著者
三浦 保範
出版者
日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.138, 2004

1. はじめに:中間型斜長石は離溶ラメラ組織と光の干渉色を示す (Miura et al., 1975)。その斜長石ラメラ組織の形成は、高温マグマからの均一溶液からの固体状態の離溶反応(スピノーダル分解)で理解されている。今回は、衝突ガラスからの形成を解明するのが目的である。2. 形成の問題点:下記の問題点がある。a)地球での高温マグマに関係して形成された古期岩石でラメラ組織を示す斜長石鉱物の産出が限られる、b)マグマからの直接固体晶出であるが不均質な組織を保持する、c)鉄の鉱物が広く組織内に分布する、d)月は高温マグマが形成初期に関与したが衝突で形成された古い月の試料にはラブラドライト斜長石が形成されない、e)火星起源の隕石からは衝突ガラス(マスケリナイト)が発見される。これらの問題点を、統一的に解明してみる。3. 地球上の試料の産出場所の特徴:地球上でイリデッセンスを示すラブラドライト斜長石は、一定の古期岩石の分布する地域(カナダ、マダガスカル、フィンランド、米国、ロシアなど)に限られて産出し、20億から30億年前の古い岩石から産出しているのが特徴である。4.月・火星試料の特徴:アポロ月面・月隕石試料は中間型斜長石組成の鉱物が形成されていない。火星には、火星起源隕石中にマスケリナイト(中間型斜長石鉱物)という衝突で不均質にガラス化している斜長石があるが、ラメラ構造は火星の隕石からは発見されていない。5.衝突後高温化形成の解釈:これら問題点を全て説明する考えとして、ラメラ組織を持つラブラドライト斜長石が、衝突ガラス形成の後、地下での高温マグマ加熱結晶化から形成したと考える。その証拠として、中間型斜長石に不均質な組織が残り、鉄などの鉱物が再結晶して多く含まれており、また、古期の大陸の分裂割れ目に相当する場所ラメラ組織を持つラブラドライト斜長石が多く産出していることなどが挙げられる。6.まとめ:次のようにまとめられる。地球惑星が形成された後、十数億年から二十数億年の間に中間型斜長石組成の衝突破砕ガラス形成記録がマグマ加熱で消失して固体晶出後ラメラ組織が形成されたと考えられる。ただし、火星などに、破砕斜長石が高温状態での持続できる場所周辺があれば、中間型斜長石鉱物ラメラ組織が形成されている可能性がある。Keywords: Intermediate plagioclases, Iridescence, Lamellar texture, Impact glass, Martian plagioclases.Corresponding author: Yasunori Miura (Inst. Earth Sci., Fac. Sci., Yamaguchi Univ.; E-mail:yasmiura@yamaguchi-u.ac.jp)

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