著者
本間 基寛
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.28, 2015

洪水からの避難等の防災対応の基本資料として洪水ハザードマップ(浸水予測図)があるが,従来型の浸水予測図では想定外力のシナリオが限定されているケースが多い.また,一つの地域において内水氾濫と外水氾濫の危険性がある場合,それぞれで浸水予測図が作成されるケースが多いが,浸水予測で想定されている降水量と実際の降水量を一目で比較する方法がなく,現在進行中の大雨が浸水予測図で示された被害になり得るのか,あるいはそれを上回るのかを判断する材料がないのが現状である.本研究では,淀川水系桂川流域の亀岡市街地周辺をケーススタディの対象地域とし,複数の降雨シナリオにもとづいた浸水予測図を作成する.そして,実際の大雨時に得られる降水量情報と連動させ,一般市民が降水量情報から容易に浸水状況が想起できるよう浸水予測図の開発を試みる. <br> 降雨の時空間スケールと降雨強度の特性を考慮し,降雨量(強度),降雨継続時間,降雨面積の様々なパターンを組み合わせた降水シナリオを作成した.1988年以降のレーダアメダス解析雨量データを使用したDepth-Area- Duration(DAD)解析を行い,降雨面積別,降雨継続時間別の確率降雨強度を推定し,降雨波形を作成した.設定した各降雨シナリオについて,浸水害に関連する防災気象情報(大雨・洪水警報,記録的短時間大雨情報,大雨特別警報)の基準や累積降水量の観測史上1位の記録雨量にもとづいてカテゴリー化を行った.浸水予測計算では,RRIモデルでは,山地流出・河道追跡と氾濫原解析を一体的に解析することができる降雨流出氾濫モデル(RRIモデル)を使用した.<br> 防災気象情報別に浸水予測結果を整理したところ,桂川の保津峡狭窄部より上流側では流域全体での長時間降雨(大雨警報相当,特別大雨警報相当)で浸水深が大きくなっている一方で,市街地の一部では比較的狭い範囲での短時間強雨(記録的短時間大雨情報相当)の方で浸水深が大きくなっているところもあった.このように,特性が異なる降雨シナリオのそれぞれで考え得る最大浸水深状況を把握することが可能な「防災気象情報対応型浸水予測図」を作成することで,地方自治体での避難勧告・指示の発表や地域住民の防災対応行動の判断を効果的に支援することが可能な浸水予測図になることが期待される.
著者
小林 勝 土屋 修一 平野 廣和 山田 正
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.10-10, 2005

近年,関東平野では夏季の夕方に集中豪雨が頻発する.著者ら1)はこれらの集中豪雨発生要因の解明を目的とし,関東平野各地において大気観測を行い,海風が水蒸気及びエアロゾル輸送に与える影響を明らかにしてきた.本稿は,その一環として2005年4月26日に関東平野西部で発生した降雨域の移動と雨域内の風の場,及び上空の風との関係について解析したものである.以下に得られた知見を示す.1)降雨域の瞬間降雨強度が強くなると,その移動速度も増加した.2)VVP法を用いて算出した降雨域内の風の場は,降雨域の移動方向とほぼ同方向であった.3)降雨域の高度は4km程度であり,高度1.5km付近において瞬間降雨強度が強かった.4)降雨域の通過とともに水平風速が約8m/s程度増加し,その後風向が北に変化した.
著者
土屋 雄大 柳沢 佳奈子 中村 未来 岡 泰道
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.95-95, 2010

東京都区部では合流式下水道の敷設率が高く,降水時に未処理汚水が公共水域に放流されている.その結果,公共水域の水質汚染は深刻化しており,それは,東京都の歴史的・文化的に貴重な史跡である江戸城の濠においても例外ではない.そのため,江戸城外苑濠(内濠)では水質改善を目指し,過去幾度も水質調査が行われてきた.しかしながら,江戸城外濠(以下,「外濠」)においては,未だに十分な対策が施されていないのが現状である.本研究では,こうした外濠の水環境改善を目指し,水質改善の適切な手法を見出すことを目的とする.ここではその端緒として,水質改善を進める上で基礎となる水質調査をおこなった。その結果では、外濠は富栄養化の特徴を有しているなどの考察が得られた。
著者
永瀬 禎
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2012

