著者
泉田 信行
出版者
医療と社会
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.83-94, 1995

この論文において,今までに行われてきた医療過誤問題に関する研究に関する議論を行う。主にSimon(1981)とSimon(1982)の紹介をする。Simon(1981)は過失責任体系と無過失責任体系の比較分析を行っている。過失責任体系は被告を過失があるときに罰し,無過失責任体系は過失の有無に関わらず彼を罰する。彼女の結果は過失責任体系は無過失責任体系よりもパレートの意味において優越するということであった。<BR>一方,Simon(1982)は裁判システムが原告側に費用をかけるときに被告の製造物の品質がどうなるかを検討した。彼女の結論は非常に自然なものであって,比較的低い所得の個人からなる市場においては製品の品質が比較的低下するというものであった。この結果として裁判システムは誘因体系としては限界があり,それゆえ政府による直接的介入の効果を検討する必要があると思われる。<BR>最後の節において,これらの結果に関するコメントと将来の研究の方向性について論じている。

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