著者
平田 昌弘 辻 貴志 内田 健治 元島 英雅 木村 純子
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.191-199, 2015

本稿は,1)フィリピンでの乳・乳製品の利用のされ方,2)フィリピンでの乳・乳製品の利用されるタイミングを把握した上で,3)非乳文化圏への乳文化の浸透・変遷の五形態を検証することを目的に,フィリピンのセブ州マクタン島コルドヴァ町の漁民を対象に観察とインタビューをおこなった。乳・乳製品は,中心的な食事となる魚料理には一切利用されず,朝食や間食にパンやビスケットなどと共に,主に副食的に摂取されていた。非乳文化圏と位置づけられるフィリピンに,乳文化はスペイン,日本,アメリカによる植民地支配の最中に主に伝播した。乳・乳製品は,特にスペインによる植民地統治と自然環境の影響を大きく受け,甘すぎるくらいに加工されるようになり,魚の利用を基本とした主食的な食事には浸透せず,朝食や間食として「補助栄養食」「嗜好品」「米との融合」「西欧型の食文化」の四つの形態で浸透・変遷したとまとめることができる。このような乳文化の非乳文化圏への浸透・変遷の当初の立ち位置は,フィリピンだけでなく,インドネシアなど東南アジア,そして,日本においても確認され,非乳文化圏に類似して確認される現象となっている。こうした特徴が,非乳文化圏に伝播した乳文化の浸透・変遷の当初の型なのである。
著者
川上 浩 朴 眩泰 朴 晟鎭 青栁 幸利
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.145-153, 2014 (Released:2014-12-21)
参考文献数
29
被引用文献数
1

牛乳・乳製品の摂取が高齢者の健康に及ぼす影響については,これまで骨粗鬆症や高血圧等の生活習慣病の予防の観点から多くの研究がなされてきた。また,サルコペニア予防を目的としたレジスタンス運動時の筋肉の維持向上において,乳清タンパク質等の摂取が有用であることも報告されている。しかしながら,通常の日常生活における身体活動と,牛乳・乳製品の摂取との関係を中心に解析した研究報告はほとんどみられない。そこで本研究では,健康な高齢者における牛乳の摂取と,日常生活での身体活動量,歩行速度,および体組成等との関連について調べ,牛乳摂取の有用性を明らかにすることを目的とした。 認知症や寝たきり等の症状を有さない65歳以上の高齢者179名(男性88名,女性91名)を対象に,食物摂取頻度調査票を用いて栄養状態および牛乳摂取量を把握した。身体活動については,一軸加速度センサー内蔵の身体活動量計を用いて,歩数,身体活動強度,および身体活動時間を毎日24時間計測した。歩行速度(平均値・最大値)は,全長11 m の水平歩行路上の移動時間から算出した。筋量,脂肪量,および水分量等は,マルチ周波数体組成計で全身および部位別に測定した。骨強度は,超音波骨評価装置で右踵骨を測定した変数から,音響的骨評価値を算出した。全対象者を低牛乳摂取グループ(200 mL 未満/日)85名,および高牛乳摂取グループ(200 mL 以上/日)94名に分けた。日常生活における身体活動量,歩行速度,筋量,骨強度,および血清アルブミン濃度に統計学的な有意差(p<0.05)がみられ,高牛乳摂取グループで高値を示した。特に,筋量は男性において,骨強度は女性において牛乳摂取量との相関が高かった。また,牛乳摂取量と身体活動の相乗効果を判定するために,多要因ロジスティック回帰分析でサルコペニア発症相対危険度のオッズ比を算出したところ,「低牛乳摂取+低身体活動」グループは,他の 3 グループ(「高牛乳摂取+高身体活動」「高牛乳摂取+低身体活動」「低牛乳摂取+高身体活動」)に比べ,危険度が有意に高かった。以上の結果から,高齢者における牛乳の摂取は,身体活動や体組成の向上に有用である可能性が示唆された。
著者
仁木 良哉
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.111-120, 2002 (Released:2015-10-31)
参考文献数
60
被引用文献数
1
著者
ネウパネ ダナパテイ 佐々木 茂文 金 辰保 石下 真人 鮫島 邦彦
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.33-39, 2003 (Released:2014-03-15)
参考文献数
24