近年,日本ではゲリラ豪雨による被害が続出している.これはゲリラ豪雨の予測が難しいためである.そこで本研究ではゲリラ豪雨の際に高い確率で発生する雷に着目した.雷によって正確な位置でのゲリラ豪雨を予測できれば,被害が軽減されることが予想される.本研究では雷の探知装置に大阪大学所属の河崎善一郎教授のグループが発明したVHF波帯広帯域デジタル干渉計を用いる.また降雨観測レーダーには国土交通省が管理しているXバンドMPレーダーを使用する.探知された雷およびレーダーエコーをGrADSというソフトを用いて二次元の一つの図に表し,それらの間の相関を目視で確認して調査する.ただし,現時点では雷と豪雨の相関関係で未解明な点が多くいきなりゲリラ豪雨の予測をすることは困難と考えられるため,まずは豪雨と雷の相関関係の調査を研究の第一歩とする.そこからゲリラ豪雨の予測につながるようにしていく.本研究の結果として豪雨の発生地点の移動先に雷が発生していることがわかった.また雷雲は高層の風の影響を受けやすいこともわかった.ただし,雷が最初に発生した地点からほぼ移動しないなど未解明な点が多く見られたため正確な位置での豪雨の発生位置を予測することはまだ難しいと考えられる.今後は高さ方向も考慮に入れた三次元の図を作成し,そこからゲリラ豪雨と雷の新たな相関関係を模索していくことが必要であると考えられる.
著者
皆川 裕樹 増本 隆夫
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2012

気候変動の影響により豪雨規模の強大化が予想され、特に排水が困難な低平地域においては将来的に洪水や農地湛水等の被害リスク増加が懸念される。対応策の検討に向けて、これらの影響を定量的に評価することが重要である。一方、実際の豪雨被害の発生リスクやその度合いには、雨量とともに降雨波形の違いも密接に関係すると考えられる。そこで、解析の入力豪雨について様々な内部波形パターンを想定することで、被害の発生リスクの変化を定量的に評価した。本手順では、影響を評価するために構築した排水モデルに、模擬発生法によって作成した様々な降雨波形を持つ豪雨を入力することで影響を評価する。現在と将来の総雨量値は、これまでの成果より220 mm/3dおよび270 mm/3dと仮定した。それぞれの雨量値について、総雨量は一定で降雨波形の異なるデータを300パターン模擬発生させ、そのすべてを入力し解析を行った。得られる300個の解析結果のうち水位がある基準を超える割合を抽出し、その雨量に対する被害の発生リスクとして評価する。これを現在と将来で比較することにより、気候変動による影響を評価した。対象地区内の排水が集中する潟のピーク水位に注目すると、将来は現在と比較し大きな水位の出現頻度が増加しており、同地点で規定されている氾濫危険水位を超過する確率は現在で17%であるのに対し将来では32%と、15%のリスク増加となった。また、水稲の減収に関連する水田の湛水時間(30cm以上)を指標として農地被害の発生リスクを評価した。各水田の平均湛水時間を比較した結果、雨量の増加に対して脆弱な水田地区が推定でき、特に潟周辺や干拓により造成された低標高部の水田において湛水時間の増加が予測された。 このように、模擬発生法を活用することで様々な降雨パターンを想定でき、内部波形に注目した低平地排水への気候変動影響評価が可能となった。今後は、排水計画の見直しも視野に入れ、想定される対応策の検討とその効果を具体的に評価することが課題となる。
著者
沖 大幹 芳村 圭 キム ヒョンジュン ゴドク タン 瀬戸 心太 鼎 信次郎 沈 彦俊
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.20, pp.61-61, 2007

地下水、土壌水分、積雪水量などの陸水貯留量の変化は陸域水収支の特に季節変化を考える際には非常に重要である。最新のデータに基づき3種類の独立の手法で推定された大河川の総陸水貯留量の季節変化を相互比較し、それらの間の対応を検討した結果を報告する。
著者
泉 宏和 風間 聡 沢本 正樹
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.67, 2005

