- 著者
-
織田 浩嗣
- 出版者
- 日本酪農科学会
- 雑誌
- ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
- 巻号頁・発行日
- vol.62, no.3, pp.105-109, 2013
ラクトフェリン(LF)は多くの哺乳類の乳に含まれ,ヒトの乳に最も多く含まれている(hLF)。hLFは,ヒトの初乳に5-7g/L,常乳に1-3g/L含まれ,これはヒトの乳に含まれるタンパク質の約五分の一に相当し,乳児にとって感染防御など重要な働きをしていると考えられている。また,hLFは涙や唾液,鼻汁などの外分泌液,血漿,好中球の二次顆粒にも含まれ,乳児以外にとっても重要な働きをしていると考えられている。LFは牛乳中にも存在するが(bLF),その量はヒトの乳に含まれる量の約十分の一と少なく,加熱殺菌により容易に変性する。そのため,非加熱の乳原料から高純度のbLFを抽出する技術や,加熱変性を回避する殺菌技術が開発され,現在では育児用粉乳やサプリメント,一般食品などに幅広く使用されている。消費者庁が実施した食品の機能性評価モデル事業では,bLFの「感染防御」,「免疫調節機能の向上」が,A~Fの6段階でB評価「機能性について肯定的な根拠がある」との評価を受けている。また,hLF,bLFを胃の消化酵素ペプシンで分解すると抗菌作用が高まることが知られ,活性ペプチドとしてラクトフェリシン(LFcin H,LFcin B)が単離されている。日本ではbLFペプシン分解物が低アレルゲン育児用粉乳や低出生体重児用育児用粉乳に使用されている。著者らは,bLF分解物の活用拡大,bLF配合食品の感染防御への活用を目指し研究を行っている。本稿では,bLFペプシン分解物のビフィズス菌増殖促進作用に関する研究結果とbLF摂取によるヒトでのアンケート調査結果を2つ紹介する。