海抜5200 m 付近の高地に棲息している純系のヤクのミルクから作ったバターの脂肪酸組成とビタミン A およびトコフェロール含量を GLC(気-液ガスクロマトグラフィー)と HPLC(高速液体クロマトグラフィー)で測定し,ウシバターのそれらと比較した。ヤクバターのコレステロール含量と脂質酸化速度は,それぞれ GLC と重量測定法によって判定した。ヤクバターは,短鎖の飽和脂肪酸を多く含んでいるので強い匂いを有している。脂質中の構成脂肪酸は多い順に16:0, 18:1, 14:0, 18:0, 4:0, 8:0 であった。また,レチノール量は脂肪100 g 中に402.3 μg であった。ウシバターの γ-トコフェロール量は,ヤクバターよりも多く,脂肪100 g 中に440 μg であるが,α-トコフェロール量は,ウシバター(1.9 mg/100 g 脂肪)よりもヤクバター(2.6 mg/100 g 脂肪)の方が多かった。β と δ-トコフェロールはヤクおよびウシバター中にほとんど検出できなかった。ヤクバター中のコレステロール量(325 mg/100 g 脂肪)は,ウシのそれ(223 mg/100 g 脂肪)よりも多かった。ウシバター脂質の酸化は,ヤクのそれに対して速くしかもその度合いは高い。極性脂質含量はウシに比べてヤクバターの方が多かった。
著者
吉田 智 鈴木 靖志 寺本 寛明 板橋 武史 笹津 備尚 輪千 浩史
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.24-29, 2019 (Released:2019-04-26)
参考文献数
27

皮膚は外界からの様々なストレスから身を守るため,損傷時には迅速な回復が要求される。この修復反応を創傷治癒と呼び,多くの過程により成り立っている。その中でも表皮細胞,線維芽細胞の増殖と創部への遊走は創部面積の縮小や組織再構築など,創傷治癒において非常に重要である。 そこで,創傷治癒過程において重要な役割を果たす表皮細胞に対するラクトフェリン(Lf)の作用を検討した。また,基底膜の分解や血管新生を促して創傷治癒に関与するマトリックスプロテアーゼ(MMP)-2およびMMP-9の遺伝子発現と酵素活性に及ぼすLfの影響について解析を行った。その結果,Lfは表皮細胞の細胞増殖や遊走を促進し,MMP-9の活性を増強することから,これらの作用を通じて創傷治癒を促進することが示唆された。
著者
今井 哲哉
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.227-235, 2007 (Released:2014-03-15)
参考文献数
86
被引用文献数
1

Whey protein, a by-product of cheese-making, is recognized to enhance not only nutritional value but also various physical properties in many food products. Whey protein consists of several different proteins, including beta-lactoglobulin, alpha-lactalbumin, immunoglobuin, bovine serum albumin, lactoferrin, lactoperoxidase and glycomacropeptide. As a result of new separation technologies, individual whey proteins can be isolated from whey. Findings from in vitro, in vivo and limited human studies suggest health function of individual whey proteins. This paper reviews fractionation, utilization and health benefit of individual whey proteins.
著者
三瀬 勝利
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.217-226, 2006 (Released:2014-03-15)
参考文献数
11

Anxiety about bioterrorism attack using contaminated foods and drinks has increased in recent years. The attack is classified into two categories on the basis of differences in the targets, i. e., direct attack on human being and indirect attack on the economy. The characteristics of microorganisms and toxins which will be used for the attack are summarized and reviewed, together with medical products to minimize the effects of the biological weapons. Among more than 100 candidates for the weapons, Bacillus anthracis, a spore-forming bacterium , should be most dangerous, because of the high toxicity and extreme stability. The bacterium had been already used for the bioterrorism attacks on postal clerks, journalists, and others in USA in 2001. Botulinum toxins, as well as enterohaemorrhagic Escherichia coli, shigatoxins, and Francisella turarensis, are also important candidates for the attack on foods and drinks. Several difficulties in protection of the bioterrorism attack in Japan are briefly discussed in this paper.
著者
平田 昌弘
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.205-215, 2012 (Released:2014-03-15)
参考文献数
69
被引用文献数
1 1
著者
渡部 恂子 池田 なぎさ 水谷 潤 佐藤 直子 金 世琳 平井 智子 有賀 秀子
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.1-8, 1998 (Released:2015-10-31)
参考文献数
26
被引用文献数
1

中国内蒙古草原地帯における伝統的発酵乳エードスンスー, アイラグおよびチェゲーのの3種類から計10試料を採取し, 理化学性状の分析と微生物の分離同定を行った。また, 製法が類似しているカルピス酸乳との関連性を検討した。内蒙古発酵乳10試料ならびにカルピス酸乳のすべてから乳酸菌と酵母が分離された。理化学性状の分析結果から, エードスンスーは発酵が緩慢であるため, 乳酸やアルコールの生成量が少なく, アイラグは製法や原料の違いで成分組成や微生物叢に差異が見られた。チェゲーは原料乳が馬乳であるため成分組成は他の発酵乳と異なったが, カルピス酸乳の主要菌種であるLactobacillus helveticusが優勢に分離された。アイラグの数試料からはL. helveticusのほかヘテロ発酵乳酸桿菌が分離され, カルピス酸乳との類似性が示唆された。また, アイラグ, チェゲーからケフィール粒の構成菌であるLactobacillus kefirgranumが多数検出された。
著者
益田 時光 善藤 威史 園元 謙二
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.59-65, 2010 (Released:2014-03-15)
参考文献数
37
被引用文献数
1
著者
河村 あゆみ 田中 正之 牛嶋 隼也 中井 壱 峯口 祐里 福田 健二 浦島 匡
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.44-48, 2019 (Released:2019-04-26)
参考文献数
10