日本全域における積雪水量,積雪深,全層積雪密度分布を日単位で推定した.使用データは気象データ,衛星データ,標高データである.積雪水量の推定には降雪モデルと融雪モデルから構成されるSWEモデルを用いた.毎日の降雪量の推定はAMeDASデータを用い,重みつき距離平均法により補間した.また,融雪量の推定はdegree-day法を用い,融雪係数を決定することで行った.融雪係数の決定には,JAIDAS画像から積雪の有無を抽出した積雪マップを用いた.さらに,積雪深の推定には雪自身の重さによる圧密を考慮したモデルを用いた.その結果,積雪が平年並みの年における積雪深の推定精度は良かったが,多雪年における積雪深の推定精度に課題が残った.そして,AMeDASの日最深積雪データとの検証から,日本全域という広域における積雪特性を把握し,降雪_-_融雪過程を概ね推定することができたといえる.
著者
西脇 隆太
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2012

2008年7月の兵庫県都賀川での災害を皮切りに,近年我が国ではゲリラ豪雨と呼ばれる局地的大雨が多く報告され,これによる災害が問題となっている.このゲリラ豪雨は時間スケールは1時間未満,空間スケールは約数kmと時間・空間共にスケールが非常に小さな現象なので,災害の軽減には1分1秒でも早い情報提供が重要になってくる.そこでこのような災害を監視のするために国土交通省は2010年にXバンドMPレーダ網を導入した.XバンドMPレーダは従来から行われてきた低仰角観測だけでなく立体観測も行っており,この観測結果を用いて地上で豪雨になるよりも早い時刻での降水セル(タマゴ)の探知及び3次元的な追跡が可能となった.しかし,探知したタマゴ全てが発達するわけではないので,探知したタマゴが豪雨をもたらす危険性があるかという判断を早期に行う必要がある.そこで本研究は,早期に探知したタマゴが発達するか否かをできる限り早期に判断することを目的とし,その危険性予知の指標として積乱雲の気流による渦に着目する.着目理由としては,積乱雲の形成に伴う上昇気流が存在すると水平渦が立ち上がり,積乱雲内に鉛直方向に軸を持つ鉛直渦が形成され,空気塊は回転しながら上昇していく.積乱雲の発達は断熱過程で,渦位は保存されるので,上昇気流によって引き伸ばされた空気塊は時に大きな渦度を生み出し,それによって周囲の水蒸気が積乱雲内に取り込まれ凝結する.そしてその時の熱エネルギーが上昇流の加速に大きく寄与している.以上のことから,渦度が大きいほど積乱雲は発達すると考えることができる.また,渦解析では,XバンドMPレーダから得られるドップラー風速を用いて降水セル内の大小2つの渦の渦度を推定した.1つは2km程度の直径を持つメソγ渦,もう一つは局所的な渦であるミクロ渦である.これら2つの渦とタマゴの危険性との関連を定性的に検討したところ,メソγ渦はタマゴの探知時刻から16分ほど遅れるもののメソγ渦が存在すれば必ず地上で豪雨がもたらされていることから確実な指標として有効性が示唆された.一方ミクロ渦はタマゴの探知時刻から約6分後にその存在が確認され,早期の予知としての有効性が示唆された.また,今後は解析事例を増やしさらに検討していくとともに,タマゴの早期探知,自動追跡との融合による一連のゲリラ豪雨予報システムの構築に取り組んでいく.
著者
瓜田 真司 齋藤 仁 中山 大地 泉 岳樹 松山 洋
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.114-114, 2010

本研究では、気象庁が開発した土壌雨量指数を用いて、日本全域を対象に、2001-2008年の土砂災害発生危険性を明らかにした。2001-2008年の土砂災害発生危険性には地域差があり、1年間に何度も危険性を高める雨が降った箇所もあれば、この8年間に一度も土砂災害の危険性が高まらなかった箇所もあった。<BR> 牛山(2005)では、暖候期降水量から推定される極値降水量が観測されていない地域を豪雨空白域として抽出している。その豪雨空白域における土砂災害発生危険性を調べたところ、新潟・山形県境付近、富山県中央部、近畿地方中部と種子島南部は豪雨空白域であり、対象期間(2001-2008年)の土砂災害発生危険性も高まっていなかった。すなわち、これらの箇所では、今後の大雨の際に土砂災害発生危険性が高まる可能性が示唆される。
著者
新井田 拓也 脇山 義史 高田 兵衛 谷口 圭輔 藤田 一輝 コノプリョフ アレクセイ
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
pp.360, 2021 (Released:2021-12-30)

