- 著者
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田中 岳
- 出版者
- 水文・水資源学会
- 雑誌
- 水文・水資源学会研究発表会要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.26, 2013
二十四節季において一年で最も寒いとされる1月の20日,21日(大寒)頃に,近年になり度々,気温上昇と激しい降雨が観測されている.例えば,2002年1月21日に北海道の松前町,伊達市において記録された,最高気温8.2℃,日降水量12mm/day(松前町),最高気温5.0℃,日降水量114.5mm/day(伊達市)は記憶に新しい.同日,札幌市では,最高気温4.5℃,日降水量53.5mm/dayと,季節外れの大雨に伴い内水氾濫も発生している.積雪寒冷地でのこのような冬季の気温上昇や降雨現象は,融雪の急激な加速や,これに伴う河川氾濫,土砂崩壊など,災害に繋がりかねない現象である. これまで著者らは,積雪寒冷地の札幌を例として,特に,一年で最も寒い厳冬期に生じる降雨と気温変動について検討してきた.その結果,1889年から2011年(123年間)の厳冬期の日最高,日平均,日最低気温のそれぞれ最低値の変動と,降雨の発生頻度には,およそ20年から25年の周期性が確認されている. 本研究では,寒の入りと呼ばれ,寒さが始まる小寒の頃1月6日とその前後2日間,および大寒の頃1月21日とその前後2日間の各5日間を主な解析期間として,固定された一日(日付)の日最高,日平均,日最低気温データを,太陽の活動周期(黒点数の変化)による影響を取り除くために11年移動平均した後,それぞれを解析期間内(5日間)で平均した結果の年変動を考察した.その結果,各気温の年変動には大きな振動が含まれるが,各気温のピークに着目すると,1900年頃から概ね20年から25年の周期性がうかがえた.なお,このような傾向は,解析期間内のある一日の各気温データを11年移動平均した結果に対しても,同様に確認されている.また,処理後の各気温(日最高,日平均,日最低)を直線近似した際の長期的な変動傾向は,それぞれ1.45℃/100y,3.20℃/100y,5.42℃/100y(小寒の頃),1.12℃/100y,2.28℃/100y,4.23℃/100y(大寒の頃)と推定された. 今後は,厳冬期における低気圧の軌道の特性と,降雨・気温の変動特性とを対応させながら研究を進める予定である.