京都市動物園で出産した飼育したキリン個体より,各種の泌乳時期の乳の回収をおこない,成分組成を分析した。分娩後55日の常乳における成分組成は以下のとおりであった;1.8%炭水化物,8.7%脂質,7.0%タンパク質,1.1%灰分。これらの値は牛乳の成分組成と比べたとき,脂質とタンパク質の濃度は高い一方で,炭水化物の濃度は低かった。乳の固形分濃度は分娩後66日で急速に低下していたが,これはキリンの固有の特徴と考えられた。この固形分濃度低下は,この時期に仔が母乳を摂取しながら固形食(カシ,ネズミモチなどの葉)の同時摂取を開始することとの関連が示唆された。これらは,キリンの仔に代用乳を摂取させなければならないケースにおいて,貴重な情報になるであろう。
著者
山田 正子 中澤 勇二 細野 明義
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.29-36, 2000
被引用文献数
1

ラットのTrp-P-1排泄に対するカマンベールチーズの抗変異原性について検索を行った。凍結乾燥後粉末にしたカマンベールチーズを10%または30%(w/w)の割合で、基礎飼料に混合し, Trp-P-11 mgを水溶液にして飼料に染み込ませたものをラットに与えた。排出された糞および尿は, ブルーレイヨン吸着法により処理を行い, 得られた抽出液についてHPLCでTrp-P-1の定量および<i>Salmonella typhimurium</i> TA98を指示菌とし変異原性試験を行った。その結果, 尿については, チーズ30%投与で有意にTrp-P-1量の減少が認められた (P<0.05)。糞では, チーズ投与量の増加により, Trp-P-1の検出量が減少した。変異原性試験を行った結果においても, 30%チーズ投与により尿および糞の変異原性が減少し, 特に尿の変異原性は有意に低下した (P<0.05)。これらのことから, カマンベールチーズにはTrp-P-1の変異原性の減弱効果があることが明らかとなり, カマンベールチーズの摂取がヒトの人体に対する新たな保健効果があることが示唆された。
著者
山住 弘 若井 宗人 松野 一郎
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.209-218, 2008 (Released:2014-03-15)
参考文献数
18

Milk containers have passed through various changes, since milk was released in Japan in the early Meiji era. Three kinds of containers are available such as glass, paperboard and plastic types, although the plastic container is not popular commercially. Various technologies have been invented for these containers to improve functions in response to their characteristics. Milk cartons have been improved on demand of universal design, such as discrimination with notch and easy peeling at the top of the carton. Additionally devices to promote recycling of paperboard are introduced for the protection of environment. In some cases the shield printing technology is used to protect from the light-induced flavor deterioration. Ministerial ordinance on milk and milk products was revised in October 2007; the use of PET container to milk was authorized. The deregulation by the ministerial ordinance revision is an opportunity for the milk container diversification, although there still have some problems to be solved with respect to container itself and investment cost of facilities in order to commercialize large-volume PET milk containers.
著者
平田 昌弘
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.1-14, 2009 (Released:2014-03-15)
参考文献数
13

To understand milk processing systems in Caucasia and analyze their history, nine households of agro-pastoralists were surveyed in Georgia and Armenia. The techniques of clotting agent using series, fermented milk processing series and cream separating series ware broadly shared among agro-pastoralists over Georgia and Armenia. The characteristics of milk processing systems in Caucasia are 1) the milk processing techniques (clotting agent using series and fermented milk processing series) in Caucasia base on those techniques of West Asia, 2) the cream separating series have developed in Caucasia because of its cooler natural environment, 3) butter and butter-oil making by the technique of fermented milk processing series became unnecessary, thus the fermented milk processing series specialized in sour milk making because of the development of cream separating series, 4) the technique of cheese making by using the clotting enzyme has handed down to present. It is considered that the main factors such as cool natural environment, sedentary subsistence and smaller work efficiency changed the milk processing techniques of West Asian type to the Caucasian type.
著者
山口 和美 石下 真人 鮫島 邦彦
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.139-144, 2000
被引用文献数
1

ホイップクリームは泡立て方や泡立て時間によって保形性が異なる。ホイップクリームの構造を明らかにすることを目的として, 乳脂肪クリームに糖を添加した場合と乳脂肪クリームに植物性クリームを配合した混合クリームを作成し, それらの微細構造や離水量および動的粘弾性を比較した。<br/>その結果を要約すると以下のとおりである。<br/>1) 顕微鏡像は, 泡立て前のクリームでは脂肪球が緻密で間隙のほとんどみられない状態であった。泡立て直後では大きな気泡および気泡の周りを脂肪球が連続して配置する様子が観察された。<br/>2) ホイップクリームの離水量は乳脂肪クリームが植物性クリームよりも多く, 混合クリームでは植物性クリーム添加の割合が多くなるに従って減少した。<br/>3) 糖添加クリームの動的粘弾性は安定性が低下することを示した。<br/>4) 混合クリームの動的粘弾性では, 植物性クリーム添加の割合が多くなるに従って, 安定性が高くなった。