本研究では,河川における137Cs動態および海域への影響を明らかにすることを目的として、福島県浜通り地域の3河川の下流域において出水時の採水を行い,懸濁態・溶存態137Csの濃度変化を記述するとともに,懸濁物からの137Cs溶脱を含めて海域への137Cs移行量を求めた.新田川原町地点,請戸川幾世橋地点,高瀬川高瀬地点において、2019年9月9~10日,2020年7月14~22日,2020年7月28~30日の出水イベント時に採水を行い、懸濁態・溶存態137Csの濃度を測定し、懸濁態137Cs流出量・溶存態137Cs流出量および懸濁物からの137Cs溶脱量を推定し,海域への137Cs移行量を求めた.懸濁物の137Cs濃度はいずれの河川においても有意な正の相関(p <0.05)を示し,溶存態137Cs濃度は新田川と請戸川で有意な正の相関(p <0.05) を示した.137Cs流出量は新田川で6.6~24 GBq,請戸川で1.9~8.8 GBq,高瀬川で2.8~13 GBqであった。このうち,懸濁態137Csからの溶脱量は0.19~2.8 GBqであり,溶存態として流出する137Csの量の0.8~15倍の値となった.海域への移行を考える上でも,懸濁態137Csの動態の理解が重要であることがわかった.
著者
花崎 直太
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2012

地球温暖化による水資源への影響を地球規模で予測し、適切な適応策を立てることは重要である。これに関して、これまでに多くの報告書や論文が出版されてきた。しかし、先行研究には3つの課題がある。第1に、先行研究の多くが年単位で水資源の評価をしていることである。第2に、先行研究の多くが気候と人口以外の要素を現状で固定して評価を行っていることである。第3に、先行研究はNakicenovic and Swart (2000)による社会経済・排出シナリオ(以下SRES)およびそれに基づく気候シナリオCMIP3を利用していたことである。現在、SRESに代わる新しいシナリオRCPが整備されつつある。本報告では、これらの問題に対応した新しい全球水ストレス評価の検討結果を報告する。
著者
田中 岳
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.26, 2013

二十四節季において一年で最も寒いとされる1月の20日,21日(大寒)頃に,近年になり度々,気温上昇と激しい降雨が観測されている.例えば,2002年1月21日に北海道の松前町,伊達市において記録された,最高気温8.2℃,日降水量12mm/day(松前町),最高気温5.0℃,日降水量114.5mm/day(伊達市)は記憶に新しい.同日,札幌市では,最高気温4.5℃,日降水量53.5mm/dayと,季節外れの大雨に伴い内水氾濫も発生している.積雪寒冷地でのこのような冬季の気温上昇や降雨現象は,融雪の急激な加速や,これに伴う河川氾濫,土砂崩壊など,災害に繋がりかねない現象である. これまで著者らは,積雪寒冷地の札幌を例として,特に,一年で最も寒い厳冬期に生じる降雨と気温変動について検討してきた.その結果,1889年から2011年(123年間)の厳冬期の日最高,日平均,日最低気温のそれぞれ最低値の変動と,降雨の発生頻度には,およそ20年から25年の周期性が確認されている. 本研究では,寒の入りと呼ばれ,寒さが始まる小寒の頃1月6日とその前後2日間,および大寒の頃1月21日とその前後2日間の各5日間を主な解析期間として,固定された一日(日付)の日最高,日平均,日最低気温データを,太陽の活動周期(黒点数の変化)による影響を取り除くために11年移動平均した後,それぞれを解析期間内(5日間)で平均した結果の年変動を考察した.その結果,各気温の年変動には大きな振動が含まれるが,各気温のピークに着目すると,1900年頃から概ね20年から25年の周期性がうかがえた.なお,このような傾向は,解析期間内のある一日の各気温データを11年移動平均した結果に対しても,同様に確認されている.また,処理後の各気温(日最高,日平均,日最低)を直線近似した際の長期的な変動傾向は,それぞれ1.45℃/100y,3.20℃/100y,5.42℃/100y(小寒の頃),1.12℃/100y,2.28℃/100y,4.23℃/100y(大寒の頃)と推定された. 今後は,厳冬期における低気圧の軌道の特性と,降雨・気温の変動特性とを対応させながら研究を進める予定である.
著者
長谷川 健太 大石 哲 佐野 哲也
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.108, 2010

