著者
鈴木 哲司
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2012

土地利用の改変は、放射環境や蒸発散量を変化させ、地域の水収支や熱収支そして生態系に対して影響を与える可能性がある。近年、半乾燥地域であるナミビア北中部地域では、従来は未利用であった季節性湿地帯(以下,オシャナ)の水資源を有効活用し稲作を導入しようとする動きがある。オシャナはその下流部に多くの野生動物の生息域となっているエトーシャ国立公園を有する。そのため、稲作導入によりオシャナの水収支に対しどのような影響が及ぼされるのかを明らかにすることは、地域の生態系保護の観点からも重要である。そこで、本研究は、ナミビア北中部地域に出現するオシャナでの稲作導入に伴う水収支への影響について、とくに蒸発散量の変化とその要因を明らかにすることを目的とし実施した。2008年9月よりナミビア北中部地域に位置するナミビア大学オゴンゴキャンパスにて、オシャナ内にイネ圃場(Rice field, RF)と自然植生圃場(Natural vegetation field, NVF)を、アップランドにアップランド圃場(Upland field, UF)を設営し、ボーエン比・熱収支法によって蒸発散量(<i>ET</i>)を測定した。<i>ET</i>は、すべての圃場において降雨(<i>P</i>)の開始と共に増加した。しかし、UFでは雨季終盤にかけて<i>P</i>の減少に伴い<i>ET</i>も減少する傾向が見られたが、NVFとRFについてはオシャナに水面が存在している期間は<i>P</i>の存在に依存せず比較的高い<i>ET</i>を維持していたことがわかった。NVFとRFの<i>ET</i>は2010年の乾季に顕著な差を示した。その乾季の間、RFの<i>ET</i>は約0.6 mm day<sup>-1</sup>を推移したが、NVFのそれは約0.9 mm day<sup>-1</sup>を推移した。RFではイネの収穫に伴いイネの地上部が刈り取られたことで地表面が現れアルベドが増加し、<i>Rn</i>が減少し、<i>ET</i>が減少したのではないかと考えられる。この結果は、イネを導入する際の栽培管理方法によって栽培期間の雨季だけでなく、乾季においても<i>ET</i>が影響を受ける可能性があることを示唆しており、より詳細に解析を進めていく必要があろう。今後は当地の<i>ET</i>を規定する要因について分析を進め、それらの因子に対する稲作導入の影響についてさらに検討していく。

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