(P<0.01)で相互に有意差を認め交代浴が高値を示した。<BR>【考察】<BR> 両交代浴と温浴ならびに冷浴の相異はイオンチャンネル(温度受容体)である。温浴は43°C以下で反応するTRPA4、冷浴は18°C以下で反応するTRPA1と8°C以下から28°Cで反応するTRPM8、両交代浴はこのすべてに活動電位が起こる。もう一つは温熱感覚と寒冷感覚の刺激の質の相違である。温水41°Cの温水はHF成分を抑制して、冷水15°Cと10°Cは、LF/HF比を抑制させていた。温度差の相違は15°C交代浴で26°C、10°C交代浴で31°Cである。温度幅より温浴刺激はHF成分を促進し、冷刺激はLF/HF比を抑制したことが結果より示唆された。さらに両交代浴の相異は寒冷刺激の温度差と侵害性有無の違いがあり結果にも影響していた。それは、効果発現に寄与するイオンチャンネル数の相異と刺激の質により変化すると考えられる。舌下体温の上昇については、一定温の温浴や冷浴より刺激性に優れる理由であり、温度落差が自律神経を刺激しHF、LF成分に変調変化を引き起こす根本理由となる。体温上昇からは、温度落差がある両交代浴が内因性発熱物質インターロイキン1を有意に発現させたことになり免疫応答含め影響を及ぼした結果と考えられる。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>異なる温度落差が自律神経活動に及ぼす影響は、温浴はHF成分を刺激し、冷浴はLF/HF比を刺激することが示唆された。水温落差はその量と質の関係をもって生体に影響する。<BR>