本研究では山梨大学の二重偏波ドップラーレーダーを用いて,短時間の定量的降雨予測における精度不足の要因の一つとされる降雨の落下過程の解明について考察する.レーダーエコーの強い部分における鉛直からの傾き(以下では仰角と称する)に着目し,各高度の雨滴の落下速度とドップラー速度を用いて仰角を表現するモデルを開発した.2009年8月2日の事例を用いて,モデルの結果と観測したエコー画像を比較したところ,エコーの仰角の時間変化をよく表現することができた.この結果から,強エコーの傾きは雨域の移動速度に対する各高度の相対的な速度差から形成されていることが示唆された.
著者
畔柳 剛 甲山 治 佐山 敬洋 馬籠 純 松尾 奈緒子 芳村 圭
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.19, pp.149, 2006

広範かつ複雑に絡み合う現実社会の問題を解決するには,分野を越えた知識・経験が必要であるが,専門化された研究体制の中でそれを得るのは難しい.そこで本グループは異分野交流の場を提供し,枠にとらわれない問題解決へのアプローチができる資質を得ること,社会への還元をより意識した研究活動に取り組む姿勢を共有すること等を目指して2003年に結成された(通称カンピオーネ).時間的・社会的制約が少ない若手の特権を生かし,失敗を恐れない実験的な活動を積極的に行うことで,現実社会にとって本当に必要とされている新たな学問分野の開拓を試みる.本稿では2005年度に行った活動概要を報告する.
著者
佐山 敬洋 田中 茂信 寶 馨
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2016

平成27年9月関東・東北豪雨を対象に鬼怒川上流域における洪水流出解析を行った。鬼怒川上流に位置する湯西川ダム流域では、140 mmの前期降雨が降った後、約20 mm/hの降雨が10時間以上降り続いた。102 km<sup>2</sup>のダム流域に10時間以上の降雨が降り続くことによって、降雨流出現象は概ね定常状態に達していることが想定された。実際に観測されたダム流入量は、約6時間にわたって流量がほぼ一定となっていた。ただし、降雨強度20 mm/hに対してその期間の観測流入量は5 mm/h以上小さくなっていた。この現象を分布型モデルで再現した結果、土壌から基岩への浸透など、主要な流出経路から損失を考慮する必要があることが分かった。さらに流出の時空間起源をモデル分析した結果、定常状態とみられる期間中に流域の遠方に降った雨水の流出成分は、同期間中にも増加していることが確認され、理想化した斜面からの定常状態とは異なっていることが分かった。
著者
田中丸 治哉 エラミン カリド アリ エルタイブ 多田 明夫 鳥井 清司
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2017

洪水灌漑(spate irrigation)は,季節河川における雨季の洪水を堰と水路によって圃場に導水する伝統的な灌漑方法である.本報告では,スーダン東部に位置するガッシュデルタの洪水灌漑地区を研究対象としている.まず,衛星リモートセンシングに基づくエネルギー収支法(SEBAL)を適用し,洪水灌漑圃場における蒸発散量の空間分布を推定した.その結果,灌漑圃場内で蒸発散量が大きく変動することが示された.次いで,DEMによる地形解析によって,地表の凹凸の程度を表す地形指標が計算された.灌漑期間中の総蒸発散量の標準偏差と地形指標の関係を調べたところ,地表面の凹凸が激しい圃場ほど蒸発散量の変動が大きく,水供給の不均一が生じやすいことが示された.
著者
藤原 洋一 田中丸 治哉 多田 明夫 アダム バシール エラミン カリド
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2018

スーダン・ガッシュデルタ洪水灌漑地区を対象として、Landsat8画像によって年毎の土地利用(耕作、非耕作、潅木、水体、湿地)を推定した。さらに、作付けパターンの空間的および灌漑ブロック毎の特徴、休閑ローテーションの空間的および灌漑ブロック毎の特徴を調べた。その結果、植生指標にはNDVI、水指標にはNDWIgs1の時系列データを用いることによって、土地利用分類が良好に行えた(正解率94%)。耕作面積は一定ではなく年によって大きく変動し、耕作地面積の変動係数は最上流灌漑ブロック(カッサラ)で最も小さく、下流灌漑ブロックで大きくなる傾向が見られた。休閑ローテーションのパターンを分析したところ、上流の2灌漑ブロック(カッサラ、メカリ)は耕作と休閑を交互に行う2年ローテーションの割合が多いことが分かった。一方、下流の2灌漑ブロック(メタテイブ、ハダリヤ)では、2年間の休閑を行う3年ローテーションが主流であることが示された。
著者
谷 誠
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2014

降雨流出応答の物理的根拠について、なぜ有効降雨が観測降雨から分離されるのか、不均質性が大きいのに降雨流出波形変換がなぜ簡単な準定常過程を通して再現できるのか、に焦点をあてて考察した。その結果、両方の課題に対して不飽和土壌の役割が重要であること、簡単な再現結果は、土壌層が波形変換のクラスターを構成するためだということが推定された。
著者
呉 修一 地引 泰人 サッパシー アナワット 有働 恵子 真野 明
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2014

2013年台風30号(ハイエン)はフィリピンレイテ島やサマール島に甚大な被害をおよぼした.本台風は上陸時の中心気圧895hPa,瞬間最大風速100m/s以上と史上最大規模のスケールであり,高潮,高波や強風を伴い7000人を超える死者・行方不明者が生じた(呉ら, 2014).特にレイテ島北東沿岸部に位置するタクロバン市,パロ町,タナウアン町(図-1)に死者・行方不明者が集中しており,サンペドロ湾奥に発生した高潮の規模の大きさやレイテ島沿岸部地域の脆弱性を示唆するものである.<br>&nbsp;著者らは,台風30号ハイエンに伴い甚大な被害が発生したフィリピンレイテ島北東部を中心に,高潮の浸水状況や避難実施時の問題点などを明らかにするための調査を,2014年1月から3月にかけて複数回実施した.調査より本台風の外力の強さと被災地沿岸部の脆弱性,多くの社会的問題が明らかとなった.<br>&nbsp;本報告では,台風ハイエンの特徴や水文特性および現地調査より明らかとなった被害拡大要因および様々な問題点に関して報告する.
著者
猪股 亮介 小森 大輔 風間 聡 峠 嘉哉
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2018

都市が気象に及ぼす影響の1つとして降水の変化が挙げられており,都市部において,周辺地域と降水現象が異なる事が指摘されてきた.藤部らを初めとした既往研究において,統計的なアプローチから都市部における降水現象の解析が行われてきたが,それらは日本国内において約1/17km(個/km2)に整備されたアメダス定点観測所において観測されたデータを使用したため,空間的な代表性に課題が残る.そこで本研究では,大阪市を対象に,雨量レーダによる面的観測とアメダス定点観測を合成した,23年間(1993~2015年)という長期間のレーダアメダス解析降水量を用い,都市部と周辺地域における降水の空間偏差とその経年変化を統計的なアプローチから明らかにする事を研究目的とした.本研究における対象地域を日本三大都市圏の1つである大阪府大阪市の都市部とその周辺地域とした.また本研究における降水解析に用いる降水指標として,降水量(1時間降水量(mm)),降水頻度(1時間降水量≧1mmの時間数),本降りの雨の頻度(1時間降水量≧5mmの時間数)の3つを定義した.その結果次の様な知見が得られた.1)都市部の西部において,降水量・降水頻度・本降りの雨の頻度が,特に正午~午後の時間帯において周辺地域より大きかった.2)都市部の北西部において降水量・降水頻度が周辺地域と比較して大きくなる傾向が経年的に強化された.3) 都市部の南西部において降水量・降水頻度が周辺地域と比較して大きかった傾向が,経年的に弱められた.都市の西側に湾が存在する地域において,偏西風の風上側である西側の降水量・降水頻度・本降りの雨の頻度が大きくなる傾向は本研究において得られた新たな知見である.また,都市の北西部において午後の時間帯に降水頻度の空間偏差が大きくなる傾向が存在することは,本研究で空間代表性の高いレーダアメダス解析降水量データを用いる事で明らかになった新しい知見である.また,都市部の異なる部分において周辺地域よりも降水量が大きい傾向,小さい傾向が経年的に拡大される事は本研究において都市部を5kmの解像度で解析した事により得られた新たな知見である.この様に,本研究における解析で都市が気象に及ぼす影響が都市内部において異なる事が明らかになった.